ゆうすけの豪海倶楽部The Diving Junky Magazine

第二話 エダアザミの仲間 後段

さて、多分興味を持ってくれた人の中には、ある種の期待があるはずです。そうです!言いたがりで、見せたがりの僕が、今まで公開していなかった、エダアザミの仲間の産卵というか、プラヌラの放出に関する話しです。

正直に言えば、みなさんが想像するような、一斉産卵を見た事はありません。E-mailが一般的でない、まだパソコン通信とかって言っていた時代から、この生物を見続けていますが、幸か不幸か遭遇しないのです。ナイトでナイトロックス、3ダイブ!とか、リブリーザーで3時間半...ココまでやってもダメなんだから、まだ見るべき時期ではないのだと自分の中では、気持ちの上では、あるレベルにおける完結をしています。

時期も、タイミングも、時間さえ分かっているのに、微妙に外して、ここぞ!と言うタイミングでは、時化や台風が邪魔をします。僕にとって、チョウチンアンコウよりも手強い相手だと言えるでしょう。(笑)でも、いつかは必ず見られるはずです。執念深い僕が止めない限りはねぇ。

画像は、4/26に撮影した湯気が見えるくらいの新鮮なカットです。

来月の大潮にでも放出しそうな熟成した卵を抱える個体
来月の大潮にでも放出しそうな熟成した卵を抱える個体
イシバシウミウサギに食べられていると思われる個体
イシバシウミウサギに食べられていると思われる個体
縮んでいるとはいえ、4cmほどの大きさにもかかわらず、卵を持っている個体
縮んでいるとはいえ、4cmほどの大きさにもかかわらず、卵を持っている個体

第二話 エダアザミの仲間 中段

前のお話しで、この生物が如何にマニアックで、あまり注目がされていないと言う事が分かっていただけたでしょうか?では、そういう前提で話しを進めます。(笑)

僕が、この生物を専門としない研究者だとしても、生物全般に対する興味は深く、分からない、知らないと言う事がハッキりとすれば、尚更その野次馬根性は発揮されます。

実際、このエダアザミの仲間に関しては、ある研究機関を通じて、イスラエルのテルアビブ大学にサンプルを送り、この生物に関する情報交換をしたことがあります。意外に思われるかも知れませんが、テルアビブ大学は海洋生物に関する先進的な研究がされていて、サンゴの研究に関しても、素晴らしい研究者がいて、何度か手紙で(時代を感じますね)やり取りをしたことがあります。サンプルは2度ほど送り、写真や成長を記録したデータも送付しました。英語とは言え、聞き慣れない学術用語が入り交じった難解な文面だったため、何回かやりとりをしている内に面倒になって止めてしまいました。今、考えれば...食らいついてやっておけば、違う自分になっていたかも知れませんね。(笑)

そんな背景があって、このエダアザミの仲間は、僕の中での学術的ヒエラルキーの位置が高い生き物なのです。でも、そんなアプローチで見せて、喜んでくれるゲストは少なく、(確率で言えば、三保に来るくらいですから、多いのだと思いますが)どちらかと言うと、フォルムや半透明のボディなどのフォトジェニックな部分を強調して、こちらの世界に引っぱりこもうとしています。

エダアザミの仲間 透けて見える卵
透けて見える卵
エダアザミの仲間 卵を持っていない個体
卵を持っていない個体

第二話 エダアザミの仲間 前段

三保(ここに限らずですが)には、正式な和名や学名のない生物がいくつか見られます。ゲストの方から「学会発表したら、名前を付けられるんぢゃないですかぁ?」って言われる事もありますが、どちらかと言うとそれをアシストする立場にあるので、自分がメインの研究者になることは、ゼロではありませんが、まずありません。

このエダアザミの仲間に関しても、図鑑にも掲載されていますし、伊豆半島や諸島でも観察されている生物なので、それほど珍しくはありませんが、三保以外の場所では、わざわざこれを見に行くために降りるような水深ではないので、何かのついでや、かなりの物好き(笑)の方を対象にしないと、ガイドのネタとしては成立しません。

この生物に関しても言えることですが、三保は透明度が悪く、比較的暗いことが多いので、他のエリアに比べて、より浅い水深で観察できる特徴があります。一見、ネガティブな話しをしているようですが、僕は逆手にとって「売り」にしています。(笑)

次号では、このエダアザミの仲間との奮闘記をお伝えいたします。

画像は、三保真崎の左側(通称:お花畑)方面に群生しているエダアザミの仲間です。

エダアザミの仲間
エダアザミの仲間

第一話 イッテンアカタチ 後段

何回かの増刷、改訂を繰り返している内に、イッテンアカタチの写真は、インドアカタチと表記を変え、イッテンアカタチは標本写真だけになってしまいました。どこかの改訂で、僕の撮影したイッテンアカタチの写真を使って下さい。4種全部を僕のカットとは言いませんからぁ〜(笑)

文章だけでなく、写真も手抜きっぽい...<(_”_)>すみません。

第一話 イッテンアカタチ 中段

このイッテンアカタチは、忘れもしない「脇毛の左」ぢゃなかった「若気のいたり」で、豪海倶楽部の親分に僕がツッカかった問題の魚でもあるのでした。

普段は、あまり人と争う事を嫌う典型的な静岡人間の僕ですが、この時だけは違っていました。確固たる信念と断固たる抗議を持ってその飲み会に参加しました。宴酣(えんたけなわ)で、まぁみなさん(地球魚類楽会会員諸氏)が、グダけて話しが盛り上がっているところで、我慢ができなくなって、僕がゆうすけ親分に言いました。

「何で僕のイッテンアカタチのカットを使ってくれなかったんですか!?」

これは、山と渓谷社の「海水魚」の出版に絡んだ裏話しなのです。あの図鑑には、当時20代の三保で撮影した自分の写真を全力投球で投稿させていただきました。ゆうすけさんが、いわゆる胴元(元締め)だったのですが、あまりに西表の矢野さんのカットが多い事から、一部のダイバーから「矢野図鑑」とも言われていました。(笑)

