食い逃げ

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今回も育児ネタからお付き合い下さい。

先月号の記事で、4才になる娘からダンゴムシの雄雌の見分け方を、教えて貰ったお話しをさせて頂きました。その後、早速ダンゴムシの絵本をアマゾンで検索してみると、ダンゴムシに関する書籍が多いこと。ダンゴムシが、子供達の超人気者だということを知りました。

そして、届いた絵本の内容を見てビックリ、幼児向けの書籍にしては、生態に関してかなり詳しく書かれています。例えば、ダンゴムシは昆虫ではなく、甲殻類の仲間だったり、水の中でも少しは生きられたり、コンクリートを食べるなど、大人が読んでも興味深い内容でした。

さて、長い梅雨も明けて、ようやく夏本番に突入しました。

こんな暑い時に癒される、涼しげな一枚からお届けいたします。まるで、青い風鈴で涼んでいる小さな虫、その名はミズムシ。

英名SPONGE ISOPOD、訳すると、海面のダンゴムシ。ISOは等しい、PODは脚、等脚目になります。

娘が大好きな、ダンゴムシの親戚だったとは驚きです!

東紀州名物の涼しげな青ホヤに付いているので、萌え萌えの写真が楽しめます。

実は見つけた当初、名前が分からず、豪海倶楽部で青ホヤ仲間のダイブ・クーザの上田さんと、ドロノミだろうという話になっていました。しかし、更にネットで調べていくと、ミズムシだという事が判明した次第です。

ミズムシ

そして、7月はとてもリクエストの多かったウミヒルモ畑、かわいいアミメハギの幼魚が増えてきて、絶好の被写体になっています。

アミメハギの幼魚

また、例年になく大豊作の水中花、種子放出も高確率で観察できます。

ヤマトウミヒルモの種子放出

画像のようなスタイルで、2ダイブ癒しの空間でじっくりと撮影されるゲスト様が多いです。ローカルダイバーのN様が手にするカメラ、なんと我らの部長、雄輔さんの元愛機という偶然。

ウミヒルモ畑

そして、新たな生えものネタが見つかりました。

ヒナカサノリという、人魚のワイングラスの小型版です。最初は名前が分からなかったのですが、調べていくうちに、西伊豆の井田ダイビングセンターさんで、オキクちゃんの愛称で流行っている事が判明。

普通の図鑑に載っていないので、藻類研究で有名な三重大の方に同定して頂きました。

ゲスト様には、人魚のピアスと命名して貰いましたが、議員バッジとか、菊の御門とか、黄門様とか、いろいろと呼ばれていて笑えます。僕は戦艦大和の船首のマークに見えて仕方ないです。(笑)

ヒナカサノリ

次に爆発的に始まっている、魚たちの産卵行動の話題です。

先月号でお伝えした、ホシノハゼの産卵床の跡に、まるで巣穴をリサイクルするようにクツワハゼが卵を産みました。

卵を保護するクツワハゼ

今年はナガサキスズメダイの繁殖活動が超活発で、巣穴を掘る場所が無いくらいに切迫した住宅事情となっています。

そうするとこんな賢い個体が現れました。なんと、捨てられた長靴を住まいにしている個体です。

卵を保護するナガサキスズメダイ

求愛行動も至るところで見られて、盛りがついた雄が婚姻色を出して激しくアピールする様子が見られます。

婚姻色のナガサキスズメダイ

一見すると傷を負っているように見えますが、この白い模様が婚姻色で、数秒だけ現れて雌にアタックします。

ナガサキスズメダイの求愛

次に今月号のタイトル、人間からみるとけしからん「食い逃げ」のお話しをさせて頂きます。

実はこの記事の撮影地である梶賀は、夏場のエキジットが14:30迄、ナイトも不可なので、生態観察好きには正直、超厳しい条件です。

そういう個人的な欲求不満もあり、先月号のような時間制限の無い淡水の生態観察に走ってしまいがちです。

そういう中、真昼間から産卵活動を観察できる、クロホシイシモチは私にとって格好のターゲットとなります。そして、そのイシモチの決定的な瞬間を撮らえる事に成功しました。

今年の7月は水温が一時20℃まで低下して、産卵行動がピタッと止まり撮影できなくなりました。その後、水温が上り始めて少ないながらも産卵行動が始まりました。

クロホシイシモチは口内保育で有名な魚で、育メンぶりのイメージが強い魚です。繁殖期になるとペアで縄張りを形成して、雄の奪い合いが始まります。

そう、雄がすごく人気者になるのです。それは、口内保育する口腔が足りなくなってくるからです。

それでは、決定的な瞬間を見ていきましょう。

画像、雌の左下腹部の傷に注目、同時系列の画像である証です。産卵の直前になると、雄は大きく口を開ける動作を頻繁に始めます。

クロホシイシモチの産卵前行動

そして、いよいよ産卵の瞬間がやってきます。

オレンジ色の勾玉のような卵塊が、雌のお腹からニュルっと出てきます。その瞬間、雄は放精して、卵塊をくわえ込みます。

クロホシイシモチの卵咥え

卵塊を咥え込んだ雄の口腔はアゴがしゃくれて大きくなります。ちなみにこの一連の行動は4秒くらいで終わってしまうので、気が抜けません。

この後にオスは、口腔内に納まりきれない卵塊を、吐き出して吸い込んでを繰り返すので、その絵を撮影しようと観察していたのですが、この日はなぜか卵塊は吹き出てこない。卵は見えるのですが・・・。

クロホシイシモチ口の内保育

更に観察を続けると、アレッ? 雄の口が小さくなっている。卵も見えない?

気のせいなのか・・・。

カニバリズム後のクロホシイシモチの雄

これは、もしやして! そう、文献では読んだ事のあるカニバリズムでした。

実は口内保育をする雄、保育中一週間くらい絶食を強いられます。しかし、卵が孵化すると休む暇なく、隣で産卵したい雌が待機しています。

こんなことを繰り返していたら、雄は絶命してしまいます。それなら、産卵の何回かに一度、エネルギー源たっぷりの卵を補給して生き延びた方が、クロホシイシモチ全体の子孫繁栄には効率的です。

そして、卵を食したであろう雄は、無情にもその場から逃げ去りました!

残されたクロホシイシモチの雌

まさに、食い逃げです。残された雌は落ち着きなくおろおろするだけでした。

一見すると、ヒドイ男に見えますが、すぐに卵を産めない雌と一緒にいるよりは、産卵間近の新たなパートナーと組んだ方が、子孫繁栄のためには効率が良いと考えられます。

自然界の無情で効率を優先した行動を目の当たりにしました。

最後に奇跡の清流、銚子川の情報です。

7月の上旬から大雨続きの増水で、撮影に入れませんでした。6月の末頃の渓流域では、ナガレヒキガルの幼生の上陸と入れ替わるように、カジカガエルが上陸を始めました。

カジカガエルの幼生

そして、ナガレヒキガエルは、先月を最後に深い森の中に姿を消しました。来年の春にはまた、この渓流に元気な姿を見せてくれることでしょう。

ナガレヒキガエル

今回も長々と書いてしまいましたが、ネタいっぱいの尾鷲で、皆様のお越しをお待ちしております!

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伊藤
伊藤 英昭(いとう・ひであき)

1969年12月24日生まれ
三重県尾鷲市出身

某俳優と同じ名前なので、ふざけてるのかと思われることがあるようですが、本名です。

休日は波乗り、サイクリングに出かけ、最近はカメラ片手に自然のバイブレーションを追い求めている。

趣味は文科系で、ビンテージラジカセ収集、アナログレコード鑑賞。

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