海藻はヤバイ!
皆さんこんにちは。タイトルを見てお判りの通り先月からの引き続き海藻の特集です。
先月号は結局公開後一週間近く経ってからの大遅刻の入稿で、御面倒をお掛けすることになるので(編集長ゴメンナサイ)控えようかと思っていたのですが、各方面から色々な反響を頂き「出して良かった」と思いました(勿論遅刻はNGですけど・・)。
特に嬉しかったのは現在アメリカに在住されているかつてのゲストさんが、お知り合いの“大学の研究室で海藻の研究をされているアメリカ人の女性ダイバー”にコラムを紹介して下さり、ご本人からも温かいメッセージを頂けたことでした。
彼女に日本の海藻をもっと見てもらいたくて、過去の写真を整理したり日々のダイビングで海藻の写真を撮ったり図鑑で調べたりしているうちにどっぷり海藻の世界にハマってしまい、かなりヤバイ状態に陥っております。・・という訳でこんなタイトルになった次第です。
それでは何はともあれ、まずはその魅力を存分にご堪能頂きましょう。
● 緑藻類
ウチワサボテングサ [団扇仙人掌草] イワヅタ目ハゴロモ科:
サボテングサの仲間はサンゴ礁域などの暖海を好むグループで、本種以外のサボテングサ[仙人掌草]・ヒロハサボテングサ[広葉仙人掌草]・ミツデサボテングサ[三ツ手仙人掌草]はいずれも南西諸島以南に分布しているようです。この周辺でもいる場所は非常に限られていて、今のところI.O.P.の北側斜面で2箇所と富戸・脇の浜の沖合いのみです。
ネザシミル [根差し海松] ミル目ミル科:
ミルって“海松”って書くんですね、漢字変換でちゃんと出てきます。総じて緑色の厚ぼったい海藻ですが形は様々で、この種類の他に普通の海藻のように樹状に枝分かれするミル[海松]・蔓状に長く伸びるナガミル[長海松]・岩場を這うようなハイミル[這い海松]・球状のタマミル[玉海松]・平べったい楕円形のヒラミル[平海松]などがあります。
● 褐藻類
アミジグサ [網地草] アミジグサ目アミジグサ科:
多分これが本家本元のアミジグサで間違いないと思うのですが、フクリンアミジ[覆輪網地]・カヅノアミジ[鹿角網地]などの近似種がいるので、もし違ってたらごめんなさい。浅いところの岩肌にチョボチョボっと生えている可愛らしい海藻です。小さくて張り付くように生えているので、揺れることがなくクローズアップで撮り易い被写体です。
ウスカワフクロノリ [薄皮袋海苔] カヤモノリ目カヤモノリ科:
お饅頭に薄皮饅頭があるように本家フクロノリ[袋海苔]がいれば“ウスカワ”もいるんですね〜。大抵は他の海藻に引っ付くようにしている直径2〜3cm程度の丸くて可愛い玉です。緑藻のバロニア類のように中が組織液で満たされている訳ではありません。これまでこんなものがいるとは気にも止めていませんでしたが・・ファンになりました。
アントクメ [安徳布] コンブ目コンブ科(カジメ科):
かつてはI.O.P.でも春頃から新芽が出始め、夏前から秋の初めぐらいにかけて海底を覆い尽くすほど繁茂していたこの海藻が、ここ数年とんと見かけなくなってしまいました。「この時期なら新芽がチョッとぐらいは出てるだろう」と割と軽い気持ちで探し始めて数日、どうしても見つかりません。富戸に行く機会もあったのでそれなりに結構頑張って探したもののやはり見つからず、(チョット大げさですが)最後の望みを託して八幡野で『アントクメ・リサーチダイブ』をすることに〜。そしてやっと会えました〜!まずは入ってすぐのテトラの周りに、そして沖合いの砂地との境目にも・・・。おぉ〜会いたかったぞ〜!それにしてもこの状況、別の意味でかなり“ヤバイ”気がします。
● 紅藻類
フサノリ [房海苔] ウミゾウメン目ガラガラ科:
この海藻は岩場に生えていることはまず無く、砂場に転がっている小石にこの写真ぐらいの分量で点々といる感じです。富戸・I.O.P.・八幡野でざっと観察したところ、(時季的なものや探し方もあるかもしれませんが)富戸には非常に多く目に付き、I.O.P.ではよ〜く探してようやく1〜2箇所、八幡野ではほとんど目に付きませんでした。
ヒラフサノリ [平房海苔] ウミゾウメン目ガラガラ科:
生息環境や生え方は上のフサノリとほぼ同様で、周辺3箇所での生息状況も概ね大差ありませんでした。やはりこの手は環境的に富戸が一番合っているようです。この二股が更に二股に分れるトーナメントの準々決勝・準決勝・決勝みたいなフォルム、そして縁が二重になっているようなところ、更にワインレッドの色、魅力タップリの海藻です。
クサノカキ [草の牡蠣] サンゴモ目サンゴモ科:
サンゴモの仲間には先月ご紹介したフサカニノテなどのように藻体に体節が有る有節サンゴモと体節が無い無節サンゴモがあり、これは後者の方です。見た目には“カサブタ”のようにしか見えませんがこれでも海藻です。ところどころにあるイボ状の膨らみは“生殖器官巣”というもので、よく見ると中心に小さな穴が空いているのが判ります?
