降るのは雨の八丈島
先日、珍しくスタッフだけでナイトに出かけました。
海の中のことは「つぶやき」の方に書いたのですが、この時、空は満天の星空で、薄っすらとですが天の川も見えていました。
これこそ星降る夜。あまりにも綺麗だったので、これは撮りたい!
そうだ、次号の豪海倶楽部は、星空の写真にしよう。そう思ったのです。
しかし、その翌日からは毎日続く曇り空。
夕方になるとシャルルと散歩へ出かけ、空を見上げては溜息、ふぅ。
そう言えば、八丈島は雨の多い島でした。
春の嵐から始まり、菜種梅雨を迎え、爆弾低気圧に驚き、本格的な梅雨で何もかもカビだらけとなり、台風襲来で吹き飛ばされ、秋の長雨にうんざりし、冬の低気圧で船と飛行機の欠航が続くのです。
SNSのタイムラインには美しい紅葉の写真が増え、所によっては白い雪が舞い始めているというのに、八丈島は何もかも灰色になってしまいそうな、どんよりとした曇り空に冷たい雨。
今日は朝から土砂降りで、気持ちまで、どんよりと暗く沈んでしまいそうな天気です。
一体、八丈島で見る人に感動してもらえるようなキラキラな美しい写真は撮れるのか??
もし撮れるとしても、一年のうちに数日しかないんじゃないのか??
と、どんどんマイナス思考に落ちていっていたのですが、途中で、それならそれでも良いじゃん。と開き直ってみました。この暗い雰囲気が、本当の八丈島なのよ。
朝から晩まで、時間の経過が感じられない外。
ダイビングはおろか、買い物に出かけるのも躊躇してしまいます。
一生懸命撮っていたら、横でメロンが寂しそうにしていました。これも、レグルスではよく見かける光景かな。今日は散歩に行けそうにありません。
今夜から明日の午前中は晴れの予報。
こんなにたくさんの厚い雲が、夜にはどっかにいってなくなっちゃうのでしょうか?
今夜、満天の星空になったら、この原稿は書き換えるかも知れません。
このままの可能性の方が、高い気がするけど。
カメの甲羅
やっと認知度が上がってきたかと思うのですが、八丈島ではアオウミガメがいたるところで見られます。
ダイビングをしない人でも、海水浴やシュノーケリングでも見られます。
もちろん、八丈島を訪れた人たちは、海でカメに出会えれば大喜び。サークル合宿でやってくる学生ダイバーも大喜び。
多い時では1ダイブで20個体以上見ることができることさえあります。
そんなダイビングの後に「次のダイビングはどうします?」とリクエストを伺うと、「次もカメで!!」とおっしゃる方がいるほどアオウミガメは永遠のアイドルです。
八丈島のアオウミガメは、怖いくらい大きなものから、とても可愛い小さいサイズまで、根の上で海藻を無心になって食べていたり、中層をのんびり泳いでいたり、根の隙間に頭を突っ込んで寝ていたりと、いろいろです。
ダイバーが周りを取り囲んで、ぱちぱち写真を撮っても意に関せず。
「八丈島のカメって、どうしてこんなにフレンドリーなんですか? 全然逃げないですよね??」と聞かれますが、理由はよくわかりません。
昔、昔、島の人にとってカメは大切な食糧で、私が八丈島に来た頃には居酒屋のメニューにカメ料理が載っていました。
しかし、ものすごく美味しいというわけでもないので人気もなく、食糧だって他に豊富に手に入るようになり、カメを取って食べる人はいなくなりました。
カメは食べるものではなく、愛でるものになったのです。そんな人間の勝手な事情を、もしかしたら察知しているのかもしれません。
このカメの甲羅、八丈島に黒潮が当たっていて水温が高い時期が続くと、とても綺麗な状態が保たれます。
ところが冷水塊が当たって水温の低い時期が続くと、あっと言う間に藻で覆われ、もしゃもしゃのヌルヌルになってしまいます。アオウミガメ自身が動かなくなってしまうせいもあるようですが、お掃除部隊の人手が減ってしまうせいもあるようです。
実はアオウミガメは、人間だけでなくサカナたちにも愛されています。
根の隙間に入って寝ていると、いろんなサカナたちが集まってきて、甲羅をお掃除。よくレンテンヤッコがついばんでいるのを見かけますが、この日はノコギリヨウジたちが集まっていました。
ノコギリヨウジなんて、普段はすぐ暗がりに引っ込んでしまって写真なんて撮れないのに、今日はみんなカメの甲羅掃除に夢中のようでした。
目が覚める頃には、つるつるぴかぴか?
