脱線
今月の「八ック謎ナゾ生命体」は、久々のピンチヒッター、44がお伝えします。
テーマは、海岸近くの岩場や砂地などの陸に住むオカヤドカリの仲間たち。
夏になると心やさしい子供に拾われ、「海に帰してあげよう!」と、海に入れられてしまいます。オカヤドカリにとっては迷惑な話で、溺れて死んでしまうものもいます。オカヤドカリは陸地で生活するヤドカリなのです。
一口にオカヤドカリと言っても、たくさんの種類がいます。それが、日本ではなぜか全て天然記念物に指定されています。
これは昔、小笠原に生息するオカヤドカリたちの個体数が減少していることを受け、本州では珍しいオカヤドカリの仲間たちを天然記念物に指定して保護しようとしたからです。ところが、その後になって沖縄が返還されてみると、本州では珍しくても南西諸島では普通種というものがいたのです。そんなオカヤドカリの仲間に限っては、相変わらず天然記念物に指定されているものの、許可を受けた専門業者によって採取され、ペットショップでごく普通に販売され、購入して飼育するのは違法ではないのです。
天然記念物の生き物を購入して飼育できるというのも、なんか変ですね。もちろん、許可を受けていない人が勝手に採取して飼育するのは違法です。
ところで、八丈島の文献では、ナキオカヤドカリが記載されていて、生息していることになっています。しかし、いくら探してみても、よく似たムラサキオカヤドカリばかりが見つかり、ナキオカヤドカリが見つかりません。先日、東京都のレッドデーターブック改訂に伴い、写真協力の依頼が舞い込みました。何種類かは協力できたのですが、このナキオカヤドカリと、もう1つヒメオカガニだけが、今後の課題となってしまったのです。
まぁヒメオカガニは、確かに極めて稀なカニなので諦めがつきますが、ナキオカヤドカリは見つけられそうな気がしてなりません。
ムラサキオカヤドカリとの違いは眼を支える棒の部分、「眼柄」を見ます。ナキオカヤドカリではこの眼柄にはっきりとした斑点があるのに対し、ムラサキオカヤドカリには、この斑点がありません。
捕まえてはムラサキヤドカリと確認して放す、を繰り返して20匹を越えた辺りから・・・、「八丈島には、ナキオカヤドカリなんていなーーーい!!!」と叫ぶのでした。
はい、こちらがそのムラサキオカヤドカリです。眼柄に斑紋なんてありませんからすぐわかります。
まぁ癇癪起していても始まりませんので、気晴らしに海岸でも散歩して仕切り直しです。
テクテク歩いとていると、いつも見えない岩場が露出して干上がっています。そう、八丈島只今冷水塊に突入しているのです。
信じられないかも知れませんが、八丈島周辺に黒潮が通っている時と、冷水塊が取り巻いている時とでは、潮位が5〜6mも違うのです。、冷水塊時は普段見えない岩場まで露出して、黒潮時には海底にあるはずの地形が現れてしまうのです。
干上がった海岸は冷水塊の冷たさを強調される風景。冷え冷えとした海岸を歩いていると、あらら至る所に魚の死骸が転がっています。
冷水塊の冷たい水温に耐えられなくなった魚たちが打ち上がって干乾びています。その中には、意外と冷水に強いと思われるハコフグが目立ちます。
でも一番多いのはハクセイハギです。
毎年冷水塊のシーズンに入ると、今までたくさん見られたハクセイハギたちが一気に見られなくなります。よっぽと冷たい水温を我慢することができないのでしょう。3分くらい歩いただけで、20匹くらいの干乾びたハクセイハギを見ることができます。
まさに剥製となったハクセイハギですわ。
不謹慎な発言を一発をしたところで、もう少し丹念に見ていくと、大きさは4cmくらいでしょうか、キンギョハナダイの若魚も干上がっていました。
人間でも寒いの平気な人と、まったく駄目な人がいるように、冷水塊に強いキンギョハナダイでも、寒さに強い子もいれば弱い子もいます。
ただ人間の場合は生きていけますが、キンギョハナダイは、寒さに弱い遺伝子を持つものは自然界から排除されてしまうのです。このキンギョハナダイの死骸を見るだけで、環境への多様性がある者だけが生きていけるという自然界の厳しさを垣間見ることができます。
こちらはシコクスズメダイの亡骸です。そういえば、去年はシコクスズメダイがたくさん見られました。
どんな亡骸が多いかでも、八丈島の生き物たちの最近の動向がわかります。
すごーい、冷水塊って。長引けば長引くほど、海岸は干乾びた死骸の山となり、海に潜らなくても最近の八丈島の魚たちがわかるってことだ。
不謹慎発言二発目は置いといて、こんな変てこな魚の亡骸も見つけました。
おいおいラッキー、食べるなよ。
・・・・・。これって魚の形のしょう油入れ・・・。
誰だぁ〜。海辺でお弁当食べて、このしょう油入れを捨てた人は。これこそ不謹慎だ! ぷんぷん!!
と、気晴らしから歩き始めた海岸で、次から次に飛び出す出来事に踊らされて、ナキオカヤドカリのことはすっかりと忘れてしまったのでした。
まぁ、ナキオカヤドカリはやっぱり今後の課題ということで、面白いから脱線してもいいんですよ。
" 脱線 " へのコメント
水谷 知世
昭和40年代生まれ
兵庫県出身
一見、負けず嫌いで男勝りというイメージだが、実は繊細な女性らしい一面を持つ、頭の回転はレグルス一番!!の頼もしい存在である。(レグルス親方・談)
伊豆諸島・八丈島
レグルスダイビング
〒100-1511
東京都八丈町三根1364-1
Tel/Fax:04996-2-3539
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ナキオカヤドカリがきろくされていたのか、、俺外国で撮ったことあるけど。