1月のツノダシ

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僕らのクルーズ船、龍馬号の2019年10月から2020年6月のスケジュールが発表になった。この季節に翌年のスケジュールをリリースするためには、前年の2月からスケジュールを作り始める。分かりやすく書くと、毎年2月になると2年先のスケジュールを作り始めるのだ。

ただスケジュールを作るだけなのだが、なかなかこれが手間のかかる仕事である。

龍馬はパラオの他のクルーズと違って、クルーズごとにテーマを設定している。あるクルーズはカンムリブダイの産卵を見に行くことをメインテーマとし、あるクルーズはペリリューのロウニンアジの大群を見に行くことを狙う。そういったクルーズごとの特色を出して好みのダイビングができるクルーズを選んでもらえるようになっている。これを年間60本以上あるクルーズすべてに設定をする。この作業が2月から始まるのである。

スケジュールに「これこれ見せます」と書くのは簡単だが、書くからには見せないとならない。その為に過去のデータを洗い直してカレンダーを作る。僕らはこれを“海のイベントカレンダー”と呼んでいる。

月ごとの横並びにカレンダーに、いつにどこでどの魚が何する、とハイライトで書き込んでいく。このカレンダーを元に1年間の予定が組まれていくのだが、言ってみたらこれはデイドリームの年間予定のキモ。当然ながら龍馬のクルーズスケジュールも、実はこの“海のイベントカレンダー”が出来上がるのを待つことから始まるのである。

しかしながら、このカレンダーがなかなか簡単には完成しない。

まず過去のデータをまとめた第一案を作り、それをガイドさんたちの前年のデータと照らし合わす。すると、ところどころにデータのズレが起きるのである。例えば「キツネブダイの産卵が12月のどこどこで行われるという元データに対して、昨年のスタッフの観察では2日ズレていた」といった具合である。2日ズレたらゲストにとっては大問題で、下手したらお見せすることが出来ずに帰国なんてことになってしまう可能性もある。

さあ、ここからが大変。なぜズレたのか?の検証が始まるのである。理由とデータをすり合わせながらこのカレンダーのブラッシュアップをしていくのだが、これが手間で面倒くさい作業である。しかし、これをやるからこそ毎年カレンダーの精度が上がっていくことを考えると文句も言えないのである。

そして出来てきた“海のイベントカレンダー”で狙う魚たちはかなり高い確立でその光景を僕らダイバーに見せてくれる。

写真のツノダシもその一つ。

12月から始まり、1月、2月までがシーズンだが一番群れが大きくなるのは1月。この集団は産卵前行動と考えられているが、その産卵のシーンを見た人は未だいない。僕らも毎年追いかけているのだが、もうしばらく解明には時間がかかりそうだ。

ツノダシたちの産卵生態の解明までの道のりはまだまだ遠いとしても、眼の前でツノダシたちが群れる光景は純粋に素晴らしく美しい。命がけで命を繋ぐためにそこに集まって行われるダンス。決死だがらこそ尚美しく見えるのだろうか。瞬きも忘れるように見ていると、生態だのカレンダーだの、そんな難しいことはどうでもよく思えてきてしまう1月の海であった。

ツノダシの群れ
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秋野
秋野 大

1970年10月22日生まれ
伊豆大島出身
ガイド会所属

パラオ在住23年。気がつけば現地在住の現役ガイドでは最古参。「データ」が大好物で、なんでもかんでもすぐに分析したがる「分析フェチ」。

だいたいの魚は好きなのだが、未だにブダイのことだけは苦手。とりわけ3cm以下の魚には激しい興奮を示し、外洋性一発系の魚に果てしないロマンを感じるらしい。

洋酒より焼酎。肉より魚。果物と酸っぱいものは見て見ぬふりをする。最近甘党。人生ビール党。

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