その初版のイッテンアカタチのところには、僕の送付した写真ではなく、インドアカタチの写真が鎮座しておりました。当時、アカタチ科の魚を、世界で一番フィールド観察していると自負していた自分にとって、それはそれは屈辱以外の何ものでもありませんでした。今となっては、それを屈辱ととってしまうほどの器量・裁量しか無かった訳ですが、献本で送られて来た図鑑を見て...怒り心頭だったわけです。

大人なゆうすけ親分は、歯に衣を着せて、やんわりじんわりと話しをするのですが、自分が正しいと思っている僕にとっては、それがどぉにも許せず、挙げ句の果てには写真を換えなければ図鑑として如何なものか!?くらいの事を言い出していました。そのやり取りは、当時の地楽会(地球魚類楽会の略称)のメンバーが訝し気に取り巻いて窺っていました。

見るに見兼ねた西表の矢野さんが一喝しました。

「魚類学者でもないおまえが、決める事じゃないだろ!」、「ガイドやカメラマンは、少なからず学者や研究者の恩恵にあずかって仕事をしている事もあるんだから、そこを蔑ろにして成り立つ話しじゃないだろぉ?」

それでも、食い下がる僕にバッサリ「そこまで言うなら、お前が学者になってからモノを言え!」と、あの温厚な矢野さんが切り捨てました。

それでその話しは、そこで幕を引いたのですが、良い意味で執念深い僕は、その時「モノの言える立場に、必ずなってやる!」と心に誓ったのでした。(笑)

イッテンアカタチ

第二章 第一話 イッテンアカタチ 前段

お待たせしました。やっと書く気になりました。ここまでは、単にクダを巻いていただけです。皆様の貴重なお時間を拝借しながら、好き勝手なことを書き綴って済みませんでした。ここからは、心を入れ替えて誠心誠意「迷路」を徘徊したいと思います。

僕が住んでいる三保半島は、駿河湾の湾奥に位置して、数々の生態写真初記録を世に送り出して来た素晴らしい環境を有しております。その素晴らしさに気が付くまで、かなりの年月を無駄にし、今もって自分の凡人ぶりに辟易しております。しかし、この辟易は言うなれば「若気のイタリアン」つまり、イタリア人の若者がプレイボーイと呼ばれることを誇りとするが如く、ガイドがオタク(あるいは変態!)と呼ばれることを誇りに思うことと変わりありません。(何のコッチャ!?)いつまでもオタクのままでは、インドア&ニートになってしまうので、インドア・カタチ(そ、そこで切るなぁ〜!)に外形的形態の似ているイッテンアカタチのお話しのニーズに応えたいと思います。

イッテンアカタチ・・・この魚は、三保真崎を全国区に押上げ、世界のガイドやダイバーから疑問と難問のメールをいただくキッカケを作ってくれた、ありがたい生物なのです。(当時、マジでレス大変でした)画像は、先日念願の三保真崎でのダイビングを達成できた川本会長!夫婦です。ここまでサービスの行き届いたイッテンアカタチも珍しい!ってくらい、撮影できました。会長!画像チェックしている場合ぢゃないよ。ここは、バシバシ!いっとかないとぉ〜!(笑)

イッテンアカタチ

第三話 文系的な考察 後段

前段で割りと脱線的人為事例を取り上げてしまったので、本筋の捕食アラウンドが欠落してしまいましたが、根絶を目指すことが、自分に対する食圧を下げる作用があることはお分かりいただけたことと思います。

捕食に関しては、以前どこかで書いた記憶がありますが、いくつかのカテゴリーに分けられます。

最も基本的なことは、生命の維持であり、成長や必要なエネルギーを獲得するためのものです。それだけじゃないの?って思われるかも知れませんが、例えば「エッグプレデュエーション」のように、自分の子孫以外は増えないように、同じ種にもかかわらず、産卵に参加するふりをして、卵を食べまくる行動です。

同じ種が同時期に沢山存在することで、親が生存して欲しいとする仔魚が生き残れなくなる可能性があるので、卵のうちに食べちまおぅ!ってスタンスです。確かに、必要エネルギーは結果的に得られますが、根本的な立ち位置は違っています。(自分の産卵時のエネルギーと仔魚存続の一挙両得とも考えられます)

他にも特異的な例で「ヤベぇっ!やっちまったぁ〜」的なウッカリ捕食もあって、口内保育をするテンジクダイ系の魚では、頻繁とまでは言いませんが、パパのゴックンによって大量卑属殺を繰り広げてしまうこともあります。

ここでは、滑稽に書いていますが、嚥下は意識的なものと反射的なものがありますので、僕は人間的な見解に基づいて「お腹減っちゃったから」の方でなく「たまたま卵塊がそこ(つまりゴックン刺激部位)に接してしまった」と読み解きたいのです。

この辺の希望的考察も、やはり文系的ですね。(笑)

画像は、黄金のタイヤキと呼んでいる、クロイシモチの黄色化個体。この時は、10ぴきを超える雌雄が密集していて驚きました。

クロイシモチの黄色化個体
クロイシモチの黄色化個体

このパパの口内保育は、無事!ハッチアウトしたようです。(笑)

第三話 文系的な考察 中段

狩猟は元来、食べる事を目的としていますが、もっと根源的な部分に「種の根絶」という排他的な本能が隠されています。これは、自分以外の種を滅することで、自分に対する危険を最小限度にするための防衛行動でもあります。つまり、攻撃こそ最大の防御というわけです。(微妙にニュアンス違いますけど)

ここで単に捕食と書かなかったことは、この定義が海洋生物間だけの問題に留まらないからです。つまり、人間が絡む事で、狩猟的な要素がクローズアップされます。話しの展開が、収束出来難い方向へ行くことを覚悟して書き始めます。(弱気)

この人間が絡む狩猟的ファクターには大別して2つあり、一つは職業的側面と、もう一つは趣味的なものがあります。職業的というのは漁業や研究であり、趣味というのは条例違反を含んだ個人的欲求の充足を指します。前者にも、やり過ぎや狩猟的欲求から、歯止めの利かなくなった例もありますが、職業として担保されている権利やルールに基づいていますので、セーフ!あるいはグレイゾーンの範疇です。

