ガイドのつぶやき - 鹿児島・屋久島からThe Diving Junky Magazine

「屋久島ならでは」の光景

唐突だけど、今年はもっと「屋久島ならでは」の生き物や光景を意識してガイドしていきたいなぁ。。。などと思っている。

それは屋久島に来た頃から意識はしていたものの、それを実践しているかというとかなり微妙だ。^^;
屋久島に来た当初は、現地ガイドとして他の海と屋久島の海との違いやこの海の他にはないユニーク性(特徴)を見出そうと必死になっていたこともあって、積極的に「屋久島ならでは(だと思われる生物や光景)」を紹介していた。(それが紹介できないようだと「現地ガイド」とはいえない!と強く思っていたのだ(笑))

それを最近はまったくしなくなってきたのには理由がある。

「~ならでは」というとその場所でしか見られない固有の生物を想像しがちだけど、海はつながっており、少なくとも同じ北半球の、同じ海流(日本では黒潮や対馬暖流のこと)に影響を受けている海域内において、そんな固有種なんてもともとありえない。
なので「~ならでは」の生物や光景というものは、そのほとんどが基本的には「一般的によく知られた生き物」がその中心であり(レアモノや珍種ではないということ)、それが他の海域に比べて異常に多いとか、この海では変わった社会行動をとってるだとか、この海では体色や模様がまったく違う一群が存在しているだとか、そういうものを指すことになる。

そして、たいていはそのほとんどは地味で、観察対象にはなっても、写真を撮るのは難しかったり、もしくはどうにもこうにも撮りようがないものが多かったりする。^^;
わざわざ高いお金を払って潜りに来てくれているお客さんの目的が今や「とにかく綺麗な写真を撮りたい!」とか「珍しい生き物や生態を撮りたい!」というところにあったりするわけで、お客さんのリクエストやニーズに応えるのであれば当然、被写体的に適していないものが多い「屋久島ならでは」の生き物や光景を紹介している場合ではないのだ。(笑)

またダイバーの興味は「極端に大きなもの(=大物)」か「極端に小さなもの(=ハゼや小さな擬態する魚、甲殻類やウミウシの類、浮遊生物もそう)」に集中する傾向があるように思うのだが、残念なことに大抵の「屋久島ならでは」の生き物はそのどちらにも入らないような中間的な大きさのものが多い。
中間的な大きさのものというのは小物のように探すのに苦労したり、大物のように突然現れたりする生物ではなく、いつも見られるいつもの普通種。
しかも、派手さもない。
言い方を変えると「屋久島ならでは」の生き物とは誰も興味を示さない中途半端な、一般的に言ってつまらない生き物たちなのだ。(笑)

つまり、お客さんのニーズに合っていないというのが、「屋久島ならでは」の生き物や光景をなかなか紹介できない理由だったのだ。

ヤクシマキツネウオの群れ
ヤクシマキツネウオの成魚がいつでも群れている光景はまさに「屋久島ならでは」の光景

そもそもダイビングは遊びなので、水の中で何をしても自由だし、自分が楽しいと思うことを大いにやればいいと思う。
僕も強制したり押し付けたりするのは避けたい。。。

でも僕自身は「屋久島の海」だけを仕事としてガイドする現地ガイドなので、もっと「屋久島の海」にこだわって、「屋久島の海」を紹介しなければならない立場なんじゃないの?どこの海でもできるようなことを提供していていいのか?などと真面目に考えてしまう。
海は少しでも離れればまったく違う顔をしており、そこで見られる生き物や光景は変わってくる。
わざわざお金を出していただいているのに、その違いを紹介しないのは逆に申し訳なく感じてしまうのだけど。。。(笑)

客商売なのだからお客さんのリクエストに応えるのが先決ではあるけど、自然に関わる現地ガイドたるもの、いつでもエコツアーガイドとかインタープリターとしての意識を強く持って活動する必要があると思う。
お客さんが受け入れようが、受け入れまいが、現地の海の特色を紹介することで、この海が、かけがいのない唯一無二の存在であることを啓蒙する姿勢は崩してはいけない。

今年は被写体にならなくても、「屋久島ならでは」を紹介くらいはしようかな。。。などと思ってる。
僕が指し示したものは「ぜひ撮ってみて!」と言っているわけではないので、ご注意を。(笑)

約20年前、八丈島の海ぐらいしか知らなかった僕が初めて屋久島の海に潜った時、毎回この光景が広がっているのを見て思ったこと。

「南の海ってキツネウオが常に群れてるんだなぁ。。。」

結局、この魚はキツネウオではなかったわけだが(=当時は和名なし=ヤクシマキツネウオ)、それよりもこの魚が南の島ならどこでも「常に群れている魚」などではなく、これは屋久島ならではの光景だったんだ、と知ったのは屋久島に移り住んでからの事だった。笑

ヤクシマキツネウオが群れる光景はまさに「屋久島ならでは」の光景だ。

どこの海で潜っても、まったく同じようにひたすらレアモノや小物探しをしたり、それとは逆に大物や群れを見に行くのも楽しいけど(人間は両極端なものに憧れる?(笑))、たまにはその海ならではの生き物や光景を見るのも自然の多様性や豊かさを知ることができて新鮮に感じるかも。。。!

という提案でした。
被写体にはなりにくいけどね。。。(笑)

原崎
原崎 森
(はらざき・しげる)

1970年8月26日生まれ
山梨県出身

八丈島から屋久島へ。。。

巨木と苔の深〜い森を抱える島で、あえて海に潜る。

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