さぞかしさっぱりしていることでしょう。
モノクロ八丈
加藤家の長男が写真集を出しました。
もちろん、書店で買えるような大層なものではなく、渋谷で写真展をやった作品を集めた小冊子みたいなものです。
そもそもバンド活動がメインで、フジロックにまで出てしまったのですからそれだけでもすごいなあと思うのですが、自分の写真を人に買ってもらえるというのは、たいしたことだと思います。
もちろん、買いましたよ。お父さん経由で。
小さな小冊子とCDをセットにして、紐で結んであります。中に私宛の手紙も入っていました。
私がレグルスに来た時、彼はまだ小学生で、こういう大人になるとは予想外だったような、でも納得できるような。ちょっと不思議な感じです。
そのCDを聞きながら原稿を書いています。
音楽のことはよくわからないけど、写真は全てモノクロ写真で、ああ、私ってこういう写真は撮ろうとしたことがなかったなあと思うようなものばかり。
どう考えても、ただ歩いたり、ごはん食べたり、何かしている時に、目に付いたものをぱちぱちっと適当に撮っただけでしょ?と言いたくなるようなカットなのですが、妙に八丈島のことがよく表されていて印象に残ってしまうのです。
私はと言えば、写真を撮る時には、まず「写真を撮るぞ!」的な気合を入り、頭の中から準備が始め、歩き回り、自分が思い描いた絵を現実の中で探し当て、被写体を決め、背景を見て、露出を調整し、あーでもない、こうでもないとカメラを弄繰り回しているのです。
絵に描いたような美しい写真が撮れたとしても、なんとなく生活感とか人間味なんてものがない。そのことに気が付いたことがありませんでした。
そういうわけで、今回はいつもと違う写真を撮ってみよう! と、近くの底土海岸に出かけてみました。彼のマネをしてモノクロ写真。これもよく考えてみたら初挑戦。
人は写ってないけど、なんとなく人間の匂いがしそうな写真を目指してみました。底土海岸の写真集です。
ちょっと今風な感じになったでしょうか。やってみると意外と難しいです。
難しいと感じているようじゃ、まだまだなのかな。
ひまわり、たんぽぽ、すずめだい
2007年のことですから、かれこれ10年近くも前です。西表の矢野さんのところで潜らせてもらいました。
当時、スズメダイについていろいろと疑問を持っていた親方の加藤から頼まれて、矢野さんにコガネスズメダイについて質問しました。
細かいことはもう覚えていないのですが、その時矢野さんが
「あの本見た時、びっくりしたんだよな。こんなの見たことないって。」
とおっしゃったのです。
あの本、というのは、山と渓谷社の「日本の海水魚」。その439ページに載っているコガネスズメダイ。その右下隅っこに載っている幼魚の写真を見て驚かれたそうです。
よく見ると撮影地はどれも伊豆半島と伊豆大島。
「西表にもコガネスズメダイはいるって思ってたんだけど、この写真のサカナと違うんだよな。幼魚は、こんなんじゃないんだよ。」
一見、黄色い体色のインパクトが強すぎて、どれもこれもコガネスズメダイと呼ばれていたスズメダイ。
よく見ると、実はその中に複数の種類が混在していて、伊豆で見られるタイプと西表で見られるタイプ、どちらかがコガネスズメダイではなかったのです。
結局、数年前に、西表で見られるスズメダイに、ヒマワリスズメダイという名が付きました。
両方を見比べてみないことには、なかなか見分けられるようにならないかも知れません。実は八丈島、コガネもヒマワリも、どちらも幼魚から成魚まで全てのステージを見ることができます。色は同じ黄色ですが、コガネはふっくらした体形、ヒマワリはスリムです。
コガネスズメダイの幼魚は丸っこくって豆粒のよう。ある程度までは成長して大きくなっても可愛く感じられます。