しかし、後者の趣味による事例は、話しになりません。知的レベルは、言うに及ばず低く、本能の赴くままに採取しますので、到達目標が「根絶」になっています。中には、自分はそうではないと思っている人が、実に多いことが大きな問題なのかも知れません。自分を何らかの形で正当化している場合は、ほぼこれに該当します。

例えば、季節来遊魚は放っておけば、結局は亡くなってしまうから、採取して良いとか、売買する訳ではないから(個人で楽しむからって、音楽著作権の抜け道か!?)良いとか...自分勝手な解釈で、バカスカ生物を捕っているのは、軌道を明らかに逸脱しています。一部の生態を個人の欲求によって破壊する行為は、浅はかを超えて愚かであり、それに気がついていない事は、超が付く「残念!」な状態です。

これを理系的に数値化して、ここが下限であるから、これ以上の採取は生態系に影響を及ぼす恐れがあるので、あるいは違法的な採取事例が増える事で、生態系のバランスが崩れる恐れがあるので、と言ったようなグラフを伴ったような説明は、他人事のように聞こえてしまい、対岸の火事感バリバリでスルーされることウケ合です。犯罪件数やイジメの問題は、この手の手法で語られる事が多いから、響かないんじゃないのかなぁ〜?

コエダモドキをホストとするウミウサギガイの仲間が付いています

コエダモドキをホストとするウミウサギガイの仲間が付いています。

第三話 文系的な考察 前段

何となくですが、生態や自然科学の話しをしていると、理系的なアプローチを期待されている方がいらっしゃるかも知れませんが、僕は元来「文系型」の人間で、思考の根本がグレイな状態で構成されているので、なかなか白か黒か決められない事が多いのです。

もちろん、統計学的なアプローチや数値データに基づいた考察もしますので、なぁ〜んだ?やりゃ〜できるぢゃん!?って思われる事もありますが、基本は子供やお年寄りを相手に海の茶飲み話に花を咲かせることが好きなんです。(笑)

カエルアンコウとハコフグとミノカサゴ

例えば、この写真を見て何を考えるか?カエルアンコウとハコフグとミノカサゴが写っていますね。これは、偶然「あっ!ラッキー!!」と思ってシャッターを切ってしまったカットですが、実は凄く面白い組み合わせなんです。

まず、カエルアンコウですが捕食魚(フィッシュイーター)です。次にハコフグですが毒保有魚です。最後にミノカサゴですが、捕食魚であり毒保有魚です。

この関係を解説すると、カエルアンコウのルアーを使った索餌行動であったり、体色や形態的な変化によってカムフラージュをする捕食のエキスパートみたいな話しに(どこが理系ダヨ!?)なると思います。

かたやハコフグですが、フグの割にはフグ毒を保有していない、いわゆる表皮毒(パフトキシン)の魚ですが、この毒は防御毒として機能しているので、この魚に対してストレスを与えると、致死に値するほどの毒を発生させて、身を守ります。(っつ〜か、誰も手を出さんでしょ!?)

最後にミノカサゴですが、毒を持っていて、しかも捕食魚と言う、この中ではボスキャラ的な存在です。このタンパク毒は熱性分解をするとは言え、水中生物にとっては熱湯に傷病部位を浸す訳にもいかないので、かなりのダメージを負うと考えられます。

この説明を見る限り、あぁ!僕って、何て文系な!?って事になるのでした。(笑)

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けど、ミノカサゴがカエルアンコウを食べたのは見た事がないので、毒以外にも捕食圧力から防御する術があるのかも知れませんね?

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第二話 アプローチ(もちろん視界不良エリア)後段

さて、まとめます。今までの記述は大まかに言えば、環境に対するアプローチであって、読んでいる人の中には、生物に対するアプローチの虎の巻的な内容を期待していて肩すかしをクラった方もいらっしゃるかも知れませんので、ここは生態の迷路というタイトル(え?もぉ忘れていた!?)らしく、生物に対するチョットしたテクを紐解いて見ようと思います。

濁った水中で、思わぬ魚や生物に出会い頭気味に遭遇して、お互いに驚いた経験ってありませんか?

それって不思議に思いませんか?

もちろん、魚にも目の良い(人間で言うところの視力とは違いますが)魚もいますが、自分が見えているように、つまり視界に入ってから、それを認識して驚いている訳ではありません。ある距離までは、お互いがお互いの存在を認識していないのですが、人間は視界に入って始めて気がつき、生物はどちらかと言うと目からの情報よりも、人間が驚いた時に発する電気信号(ある種のパルス)を関知して、驚いているのです。

半テンポ遅れて水中生物(のクセに)が反応する事に対して、長い間疑問に思っていたのですが、この考察によって最近はチョット納得しています。そうすると、もちろん目からの情報も使っているのでしょうが、このパルスコントロールによって、生物への接近の限界が一段と縮められるように思います。

これも、経験がある方ならば、モニターの向こうで頷いていると思いますが、何故か、カメラを持っていない時の方が生物に寄れる!って事ありませんか?

