第四話 索餌行動の考察と謎解き(中編)
毒を持っている生物は、進化の過程からすると、比較的新しい生物から見られる様になります。
一体どうして、体内に「毒」を持つ必要性が出てきたのでしょうか?そんな事を考えたこと、ありますか?
人間が毒を吐く(笑)のは、ストレスが関係するようですが、ストレス要因ではなさそうです。(もしかして、ストレスだったりして)
ちなみに「保有毒」を持つ生物で思い浮かぶものって何ですか?トゲモミジガイ、スベスベマンジュウガニ、ツムギハゼ、フグの仲間...など、僕らが関係するところで、特に海洋生物に着目して挙げてみました。
魚類に関していえば進化の後の方にしか、毒を保有する魚が居ません。(カサゴの仲間やゴンズイは体外式の防御毒です)
基本的に、魚類図鑑はサメから始まってマンボウで終わっていることが多いと思いますが、それは古いモン順に記載されているからです。シガテラ毒に関しては、地域性というか食性によって変化が大きいので、当てはまらない部分も多いのですが、TTXに関して言えば、マンボウの前に載っているフグの仲間の大半が保有しています。つまりそれまでの進化の過程では、毒を持つ必要というか必然性が無かったと考えられるわけです。
ところで、ヘビなどに見られる攻撃毒(防御毒とも考えられますが)を魚類は持っていませんので、保有毒になりますが、その場合って何の必要があるのでしょうか?
表皮毒は、噛まれた時に相手が吐き出すなど、防御としての効果は期待出来ます。しかし、内蔵や筋肉、精巣などに毒があっても防御にはなりません。(体内に毒を持つ事で、何らかのサインが出て、捕食されないという説もあります)この件に関しては、面白いフグ伝説(笑)があるので紹介しておきます。フグを食べた魚は、毒があるから危ない!という情報を遺伝子によって受け継いでいるからフグは食べられ(襲われ)ないんだ...という話しです。
フグを食べた魚は死んでしまう可能性が高いですし、死なずに済む魚(エソはキタマクラを食べますが、死んでいる状態をあまり見ませんね?)は問題ない訳ですから、食べ続ける訳です。
つまり、死んでしまったらその遺伝情報は遺伝されない訳ですから、この説は無理があります。それでも、果敢に「その中でも生き残った耐性のある極一部の魚が」と食い下がってきますが、そんな薄すっぺらい遺伝情報は自然界のサイバイバルの中では希釈されてしまって、可能性が低く過ぎるので当てになりません。まぁ絶対は存在しませんから、全面的な否定はできませんが、この場では却下させていただきます。(笑)

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鉄 多加志
1965年生まれ
清水出身
ガイド会所属
生まれ育った環境が、都市部?の港湾地域に近く、マッドな環境には滅法強く、泥地に生息する生物を中心に指標軸が組み立てられている(笑)この業界では、数少ない芸術系の大学出身で写真やビデオによって、生物の同定や生態観察を行う。
通称「視界不良の魔術師」
静岡・三保
ダイバーズ・プロ アイアン
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