被災地の花
先月、被災地に行っている間の、ボランティア活動のことについて書きました。
ボランティアに来ている人たちは、東京から来ている人が多く、八丈島から来たと言うと「遠いところから来んだね」と言われます。しかし、東京以外の場所から来た人たちに尋ねると、四国や九州、海外から来ている人もいて、八丈島なんて遠いうちに入りませんでした。また、「被災地を何とかしたい」という気持ちは同じなのですが、なぜ今この時期なのか、なぜ岩手なのか、いろいろ話しを聞いてみると、動機や考えていることは人によってさまざまでした。
私も、なんでボランティアに行こうと思ったのか?と尋ねられると、自分でもよくわかりません。いろんな気持ちが複合していて、どれが一番というのがありません。ただ、その中の一つには、被災していない場所を確認したい、というのがありました。
テレビで見る被災地の様子。元々東北に縁のない私は、地名を聞いてもさっぱりわからず、テレビ局は被災状況のひどいところばかり何度も映し出しているのではないかと思えました。よく見ると被災直後の様子を流している時もあり、今見ているのは一体、いつのどこの映像なのか、本当は今どうなっているのかが、何だかピンとこなくなっていたのです。東北に、無事な場所はないのか?
そんな気持ちで夜行バスに乗り、東北新幹線の駅に降り立ってみると、大地震の傷跡らしきものは何もありませんでした。ごく普通の地方の駅前。閑散としているのは、被災地だからか、早朝だからか? でも、駅前の公衆トイレは自動ドアで、中は明るくて、近代的で、ちょっとビックリ。そこから車で花巻を経由して、陸前高田市へ連れて行ってもらったのですが、道中は東北の美しい山々にうっとり。ちょうと新芽が萌える頃で、青々とした木々を、薄紫色の藤の花が彩っていました。
藤の花そのものは珍しくないのですが、私はこれまで、誰かの庭先で、園芸用に手入れされ、藤棚に巻きついた藤しか見たことがありませんでした。ところが、東北では、そこらじゅうに藤が自生しているのです。ツル性の木ですから、他の大木に巻きついているのでしょう。ものすごく高いところで、藤の花が咲き乱れているのが見られました。

そして、いよいよ海岸が近づいてくると、いきなり景色がガラッと変わってしまいます。
ある一線を境にして、はっきりと「ここからが被災地です」と宣言された感じ。突然、木も家も車も船も、何もかもがぐしゃぐしゃに積み上げられた瓦礫平野になってしまうのです。
車が突っ込み、木が突き刺さり、ほぼ全壊している家の、すぐお隣の家は全くの無傷で残っていたりします。しかし、周りが瓦礫の山になってしまった場所で、家がまともに残っているからと言って、まともな暮らしが続けられるわけがありません。
でも、無事に残った方の家の庭では、ツツジが満開になって咲き誇っていました。

東北の方は、よほど庭造りが好きな方が多いようです。どのお宅も大きくて立派で、広い庭はよく手入れされていました。見晴らしの良い場所の家の庭は、外からよく見えるように大きなツツジが植えられています。
八丈島では、防風のためもあって、家の周りに木を植えているので外からあまり見えません。ちらっとのぞくと、大きな庭の場合、たいていは一部が畑になっているようです。花の多くは、プランターや植木鉢に植えられています。きっと、これも普段から風が強いせいなのでしょう。
気に留まったのは、東北の方のお庭は、いわゆる日本庭園風のものが多いこと。八丈はどちらかと言うと、イギリスのガーデニング風です。八丈で、日本庭園風のお庭のある家は見かけません。有名なお武家様を多数輩出している東北と、武士と言えば流人として流されてくる人しかいなかった八丈島の、文化の違いでしょうか。
こんなに素敵な庭のある暮らしをしていた人たちが、避難所や庭のない小さな仮設住宅へ移られているのかと思うと、お気の毒でなりません。
被災せず、豊かな自然も使える施設もたくさん残っているところがあるのですから、観光でも良いから一人でも多くの人が東北を訪れ、地域の経済が潤うようになると良いなと思います。

水谷 知世
昭和40年代生まれ
兵庫県出身
一見、負けず嫌いで男勝りというイメージだが、実は繊細な女性らしい一面を持つ、頭の回転はレグルス一番!!の頼もしい存在である。(レグルス親方・談)
伊豆諸島・八丈島
レグルスダイビング
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