これは薄々感じていると思いますが、ハウジングやカメラを持っている事で、接近のワーキングディスタンスは、その機材の分だけ離れてしまいます。これは、物理的な問題です。次に、いわゆる「背中から湯気が出ている系」の場合は、メンタルの問題として「もぉ少し冷静になった方が良い」です。ここまでではなくても気負いは、生物の危険センサーに触れてしまうので、一定以上の接近を許してくれません。

んじゃ〜どぉすんだよ!?って思いますよねぇ。当然のことながら、カメラを持っていないようなリラックスした気持ちで、近寄り...仕留める!このイメージトレーニングは大事です。僕の知っている中では、ゆうすけ親分や峯水くんがこのテクを天然でやっているように思います。「う〜ん、おまえなんかに興味ないよぉ〜」と近付き、「なんちゃって〜!」とシャッターを切ります。(笑)

この天然パターンを思い込みでやっているのが阿部秀樹さんかなぁ?(爆)この3人は、ある意味「達人」の域で、この奥義を駆使した撮影をしているように思います。これが出来れば、生物へのアプローチは思いのままです。練習は、家で独りでやって下さいね。

画像は、自分なりの解釈で奥義を駆使して、ワードズームを使って接近して撮影したカンパチをクリーニングするムレハタタテダイです。肝心のムレハタが隠れてしまったところに、僕の脇の甘さがにじみ出てます。

カンパチをクリーニングするムレハタタテダイ

第二話 アプローチ(もちろん視界不良エリア)中段

先月は違い(変化)からのアプローチであり、ある意味ではエントリー前の予測を主体とした考え方でした。

ところが、実際に海や川、湖に入ってみると、思いっ切りハズしたり、スベったりする事も多々あるわけで、その場合には、持ち込んだ物差しを、どのように限られた時間と空気と無減圧潜水時間内に修正し、外していないように見せ、オチをつけるか!?ってことになります。

最後のクダリはガイド的な職業意識の問題なので、一般のダイバーレベルでは、オチをつけるところまでは考えなくても、ケチがつくダイビングにはならないようにすれば良いと思います。ガイドのように、ほぼ行きたい時に海に潜れるのであれば、細かな修正の方法を心得ることができますが、潜る頻度が長くなればなるほど、感覚や嗅覚(実際に臭うわけではありませんが)が良い塩梅になる頃には「終了!」ってなことになってしまいます。

特に、視界不良エリアでは「濁っている」ことが前提ですが、その濁り方が浮遊物(懸汚物)によるものなのか、低質のシルトが舞い上がったものなのか、その粒径は?などの諸条件によって、対処方法が変わってきます。つまり、降雨、波浪、潮流、あるいは春濁りなどの原因によって、濁り方は一様ではない!と言う事です。

写真撮影の場合、出来るだけ機材をコンパクトにまとめたいので、濁りが少ないのであれば、ストロボのアームは短くしたくなりますが、予想を上回る濁りであれば...満天の星空写真のオンパレードになってしまいます。ワイドでは、覿面です。ショートアームでは、自由度は無いし、バリエーションも限られます。僕も、何度となく痛い思いをしていますよ。あの時、アームが長かったら、きっと後世に残る写真が撮影出来ていただろう!?って(笑)

もっとも、潜水を開始する前に、次策(バックアップ)を用意しておいて、海に入って思っていたような状態でなければ、頭をどんどん切り替えて、諸条件にあった観察なり、撮影に勤しまないと、リカバリーができなくなってしまいます。一番、安直な方法としては、なるべく浅い水深で観察や撮影出来るターゲットに変更する事です。そうすれば、空気も無減圧潜水時間も安全に活用できますからね。浅い所が濁っていない事を祈ります。

ホウボウ
ムレハタタテダイ

写真は、幸運にも浅瀬に被写体が充実していて、透明度が良かった時です。

まぁ、えてしてこんな時は、苦し紛れではなく、余裕をもって観察ができますので切迫した感じは微塵も感じません。(苦笑)

第二話 アプローチ(もちろん視界不良エリア)前段

視界不良と言いながらも、全ての座標というか指標軸が三保真崎エリアを中心に組み立てられているため、他のエリアとは違う部分も否めませんが、そこは同じ場所で長くやっているこの髭のオジさんに免じて、お許し下さい。

生態の観察をする際に、考えなければいけない前条件のようなものがあって、大きな括るからいくと、年差、季節差、種差、月差、月齢差、週差、日差、干満差などが挙げられ、もっと大局で見れば、周期差(ここでは10年程度のスパン)が考えられるし、天候による影響も考慮しなければならないし、海伝説的なレベルの話しであれば、閏年(オリンピックイヤー)は、例年のような、と言う言葉が当てはまらない事が多い。

今更、おさらいのような話しで恐縮ですが、ここ前提がキッチりと言うよりも、フレキシブルに組み替えの出来る状態で把握していて、現状を鑑みて微調整ができるところまで思考を働かせることができて、はじめて「相手は自然ですから上手くいきませんね?」って言葉に重みが出てきます。そこまで達していない人が、この言葉を言っても、単に自分の浅はかさを自然のせいにしているだけになってしまいます。

もちろん、誰にだって得意不得意はあって、全てに精通することは不可能です。そして、オジさんが言っていることが必ずしも正しい訳ではありません。だって、僕の常識はあくまでも僕の時代や世代の事象や教育に縛られているわけで、立場が変われば古くさくてカビ臭いかも知れませんからね。ただし、考え方まではカレー臭いと言われないように、常に新しい情報はオツムに放り込んでいます。

ウミヒドラの仲間

画像は最近、一部ガイドおよび情報を提供されるダイバーの間で流行っているウミヒドラの仲間です。

ウミヒドラの仲間

第一話 水棲生物と水中環境(視界不良エリア) 後段おまけ

ちなみに、毎回600〜800字程度で文章を収めようと心がけていると、一つの論旨の展開で終わってしまいます。

実は、ここの結論としては、無理と無謀の狭間で、その天秤の振れ方について述べて幕を降ろす予定でした。ところが、見えない事と目の悪さのクダリが、自分のツボに入ってしまったため、押し進めてしまい、何だか上手い事まとめてしまいましたが、どうも言いたい事を述べないまま次に進むのは、良くないと思い「おまけ」の段を設けました。

単に無理と無謀の違いと言っても、ダイバーの技術や経験によって、その質やレベルは異なります。例えば、残圧で話しをすると、残圧50でエキジットする。これは、一般的に無理の無い範囲の話しになります。しかし、この残圧が少なくなれば少なくなるほど、またエキジットポイントまでの距離や障壁が多くなればなるほど、無理から無謀へと突き進んでゆきます。あなたの考える残圧と状況はどんな状態ですか?