ヒマワリスズメダイは細長く、幼魚は可愛いのに、成長すると目の周りが黒ずんで顔色が悪い印象になります。
これでコガネは分類上混じりっけなしのスズメダイになったのですが、ヒマワリの中にはまだ複数が混在しているのではなかろうか?という話が残っていました。
八丈島では、ヒマワリスズメダイと言えば、1種類しか見られません。
ではどうしてそんな疑問が出たのか? と言うと、海外で見かけたスズメダイの中に、どうしても名前がわからないものがいたからなのです。
幼魚はヒレだけが黄色いのでアルファスズメダイのような気もするけど、大きいものは体色も黄色っぽくコガネスズメダイに似ているという、なんだか厄介な存在でした。
コガネとヒマワリがちゃんと分けられていなかった頃には、訳がわからないという感じ。私が初めて写真を撮ったのは2005年のフィリピンで。矢野さんと出会う、さらに前の話でした。まだカメラが銀塩です。
2011年に出した「スズメダイ」の本には「ヒマワリスズメダイ タイプ2」として掲載されています。
先日、このスズメダイに、やっと名前がつきました。なんと、タンポポ。黄色い花シリーズです。
名前を付けたのは、鹿児島でスズメダイの分類を進めていらっしゃる岩坪さん。
さらに驚いたことに、このニュースが9月17日付の読売新聞の鹿児島版に掲載されたのです。ヒマワリとタンポポの生態写真も掲載され、撮影者として加藤の名前も載っていました。
あともう1つ、八丈島には名前の付いていないスズメダイが残っています。
もう少ししたら和名が付くはず。デビューが待ち遠しいな。
ハイビスカス
八丈島に初めて来たゲストを乗せて車で走っていると、後部座席から
「うわぁ、赤い花がいっぱい咲いてる。まるで南国みたい。」
と歓声が聞こえてきます。
赤い花はハイビスカス。八丈島では1年のうち9ヶ月は咲いています。八丈島は決して南国ではなく、冬は寒いです。
しかしゴールデンウィークから秋にかけてやってくる大勢の観光客の「南国に来た〜♪」という気分を盛り上げるために、東京都がほぼ全ての都道にハイビスカスを植えてくれているのです。
レグルスのショップ前も都道ですので、毎日大輪の花を咲かせてくれています。
晴れた日に、ハイビスカスを眺めながらテラスのハンモックで揺られていると、ここで暮らしていてもリゾート気分に浸れます。
このハイビスカス、野生のものだけで約250種もあり、園芸品種まで加えると相当な数の種数があるそうです。
八丈島でよく見かける赤いハイビスカスはブッソウゲという名前で、風や潮に強く、海辺の家の生垣などに適しています。
レグルスも海の近くなので、特に台風の時などは大量の潮風が当たります。塩分に弱いアジサイなどは、葉っぱが茶色く変色してしまうのですが、ハイビスカスの葉はいつも青々としています。海辺の公園でも、ハイビスカスがもりもり育っています。
ところが、夕方になって周りが薄暗くなってくると、大輪のハイビスカスはまた蕾に戻ってしまいます。夜には全部蕾になって、ご就寝。そのうちのいくつかは、蕾のまま、ぼとっ落ちてしまいます。
どうやら、ハイビスカスは明るい日中に花を咲かせ、暗くなると花を閉じ、それを何度か繰り返した後に蕾の状態で落ちてしまうようです。
他の花のように、花びらを1枚ずつ落としていくことはなく、咲いた状態でぼとっと落ちる椿とも趣が異なります。
そして冬が近づいてくると、ハイビスカスの花はどんどん小さくなっていきます。
新年を迎える頃のサイズは、夏の半分くらい。数も少なく、ぽつぽつと可愛らしく咲いて、同じ花とは思えません。
今年も、2ヶ月カレンダーが最後の1枚。例年と比べるとまだまだ暑い日が続いているのですが、これから急激に冬がやってくるのでしょうか?