オオヌラブクロ [大滑袋] マサゴシバリ目マサゴシバリ科:
この海藻、なぜか個人的には非常に心惹かれるものがあります。まずは名前の“ヌラブクロ”という言葉の響きがなんとも魅力的に感じます。薄い袋状になっていて袋の中は粘液質に満たされています。このような特別きれいとか珍しいという訳ではないけれど、それなりに探さないと出会えない“いぶし銀”のような存在感に憧れています。
ヒラワツナギソウ [平輪繋ぎ草] マサゴシバリ目ワツナギソウ科:
先月号でご紹介した同じ仲間のウスバワツナギソウと同様に、表面が蛍光ブルーに美しく発色する海藻です。今のところ単独でしか見てませんが、群生することもあるようで見てみたいです。やはりこの仲間にヘラワツナギソウ[箆輪繋ぎ草]というのもいるようなのですが、正直区別がついていないので“ヘラ”である可能性も否定出来ません。
これまで私、かつてはカエルアンコウ(当時はイザリウオ)に始まり、ヤドカリやら造礁サンゴやら色んなものに興味を惹かれてきましたが、この歳になって新たに興味の対象に出会えるというのはとても幸せで得難い経験だな〜、とつくづく感じております。
最後に各種の説明を書くにあたり参考にした図鑑をご紹介しておきましょう。
『海藻―日本で見られる388種の生態写真+おしば標本』 誠文堂新光社
横田 雅臣
1961年11月生まれ
神奈川県横浜市出身
ダイビングとの出会いは学生時代。在学中に伊豆海洋公園ダイビングセンターにアルバイトに来たのがきっかけで卒業後同センターに就職、インストラクター・ガイドとして10年の勤務の後、1994年に独立しGO TO THE SEAを開業、現在に至る。
伊豆半島・伊豆海洋公園
ダイビングサービス GO TO THE SEA
〒413-0231
静岡県伊東市富戸912-29
Tel:0557-51-7878
バックナンバー
- 2024.1:新年にちなんで・・
- 2023.12:ヒレボシミノカサゴの幼魚@八幡野
- 2023.11:モノクローム
- 2023.10:ハシナガウバウオ
- 2023.9:ミカヅキツバメウオの幼魚
- 2023.8:オオウミウマ
- 2023.7:ワモンヤドカリ2種
- 2023.6:ミギマキ×タカノハ
- 2023.5:キリンとネッタイ
- 2023.4:マツカサウオ@I.O.P.
- 2023.3:モンスズメダイの幼魚@I.O.P.
- 2023.2:オオモンカエルアンコウの幼魚@八幡野
- 2023.1:A HAPPY NEW YEAR
- 2022.12:フタスジリュウキュウスズメダイの幼魚
- 2022.11:ウチワザメ@八幡野
- 2022.10:モヨウフグ@富戸ヨコバマ
- 2022.9:ナンヨウツバメウオの幼魚
- 2022.8:アオリイカ(幼体)の群
- 2022.7:ニシキウミウシの交尾
- 2022.6:スベスベマンジュウガニ
- 2022.5:キレイどころ2種類
- 2022.4:キリンゴンべ
- 2022.3:ヤイトハタ
- 2022.2:寒中お見舞い申し上げます
ガイドのつぶやき
- 三浦半島・葉山から
- 真鶴半島・湯河原から
- 伊豆半島・伊東から
- 伊豆半島・川奈から
- 伊豆半島・伊豆海洋公園から
- 伊豆半島・大瀬崎から
- 伊豆半島・平沢/静浦から
- 伊豆諸島・八丈島から
- 静岡・三保から
- 紀伊半島・尾鷲から
- 和歌山・串本/古座から
- 高知・沖の島から
- 鹿児島・屋久島から
- 沖縄・本島から
- 沖縄・久米島から
- 沖縄・西表島から