無理は「ことわり」が無い、つまり筋道や辻褄が合わない状況を指しますので、一定の規範や理由を超えてしまっている事を意味します。

で、無謀は「はかりごと」を更に逸脱してしまった状態を意味するので、この状況では殆ど無手であり、自力優勝というか、自らの意思でのリカバリーは出来ない、神のみぞ知る所謂、結果待ちなわけです。

自分に鑑みてみると、残ゼロでエキジットするのが「無理したなぁ〜?」のレベルで、水深10mで空気が無くなるのが無謀かなぁ。

沖堤(三保を知らない人、済みません!)で残圧30って言うのも、かなり無謀ですね。でも、無謀のレベルなら、運が良ければ致命傷にはなりませんが、無謀を超越したレベルに「自殺」って言う恐ろしいエリアが存在します。

例えば、本人にその気が無くても、10本以下の経験しかないOWDが水深60mに単独潜水すれば、それは酔っぱらって頭が痛いからと言って頭痛薬を10錠飲む事とそう変わらないですし、50しか無い残タンで水深30mに忘れて来たカメラを取に行くのは、吹雪の雪山に単独で友達の行方を捜しに行くに等しいです。

何が言いたいのか?それは、人が通常と違う環境に入る際に、どこまで踏み込んで良いのか?それを冷静に判断しなければならないと言う事です。前段、冒頭で述べたような物理的な制限がある中で、無理、無謀、自殺などと言われないような行動を自分がしていないか?ジャッジする、もう一人の自分の存在がダイビングやその他のリスクスポーツには、必要なのだと思います。

アカタチ

第一話 水棲生物と水中環境(視界不良エリア) 後段

なんだよ、透明度の良い海のネガティブキャンペーンか!?と思った人、当たらずとも遠からずです。ここでは、視界不良の海域を底上げするべく、論旨を展開しておりますので、多少の言いがかりを受けたくらいで凹むことのない「ダイバー天国」には、この際「沈む瀬」になってもらおうか?くらいに思っています。(笑)

見えるという当たり前の事実は、時としてマイナスな要因が生じる事は、前段に述べた通りで、見えない事によってセーフティマネージメントが発動し、その後のリスク回避へつながる事もあるのです。(潜らない!という選択肢を含めて)その辺の議論をしないまま「透明度の悪い海は危険だ!」と言うのは誤りなわけですよ。(あくまでも立場はレジスタンスですから)このエリアにおけるクダの巻き方は、滅茶滅茶長けているので、多少の正論を持って来ても論破する自信があります。

別に、そんな事を自慢しても、視界不良の海へとダイバーが蝟集するわけではないので、話しを先に進めます。もちろん、視界不良に対する慣れや経験は大きな要因ですが、向き不向きもあるわけで、僕の主観と言うか客観論で言えば、視力に頼り切らない人・・・つまり、目の悪い人は視界不良のエリアに向いています。

もちろん、個人差はありますし、指向の問題もあるので、一概には言えませんが、目の悪い人は、目からの情報だけを信頼しない、もっと言えば、それを補う感覚に長けているからです。視界が不良であることは、矯正視力を得ていないことに似ているので、人生の半分をピントの合わない情報を取り入れている目の悪い人にとっては、冷静に考えると難しい状況ではないのです。

透明度の良い海で、猛禽類のようなダイビングをする人には、理解出来ないことかも知れませんが、これが視界不良における観察者の条件であり、理論なわけです。あくまでも、手探りで、怯える気持ちを「見る」以外の情報によって補いながら、一枚一枚丁寧にベールを剥がすようなダイビング。ここに視界不良エリアの極意があるのです。

西伊豆 田子 フト根

第一話 水棲生物と水中環境(視界不良エリア) 中段

水中のどんな条件下においても、かかるストレスが同じか!?と言えば、それは全然違うはずです。

呼吸が楽で、視界が良く、水圧が心地よく適当で、中性浮力に問題がなく、暖かい海域でのダイビングであれば、ストレスはあっても、それを上回る快楽によって、相殺以上の効果が生まれ、プレッシャーから解放されてしまいます。

一見して、良さそうに思えますが、ダイビングと言うレジャー、あるいはスポーツにおいて、ある一定の「ストレス」や「プレッシャー」は、必要になります。何故ならば開放感によって、安全装置が簡単に外れてしまい、そこから生まれるある種のトリガーは、リスクを暴発させる恐れがあるからです。

例えば、透明度が高く、陽射しのカーテンが何処までも降り注いでいるような海域では、深さ(暗さ)に対するリミッターが外れ易く、無理を無理と理解出来なくなります。つまり水深に対するセーフティレベルが下がり、危険なエリアに難なく入り込みます。

水中における「中性浮力」と言う翼は、意識があることが前提で、窒素酔いの状態になれば、揚力を維持する事はできなくなり墜落します。窒素酔いによって失われた正常な意識と判断能力が、更に墜落した水深で作用すれば、2度と命ある内に1気圧の空気を吸う事はなくなります。

この文面から恐怖が伝わる人は、大丈夫です。伝わらなかった人は、ブラボーな海域でのダイビングの際は、訳が分からなくても良いので、20m台の水深でのダイビングを推奨します。

西伊豆 田子 弁天島

第一話 水棲生物と水中環境(視界不良エリア) 前段

ワタシたち人間は、普段は陸上での生活をしているため、違う環境へ身をおいた場合、大半の状況においてストレスを感じます。

水中であれば、呼吸、視界、圧力、浮力、体温の損失などによる物理的な制限を受けます。つまり、通常私たちが当たり前のように出来ていた事が出来なくなることで、全ての面において多大なブレーキがかかる事になります。

もちろん、ある程度の「慣れ」によって、ストレスは軽減されてゆきますが、それをゼロにする事は、一人の人間の人生を賭したところで、達成するはずはありません。

さて、上記のように、人間が水中に入って受ける制限は、如何ともし難いものがあり、それを克服する事は、かなり無理を伴います。ならば、その制限の中で最大限に楽しむ(享受する)ためには、どうしたら良いのか? それには、陸上の思考では限界が低すぎます。受ける制限をどのように理解し、解釈するのか? それが鍵になるはずです。

理解と言っても、人それぞれ限界があり、一定のハードルを皆が超えてゆく事は難しいと考えます。ならば、解釈という各々の尺度(ものさし)に基づいて、自分に合わせた都合の良い「分かっちゃった!」を得れば良いのでは?って事になります。

皆が同じように同じ体験を同じ感覚で捉える事はありません。しかし、共有や「分かち合える」ことは可能です。

ガイドダイビングや仲間と潜る場合、海から上がった後のログづけや画像談義などは、同じ時間と空間を共に過ごしたある種のシンパシーを、平均化したり高めたりするものだと思います。この場合、経験や知識の引き出しは多いに越した事はありません。

また、誰も知らない(気がつかなかった)トピックのようなものも、話しのスパイスとして大事ですね。この引き出しやスパイスが豊富な人ほど、良き観察者と言えるのではないでしょうか?