ハイビスカスは、まだまだ咲きたがっているように見えるのは気のせいでしょうか。
台風後のチョウチョたち
8月は台風7号に始まり、台風9号が直撃し、台風10号のリターンに怯える月末。今のところ、キャンセルが相次いでいるという経済的な打撃以外は、特に何の被害も出ていません。
台風9号の際には、自販機が倒れたり、底土の駐車場に停車中の車の窓ガラスが割れたり、海水浴場の防災小屋が吹き飛んだり、交差点の信号機が斜め向こう側を向いてしまったり。その程度の被害で済みました。
テレビ中継では八丈島の暴風雨の様子が流れ、たくさんの方にご心配頂きましたが、怪我人が出たり、家屋が破損するようなことはなかったようです。
普通、台風接近時には海も大しけとなり、海況が落ち着いてから潜る1本目には水中の荒れ果てた様子に驚かされます。こんなものまで動かせるのか?と思うような大岩が転がっていたり、真っ二つにわれていたりします。
海藻や海綿で覆われていたはずのテトラポットが、傷だらけになって、新しいコンクリートの面が剥き出しになっていたりします。そして、嘘のようにサカナが少なくなり、シーンと静まり返ったように感じる、廃墟のような水中。
幸い、今のところ、そんな風にはなりませんでした。
それどころか、台風が近くを通過していくたびに、新しいメンバーが加わって、海の中がますます賑やかになっていっているのです。今年の特徴は、台風の度にユウゼンの幼魚が増えていること。
もちろん、八丈島では成魚なら一年中見られます。しかし、潮通しの良いポイントのみ。湾内のポイントでは見ることはありません。これが幼魚となると、例年なら秋頃のみ。全く見られない年もありました。
それなのに、今年の初見は8月初旬。台風7号通過後からどんどん増え、9号通過後の今、ほとんどすべての主要ポイントで目撃されているのです。ガイドが探さなくても、ゲストが自分で見つけてくれます。幼魚も成魚も同じ色・形なのですが、なぜか小さければ小さいほど、かわい〜っ!
アップで撮ると、いまいちそのかわいさが伝わらないかも知れませんが、ひいて撮ると…同じユウゼン、こんなにちっちゃいんです。
ユウゼンだけではありません。チョウチョウウオとキンチャクダイの幼魚は、豊作です。どれもこれも、成魚と変わらないのですが、小さいというだけで、萌えます。
ペンダントヘッドにしたいアミメチョウ。
シチセンチョウもシラコダイの幼魚と同じ大きさ。おこちゃまなので、ペアではありません。素敵な相方が見つかると良いね。
キンチャクダイ系は写真を撮りに行く機会がありませんでしたが、驚くほどソメワケヤッコの幼魚が急増しました。他にもスミレヤッコやレンテンヤッコ、トサヤッコの幼魚がいっぱい。
猛烈な台風10号、みんな無事にやり過ごすことができるのでしょうか?
この原稿が公開されている頃には過ぎ去っているはず。
本州上陸か?という予報も出ています。皆さん、ご無事で!!
スマホで花火
今年も恒例の花火大会。曜日に関係なく、毎年8月11日です。たいてい平日なので、いかにも島民による島民のためのイベントという感じだったのですが、今年は違いました。
今まで、8月11日は島民や一部の人だけが知っている八丈島の花火大会の日だったのに、今年から「山の日」という国民的祝日になってしまったのです。
花火と山は全然関係ありませんが、ただでさえもお盆。祝日になってしまった以上、例年より大勢の人が島に来て、例年より大勢の人が花火大会に集まっていたように思います。
年によっては、なんだか閑散としていて、このまま消滅しちゃうんじゃないの?と危ぶんでいたのですが、ちょっと盛り返した感じで、ちょっと嬉しい。気のせいか、花火も多め?
毎年花火を撮っていますが、最初はフィルム一眼レフ、そして、デジタル一眼レフ、ミラーレス一眼、コンデジ、そして昨年はタブレット…とくれば、今年はスマホでしょう。どんどん身軽になっています。昔は三脚かついで出かけていたのに。
その前にガラケーでも撮っていましたが、メールに添付する程度なら十分でした。でもネットに上げるにはちょっとね。
一眼の時には、花火が打ちあがる前からシャッタースピードだの絞りだのISO感度だの、どうしよう?そうしよう!と、あれこれ考え、最初の数発は試し打ちぱっかりでしたが、コンデジになってからは花火モードにしたり、HDRモードにしてみれば良いだけ。
さて、スマホはどう撮れば良いんだろう?
私のスマホ、いわゆる格安SIMを入れているASUS(エイスース)なのですが、カメラを立ち上げると普段は「オート」なのですが、設定のメニューボタンを押してみると、ISO感度だの、ホワイトバランスだの、かなりいろいろいじれます。
むむむ、これは意外と大変かも…?と思っていながら、とりあえず花火にスマホを向けると、勝手にローライトモードというのになってくれました。どうやら、暗い場所で撮るためのモードらしいです。
設定をいじっている暇がないので、結局そのローライトモードとやらで撮影。
八丈島の花火大会は、規模も小さいし、打ち上げる数も少ないけど、近くで見られるのが醍醐味です。普段は東海汽船が着岸する桟橋の中ほどから打ちあがっています。
その様子を、私たちは底土海岸や、ロータリーの駐車場から眺めています。
駐車場には屋台が出ているので、打ち上げ前に買っておいたビールやたこ焼きを食べながら、まるで夜のお花見気分。
風向きによっては火の粉が飛んできて怖いくらいなのですが、今年はほぼ無風。雨も降らず、最高のコンディション。
あー、なんで台湾で買った外付けのワイドレンズ、持って行かなかったんだろう。
来年にリベンジかな。って、来年もスマホで撮ってるのかしら。それとも、また新しいおもちゃを手に入れているでしょうか?
1年後のお楽しみです。
水たまりの中で
八丈島に来るダイバーが大好きなナズマド。
そのエントリー口の横に、小さなタイドプールがあります。潮位が下がると、その大きさは民宿の大浴場の浴槽くらいの広さ。深さも1.5m前後。水がないと脱ぎ着ができないロクハンのダイバーが、ここを使います。
潮位が上がると、外海とつながり、タイドプールの存在は見えなくなってしまいます。
水底に横穴は見えませんが、外海とつながっているらしく、いつも水面の位置は外と同じです。
冷水塊の時期が続き、長い間このプールの水が少ない状態が続くと、なんとなく水色が悪くなり、磯臭さが強くなってきます。中にいる生き物は、ヤドカリたちやニシキベラばかり。
ところが、黒潮がやってきて潮位が上がり、毎日のようにざぶんざぶんとたくさんの水が出入りするようになると、中の様子も一変します。
先日は外洋で暮らすため、ダイビング中にお目にかかることはないであろうシイラの子供が入り込んでいました。近くに浮いている枯草などのゴミに一生懸命寄り添っています。
大きいものなら珍しくない、極小のボラの子供たち。
もちろん、タイドプールでは定番のカエルウオも。
この狭いタイドプールの中で数が増えすぎ、テリトリー争いが激化。みんな一か所にとどまることなく、安住できそうな穴を奪い合って水底で泳ぎ回っていました。
この中でみんなが産卵したり、卵を守ったりするのかと思うと、かなり楽しみです。
他にもニジハギ、ネズスズメ、シマハギなど、夏の季節来遊魚たちの姿がたくさん見られました。お1人様限定ですが、この中だけでもかなり楽しめます。
ナズマドに来たら、横を素通りせずに、マスクだけ付けてのぞいてみてください。
お願いポケモン
今年の夏は早くから暑い日が続くせいで、海の日の連休前から体験ダイビングの問合せが途切れることがありません。
つい先日のことです。
ゲストはカップルの2名。ホテルからレグルスへお連れする車中でのこと。静かだった後部座席から、突然声が聞こえました。
「あっ!!」と、女性の声。
何か忘れ物かと思って振り返ろうとしたら
「いたね。」と、男性の声。
「うん、今、3匹。」
バックミラー越しには、スマホを見つめる2人の姿。私が心の中で思っていたことを、女性の方が声に出しておっしゃいました。
「あたしたち、何しに八丈島に来てるんだろうね?」
ま、とりあえず、ダイビングもすることだし、良いんじゃないかしら?
海の中ではスマホでは体験できない浮遊感と、青い海の水の感触を体全体で楽しんで頂きました。
社会現象にまでなっているポケモンGO、いろいろ問題はあるのでしょうが、これを利用しない手はないと思っている民間企業や自治体は少なくないはず。もう既にマクドナルドがコラボしていたり、神戸市がプロジェクトチームを立ち上げたり。各地のゆるキャラみたいな、ご当地モンスターができれば、きっとそれをゲットしに旅行へ出かける人が増えるんじゃないでしょうか。
マジで、レグルスダイビングにポケモンを置いてくれれば、そのうちの何人かは体験ダイビングに興味を持つんじゃないか? などと思っています。
それとも、用もないのに店の前をうろつく人が増えて困るでしょうか?