ガラスハゼ

「生態の迷路」序章

生態をググると「学」か「系」が付き、その関係分野で括ると、繁殖生態学や水生生態学が僕らの職域にヒットし、河川生態系や海洋生態系がその活動のエリアとなります。

生態:生物が自然界に生活しているありさま。人間の、社会生活におけるありのままの姿。

the habits of living thingsとあり、人間以外の生物に関しては、自然界と言う枠組みが設定され、人間は社会というバックグラウンドにおける生活と設定されているところがミソですね。

逆説的には、生物が飼育されている状態は、この生態と言う状況が当てはまらない事が出て来てしまい、人間が社会生活から離脱した状態になると、これまた当てはまらないって事が出て来る様ですね。

ここでは、主に水中生物に関する「生態」に関する報告や観察、考察が主なので、あまり人間を主体とした生態を語るつもりはありません。ただし、観察者としての人間に関しては、ある程度の考察が必要と考えられますので、第一章では水中での観察者(ダイバー)の観点に立った、自然界の生物観察の導入的な部分に関して論じてみようと考えます。お楽しみに。

背びれが3又に割れたムレハタタテダイ

終章 研究のこれから

このシリーズは、これにて一旦終了しますが、研究は終わりなく続きます。

現在進行形の研究は、ここから数段階もレベルを上げた状態で続行しています。これ以上、書く事でお調子者の僕が「つい」重大な守秘事項を漏らしてしまう可能性があるので、いい加減にしようと思いました。今、読み返してみても「ギリだなぁ?」って思う部分があって、同業研究者が見ていない事を祈ってしまうほどです。(笑)

前回の最後に「医学的な転用」に触れましたが、これは人がこの毒によってお亡くなりになる事の抑制の研究ではなく、TTXに限らず海洋生物の毒は、麻酔作用の部分に関してや薬学的な利用が促進しています。最近ですと、ウミケムシの毒を使ったお話しが話題になりましたが、興味のある方はググってみて下さい。

陸上生物に比べて海洋生物に有毒な生物が多いことは、なんとなく理解できると思います。勿論、対面積というかエリアの広さで考えれば、海の方が割合として多いから、当たり前の比較論に感じるかも知れません。水中の生物、水中という環境に棲息している生物に毒を持ったものが多いと言う事は、第四話の中編の冒頭でお話ししましたが、魚類では進化の後半に有毒生物が出て来て、フグに至ってはかなり新しい過程におけるものだと...。魚類と言う視点から、動物という拡大した視座で見ると「あれ、生物は海から産まれたんじゃなかった?」と言う矛盾に突き当たります。

実際は、矛盾でもなんでもなく、魚類というパートで考えれば、そのパートの中の進化で「新しいもの」に毒を持つ理由が出て来たと言って良いと思います。もう一つ、面白い矛盾があって、海洋生物の起源とされる熱帯に近いほど、毒性生物は多い訳ですが、そこから拡散(北上)して進化をしていったのなら、拡散の終端部分が進化の後半になる訳だから、寒い所の生物に毒が無い(少ない)のは可笑しいのでは?と言う疑問も生じます。これもある理論によって考察出来ますが、内容の秘密レベルが2段階ほど上昇するので、この辺で止めておきます。

このように、疑問や矛盾に対して、知識を総動員して考察し、その考察をデータによって証明する事で、謎が解き明かされます。このような行為は、特に科学者や研究者だけの特権ではなく、ガイドやダイバーの皆さんが、普段海に潜って感じている疑問や不思議を知る事と、根源的な部分では変わりありません。「何故?なに?」を繰り返す事で、目に映る世界をどんどん変えてみて下さい。

次号からは、またガイドネタに戻って「生態の迷路」というテーマで綴ってゆきたいと思います。お楽しみに。

それから、お知らせです。毎年、静岡市で開催している「三保水中生物研究会」の講演会ですが、今年はちょっと遅めの12/3(土)の18:00〜清水テルサで行います。定員は80名ほどで入場は無料です。ゲストは、な、なんと!リロアン村から「ガルーダ五十嵐」氏を迎え、ガイドのタネ明かしと言うか、ちょっとした謎解きをテーマに講演したいと思います。もちろん、講演会のあとは後宴会で更にヒートアップしますので、そちらも併せてお楽しみ下さい。

師走のお忙しい中とは思いますが、このコラボで面白真面目な講演をするのは前代未聞です。お見逃し無く!

「三保水中生物研究会」の講演会

第四話 索餌行動の考察と謎解き(後編)

話しを元に戻して、ならば保有毒は防御毒としての効果は、あまり期待出来ないという結論に達します。

であれば、フグ毒は何の為に作られているのでしょうか?さぁ難しくなってきました。誰か、この謎を解いてみて下さい。それが分かれば、苦労はしませんね?僕の考察では、毒性にとらわれ過ぎて、もっと大切な事を見過ごしているように思います。多分、鍵やヒントは「毒は結果論」に過ぎないと言うところにあるのだと思います。

つまり、殺傷能力としての働きは重要ではなく、フグが生きてゆく上での、それ以上の重要な働きをTTXが担っているのだと考えます。あくまでも「毒」が必要だったのではなく、必要だった物質がたまたま毒だった、のではないでしょうか?