ここ数日、レグルスの店の前を、スマホを持って行ったり来たりする人の姿を見かけるようにはなりました。しかし、各地でニュースになっている状態からはほど遠く、ほんの数人。だって、ポケモンとか、ポケモンステーションとか、ジムとか? いろんなものが、少ないんですもん。なんだか地図に現れるマークがまばらです。
いつもシャルルと散歩している垂土海岸では、全く何も現れなかったので、仕方なくいつもと違うコースで散歩。しかし、せっかくポケモンを見つけても、シャルルが立ち止まることを許してくれません。
っていうか、シャルルがポケモンになってる?
いろんなアイテムを手に入れることができるポケモンステーション。
レグルスから一番近いところでは、いつも体験ダイビングのゲストの記念撮影をする底土海岸の看板の場所。近くに立つと、スマホにはこんな風に表示されます。レグルスもポケモンステーションになれば良いのになあ。
今年の夏は、この看板の前にスマホを持った人たちがたむろするのでしょうか。
この看板の前で体験ダイビングのビラでも配るか!?
お願いポケモン、レグルスに来て〜♪
遅すぎたショータイム
ちょっと飽きて離れてきている人が多いようですが、いろんなサイトで各地のダイビングポイントの様子がリアルタイムでレポートしてくれるようになりました。
もちろん、ダイビングショップもできるだけ毎日のように海況速報を流しています。そして、そこで潜ったダイバーたちも、撮った写真と一緒に、いろんな情報を流してくれます。世の中便利になったなあと思います。
でも、最近ちょっと気が付いたことがありました。今年になってからも数回あったことなのですが、
「ものすごくよかった、楽しかった、こんなものが見られた…」
と、レポートを書いていた方に実際に会った時に
「楽しかったんですってね!?」
と聞くと、
「いやあ、まあ楽しかったのはホントなんですけどね、海況が悪くて大変だったんですよ。本当は3日間潜るつもりだったんですけど、最後はもう潜れなくなっちゃって…」
という答えが返ってきたりするのです。
あれ? そんなこと一言も書いてなかったのに。確かにネット上に、つまらなかったとか、寒かったとか、透明度が悪かったとか、愚痴めいたことを書いても楽しくないし、読んでくれている人たち嫌な気分にさせてしまうかもと思うのかも知れません。それが良いか悪いかということではなく、情報源として皆さんが書いているレポートを、あながち鵜呑みにするわけにはいかないなあと思ってしまったのでした。
当たり前の話だと思いますが、現地のダイビングサービスが海況速報で、
「今日は面白くありませんでした、透明度も悪かったし、うねってて写真なんか撮れないし…」
なんてネガティブな話は書きません。
透明度悪くったってマクロやってれば関係ないし、うねってたって頑張れば何かしら撮れるし、面白かった!と言ってしまえば、面白かったことになるのです。
今の八丈島も、ウミウシは次から次へと見つかり、特にウミコチョウの類は各種見られ、ジャパピグもたくさんいるし、ハンマーもニタリも出てるし、文句なしに面白い。
でも、今月は、ちょっとだけ本当のことを書きます。
6月は本当に水温が引くかったんです。なんと一番低いときで12度まで下がりました。確か先々月、今年は水温が高いから、早くアオリイカの産卵床を入れなくっちゃ!!と、準備している様子をお知らせしました。そのあと、急降下です。
例年ならゴールデンウィークから一ヶ月以上楽しめているアオリイカの産卵、全く見ることができませんでした。もう、今頃は終わる時期です。
それが、3〜4日前から、やっと水温が20℃まで回復してきました。時々22℃まで上がります。すると、どうでしょう。今頃になって、アオリイカがぽつぽつと産卵のために集まってくるようになってきたのです。
産卵の時期って、今からでも良いんでしょうか?
この原稿を書いている今日、潜って帰ってきた人たちに聞くと、10ペアくらい集まっていたそうです。これから本格的に産卵?
一方、既にアオリイカの子供たちも現れ始めました。一体、どうなっていることやら。
予報では、7月の水温は高くなるそうです。
8月は…こそのまま続いてくれると良いのですが、天気予報ほど当たりません。
また、たまには正直に書いてみたいと思います。乞うご期待。
スマホでワイド
今年のオフの時期に台湾へ行った時のことです。
台北市内で有名な夜市の中で、いくつかの店が店頭でスマホ用のワイドレンズを売っていました。
もちろん、日本でも売っています。ネットで検索すれば、それはもうピンからキリまで。多くはだいたい1,500円前後のようです。
今までにもほしいなあと思ったことはあるのですが、そんなに使う機会はないだろうしと思って、なんとなく控えていました。
しかし、台北の夜市で売っていたのは、たった100円。しかも、店員さんが、ものすごい情熱で売り込んでくるのです。100円なら、すぐに壊れてもいっか? と、つい買ってみました。
店員さんの説明を聞いてわかったのですが、これってセルカ棒の代わりなんですね。自分で自分を撮るための長い棒。最近、人が多い場所や神社仏閣などの歴史的建造物の中などでは使用が禁止されています。
でも、このワイドレンズをつければ、セルカ棒なんてなくても自分の腕を伸ばせばOK。ちゃんと自分と、その背景が写ります。私もいろんな場所で自撮りして遊びました。
そして先月、スマホでも意外と良いマクロ写真が撮れるんじゃんと思った私は、今度は真面目に(?)ワイド写真を撮ってみようと思ったのです。まず、ワイドレンズを付けると、一体どの程度撮影できる範囲が広がるんでしょう?
試しに、招き猫をパチリ。
撮ってみてびっくり。何も付けてない状態でも相当近寄れるのですが、ワイドレンズを付けるとさらに寄れます。手前の招き猫にレンズがぶつかりそうです。
このスマホの位置を全く変えずに、ワイドレンズだけはずすと、こんな風になっちゃいます。
手前の招き猫にはピントが合わなくなってしまいました。
これってけっこう面白いかも! と、そばにいたシャルルをパチリ。
海岸の散歩にも持って出かけてみました。今、海辺では「ハマゴウ」という海浜植物が、小さくて薄紫色の花をたくさん咲かせています。
ハマゴウもシャルルも、どっちも撮りたい! と思いつつ、1人で汗だく。
100円で、こんなに遊べるなんて、すごいコストパフォーマンス。ますますコンデジを持ち歩かなくなりそうなのですが、こんなことで良いのかなあ?
工夫すれば、もっと面白い写真が撮れそうで、ちょっとワクワクしています。
ベラ街道を行く
加藤昌一の「ベラ・ブダイ図鑑」が、そろそろ佳境に入ってきました。
掲載予定の写真はだいたい揃い、今は識別ポイントを表したイラストを描き、説明文と写真のキャプションを書いているところです。
約190種のベラとブダイ。
パソコンの中には、その種数と同じフォルダーがあって、その中に写真データー、イラスト、説明&キャプションのテキストファイルが入っています。
フォルダー名は、通し番号と種名。例えば「009_スジキツネベラ」という名前が付いています。
001番から始めて、今隣で加藤が描いているイラストが147番。私は後から追って、それらを全部見直していて、その作業が069番。まだまだ遠い道のりです。
例えば、ツユベラやカンムリベラなら簡単なのです。
幼魚は、伊豆の季節来遊魚として、頻繁にダイビング雑誌に掲載されています。一度見たら忘れられないような特徴があり、ガイドさんがその場で名前を教えてくれて、ログ付けの時にも図鑑の写真を見ただけで「あ、これこれ!」と、すぐにわかる。何の説明も必要ありません。
困ったのは、例えば、こんな写真を撮った時。
「キンギョハナダイを撮ったんですけど、一緒に写ってるサカナって何ですか〜?」
きっと、こういう質問一番困る…と思っているガイドさんたち、少なくないと思うんです。
心の中で、
「こんな地味なサカナ、なんでもいいじゃん…」
と思いながら、
「じゃあ、一緒に図鑑で調べてみましょう!」
と、図鑑を開いてみても、似ているのがいっぱいあって、よくわからない。
「きっと、これか、これか、これの、どれかでしょうね!!」
なんて、言ってみたりして。
こんなお客さん、そんなに多くないかも知れませんが、やっかいなことに、このよく似たサカナたち、やたらと数が多いのです。特にコンデジでパチパチ撮っていると、こっそり入りこんで写ってしまう。
「これも、さっきのと同じですか〜?」
「うーん、なんだか違うみたいだけど、さっきの中のどれかだよね〜」
全く、困っちゃいますね。
一昔前のコンデジなら、こんなサカナたち、写真撮ってもピントなんか合わなくて、
「これじゃ、わかんないよね」
と諦めがついたのですが、今のコンデジだと撮れてしまうから、かえって厄介?