「死んでしマウ(ッス)!」と言うエキセントリックな事象は、TTXの重要な働きを隠蔽するための、ある種のレトリックなのだと思います。

ちなみに、ここはフグ毒の研究者には笑ってもらえる部分なんですが?(え!?それでも笑えない...)

ちなみに、今更ですが、毒量を示す単位はマウス・ユニット(MU)で表示されます。平たく言えば、その注射した毒で、ねずみが何匹お亡くなりになったか?という事です。

最近は、動物愛護の観点から、あまりこの方法を大っぴらにしなくなりましたが、MUと言う単位は、ネズミ様の屍の上に成り立っているものであり、機械的に検知・表記される数値は、いわゆるMU相当ということになります。

人は、個人差が大きくTTXの純品1〜2mgで5000〜10000MUが致死量とされています。つまり、この量のTTXが含まれている量の部位を食べれば人一人がお亡くなりになりますので、ある意味1HU(ヒューマンユニット)になる訳ですが、そうならないための研究をしているので、早くこの謎解きと医学的な転用を促進してゆかなければなりません。

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第四話 索餌行動の考察と謎解き(中編)

毒を持っている生物は、進化の過程からすると、比較的新しい生物から見られる様になります。

一体どうして、体内に「毒」を持つ必要性が出てきたのでしょうか?そんな事を考えたこと、ありますか?

人間が毒を吐く(笑)のは、ストレスが関係するようですが、ストレス要因ではなさそうです。(もしかして、ストレスだったりして)

ちなみに「保有毒」を持つ生物で思い浮かぶものって何ですか?トゲモミジガイ、スベスベマンジュウガニ、ツムギハゼ、フグの仲間...など、僕らが関係するところで、特に海洋生物に着目して挙げてみました。

魚類に関していえば進化の後の方にしか、毒を保有する魚が居ません。(カサゴの仲間やゴンズイは体外式の防御毒です)

基本的に、魚類図鑑はサメから始まってマンボウで終わっていることが多いと思いますが、それは古いモン順に記載されているからです。シガテラ毒に関しては、地域性というか食性によって変化が大きいので、当てはまらない部分も多いのですが、TTXに関して言えば、マンボウの前に載っているフグの仲間の大半が保有しています。つまりそれまでの進化の過程では、毒を持つ必要というか必然性が無かったと考えられるわけです。

ところで、ヘビなどに見られる攻撃毒(防御毒とも考えられますが)を魚類は持っていませんので、保有毒になりますが、その場合って何の必要があるのでしょうか?

表皮毒は、噛まれた時に相手が吐き出すなど、防御としての効果は期待出来ます。しかし、内蔵や筋肉、精巣などに毒があっても防御にはなりません。(体内に毒を持つ事で、何らかのサインが出て、捕食されないという説もあります)この件に関しては、面白いフグ伝説(笑)があるので紹介しておきます。フグを食べた魚は、毒があるから危ない!という情報を遺伝子によって受け継いでいるからフグは食べられ(襲われ)ないんだ...という話しです。

フグを食べた魚は死んでしまう可能性が高いですし、死なずに済む魚(エソはキタマクラを食べますが、死んでいる状態をあまり見ませんね?)は問題ない訳ですから、食べ続ける訳です。

つまり、死んでしまったらその遺伝情報は遺伝されない訳ですから、この説は無理があります。それでも、果敢に「その中でも生き残った耐性のある極一部の魚が」と食い下がってきますが、そんな薄すっぺらい遺伝情報は自然界のサイバイバルの中では希釈されてしまって、可能性が低く過ぎるので当てになりません。まぁ絶対は存在しませんから、全面的な否定はできませんが、この場では却下させていただきます。(笑)

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モミジガイの卵巣毒量
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第四話 索餌行動の考察と謎解き(前編)

トゲモミジガイの時間帯による水深分布傾向を調べる事で、索餌行動が明らかにされ、そこから何を食べているかが分かり、その胃内容物に毒化原因餌生物が含まれていないか? 索餌された物質が年間を通じて変化していないか? その変化が毒量に影響を与えていないか? などが分かります。

分かります!と簡単に書いてしまいましたが、実際は、6〜7年も掛けて調べていますが、未だに分かっておりません(苦笑)

上記の手順で研究を進めれば、間違いなくトゲモミジガイの毒化のメカニズムは解明される(糸口が見つかる)はずなのですが、面白いもので分からないのです。

この紐解きというか、ジグソーパズルのピースを見つける作業と言うのが実に面白く、福山雅治ばりに「実に!興味深い!!」と唸ってしまうのです。

ここで、何に(あるいは何処で)躓いているのかを言ってしまうと同業研究者からバカにされる(笑)恐れがあるので伏せておきますが、まだ誰も到達していない「謎」に挑戦するのは、有意義で楽しい時間です。

なので、僕の崇高なる研究を目撃して、あっ!また遊んでるぅ〜とか言わないで下さい。(笑)

僕は、トゲモミジガイと言う、見てクレが悪く、誰も見向きもしないようなヒトデを通じて、生物の歴史を遡る旅に出ようとしているのです。

えっ?どんな旅だって?

それを語り始めると年内どころか、下手すると年度末までその話しになっちゃいそうなので次回、ほんの触りの部分だけをお話ししますね。(終われば良いけど)

第三話 調査方法(後編)

もちろん、開始時間を終了時間の長さは関係があります。その日の天候によっても出現率に変化は見られますが、昼間の調査でも、夕方に近づくに連れてトゲモミジガイが見られる様になってきたり、冬の季節であれば、日没の時間が早いため、3本目のラインが終わる頃には、夜間調査の準備を始めなければならないような事にもなります。

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最終的に、僕はサンプリングを除く作業行程を1ラインあたり1時間で終わらせるようになりました。そのスピードで調査を行わないとその日の内に終わらない(笑)という事と開始と終了時の差異が大きくなる(潮汐流などの影響を含む)ことを防ぎたかったからです。

こういう精度を上げる事は、非常に大切な事なんですけど、大局から見ると実は大きな変化は見られなかったりもします。

統計学的に見ると、1つ1つのデータが命ですから、傾向を量る上でその情報の正確性が問われます。

しかし、傾向を見るだけであれば、平均値の中に含まれてしまった数値は、問題視されないし、飛び抜けた数値があればピークとして振れはしますが、やはり埋没してゆく数の一つでしかないのです。

実も蓋もない言い方をすると、身を削って手に入れたデータですが極論、ROVを使って中心線から左右1mをモニターに写るように、ゆっくりドリーで撮影すれば、同じデータが手に入ります。たまたま今回の調査海域は最大水深が11m程度で、ダイバー調査でも可能な領域だったので行いましたが、最大水深があと数m深ければ、ダイバーによる調査では無理な計画になってしまったはずです。(エンリッチドエアーナイトロックスやリブリーザーを使えば別ですが)これは僕の経験からの印象ですが、この水深ですと無減圧潜水時間が長いので、一見イージーに見えてしまいますが、窒素の出入りの遅い組織にガッツりと窒素が溜まりますので、計画通りに行うとかなり危険な調査ということになります。

しかし、その辺のことは研究の命題の前では霞んでしまうことが多いので、物理的に不可能な計画(人員が変わる事で無理になってしまうような計画)は、やらない方が良いです。つまり、僕が出来たからと言って、学生が出来る訳でない調査をやるべきではないという事になります。もちろん、途中から昼間のデータは必要なくなり、夜間の調査だけになったので、無理(ネガティブな部分)は格段に少なくなりました。

それでも、この調査を行うには、かなりのスキルと経験が必要だと思います。

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第三話 調査方法(中編)

さて、本題の個体数と分布の目視観察および、夜間は加えて行うサンプリング作業に関する内容を記述してみます。

海岸の汀線に平行して、決められた基準線から沖合に向かって、10m間隔に3本のライン(巻き尺)をセットします。初めに3本セットしても良いですし、巻き尺の個数が足りなければ、1回ごとに回収して行っても構いません。陸上作業員の支援体制の問題(人数や慣れ)もありますので、ケースバイケースです。

数年前には、卒研生が2人とも女子だったり、全くダイビングが出来ない学生がこの研究を選択したりと、教授と僕の作業(主に僕のパートですが)が目紛しいほど多く、かなり効率良く作業を進めないと膨大な時間が掛かってしまいます。

想像してみて下さい。80mラインの左右を1mの方形枠を置いて、その中に入っているヒトデ3種の数を記録してゆくのです。1本のラインで160回のカウント及び状況に応じて撮影...それを3本。1カウントを30秒で行って1ライン当たり80分ほど掛かります。セット・回収、その他余剰時間を考えると、1本で約90〜100分、休憩をしないで行っても3本で4時間半〜5時間ほど掛かる計算になります。

勘の良い人は、既にこの時点でいくつかの疑問が浮かんでいると思います。

つまり、この調査計画と方法は、これだけの時間を要する事を前提(想像)としていなかった、と言う事です。数値化や可視化は研究において、必要不可欠な言わば基礎ですが、それを誰が行うのか?その作業の難易度は?一体どれほどの時間が掛かるのか?

そして、その時間経過は出現個体数に影響を及ぼさないか?と言う観点がどれかでも欠落していると、根底が覆ってしまいます。

後編に続く。

第三話 調査方法(前編)

ライントランセクト法が今回の調査方法でした。

1m四方の方形枠(塩ビのパイプを正方形に組み合わせたもの)を基準線の左右に展開して、その中にいるトゲモミジガイ、モミジガイ、更には対象区としてイトマキヒトデの数もカウントしました。

実は、この1年前にも同じ調査を行いました。しかし、汀線際から等間隔、沖に向かって等距離のメジャーを張りましたが、この汀線というのが曖昧で、厳密に干満時間に対する補正を行っていなかったので、最終的にデータの整合性に問題が出てしまいました。

これを踏まえて、海岸に基点と基準線を設けて、潮汐に関係なく毎回同じ位置と距離で調査が行えるようにしました。ちなみに、このデータは、2006年と2007年に行った調査によって得られたもの元につくられております。

1日の調査で、80mの側線を3本、昼間と夜間に各1回行います。透明度は三保の内海ですから、良い時で3mほどです。水深はボトムで最大12mほどですが、調査行程を想像してみて下さい、基点から巻き尺を持って沖合いに向かってラインを張り、側線をセットします。次に、方形枠、カメラ、水中ノートを持って調査になります。同時並行で、記録し終わった調査地点から必要数だけトゲモミジガイをサンプリングしますが、ここまでは手が回らないので、教授か学生が行っています。

サンプリングに際しては、地元漁協さんの同意と県に対して「特別採捕許可」をいただいて行いました。各都道府県が定める漁業関係調整規則には、水産動植物を採捕するにあたり、採取に用いる道具や漁具、種類、数量、期間、採捕に従事する人を明確にし、それを申請して許可を得なければなりません。内容はこんな感じです。

特別採捕許可申請書

興味のある方は、各都道府県のホームページに必ず記載がありますので参照してみて下さい。

僕らガイドはフィールドを案内して、生物を紹介して生業としていますので、そのフィールドで生物を採取する事には気を遣います。

1つは漁業者に対しての配慮と、もう1つはコンプライアンスを怠った時の風評です。

「あいつは、普段は人に取るなとか、触るなって言っているのに自分は別なんだね?」なんて言われた日には...お店をたたまなければいけなくなりますし、スタッフもいたたまれないです。

なので、堅いとか融通が利かないとか言われても、ここは死守しなければならない、そのエリアでトップを自負するガイドの努めだと思っています。これは、学者や研究者の方々にも理解して欲しい事ですし、馴れ合いやナァナァの体質でいつまでも続けて良い事ではありません。どんな場合も正論が必ずしも正しい訳ではありませんが、いろいろな事を適正化してゆくためには、必要なことだと思っています。

中編に続く。

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