いったんわかってしまえば、ぱっと見ただけでわかるようになるサカナも多いのですが、何度見直しても?マークが飛ぶサカナが多いのも確か。
さらに、こんなのわかるようになったところで、何かの役に立つのか??と思えばなおさら…。
しかし図鑑を作るとなると、この難関を超えていかなくてはなりません。
これとこれは似てるけど、ここが違う。これとこれは違って見えるけど同じ種類。これとこれは…
1つ1つ見て行くと、似ているのがどんどん増えていって、頭がぐちゃぐちゃになってきます。覚えきれないので、その辺にある裏紙に書き込んでいったら、こんな風になりました。
この苦労、いつかどこかで報われるのかしら?
日本のダイバー人口って何人いるのか知らないけど、ここんとこ一生懸命読んでくれる人って、ほんの数人なんだろうなあ。
でも、頑張ろうっと♪
スマホでマクロ
レグルスの店内でちょっと記念撮影。ぱちっ。
あ、白いわんこ、可愛い。ぱちっ。
赤いハイビスカス、南国っぽいね。ぱちっ。
こんな時、取りだすカメラは、ほぼ100%コンデジではなくスマホになりました。
たまに一眼レフを取りだす方もいらっしゃいますが、短い時間でちょちょっと撮るならスマホが便利。
実は私もつい最近、訳あってガラケーからスマホに乗り換えました。
ガラケー時代、最初はその写真の画質に驚き、なんだ、これで良いじゃん!と思っていました。
しかしTG-3を買って、やっぱりガラケーの写真はたいしたことないなと思い、ちょっと重いなあと思いつつも持ち歩くようになりました。
TG-3はすごいです。でも、ダイビングをする予定のない観光旅行に持って行くのは、一眼レフより軽いとはいえ、ハンドバックの中では重いです。
周りを見渡せば、記念撮影に使っているのはスマホか一眼レフ。コンデジを持ち歩いている人は、だんだん珍しい存在になっているではないですか。
みんな、そんなんで良いのか?
ほんとにスマホの写真で満足できるのか?
スナップ写真くらいなら撮れるだろうけど、例えば旅先で見つけた花とか、きれいに撮れるのか?
あ、試しに撮ってみよう。。。
最初からスマホはスナップ写真とか風景くらいしか撮れないだろうと思い込んでいて、そもそもどれくらい接写できるのか知りませんでした。
ものは試し。朝の散歩がてら、目に付いた花を片っぱしから。梅雨入り目前に一斉に咲き始めるアガパンサス。梅雨空に似合う、紫陽花のような淡い紫色の花。
どういうわけか、八丈島の周回道路の路肩にずらりと植えられています。島の気候に合っているのか、放っておいても株が増えて、年々花の数が増えていきます。
意外と…寄れますね。5cmくらいまで近寄ってもピントが合うようです。花びらや雌しべの質感もまぁまぁ。
定番のハイビスカスは、TG-3だと赤や黄色がぶっ飛びがちなのですが、スマホの方が上手くホワイトバランスを調整してくれているみたい。
TG-3の顕微鏡モードには負けますが、背景がほどよくボケて悪くない気がします。
でも、小さい花だとピント合わせが無理なんじゃないかな。と、海岸に咲くハマボッスに挑戦。一個一個の花がとても小さいんです。
しかも白い花なので、ピントが合いにくいだろうと思っていたのですが、簡単に撮れました。
念のため言っておくと、画像は何もいじっていません。
ただいつも通りスマホのカメラを起動して、モードはいつも通り全部オートのままでシャッターを切り、パソコンに取り込んで解像度を小さくしただけです。色調整とかトリミングとか、なーんにもしていません。
あぁ、ホントにスマホで良いじゃん。。。
実は先日、スマホのレンズに付けるワイドレンズも買いました。たった100円。
来月は、ワイド写真に挑戦です♪
バカンスは久米島で
八丈島に来たことのないダイバーに「八丈島って、どんなところなんですか?」と聞かれた時の一般的な答えが「沖縄と伊豆を少しずつ混ぜたような感じです」。
そして潜り終えた時の感想が「ほんとですね、沖縄で見られるサカナもいるし、伊豆で見られるサカナもいました!」。
それを聞いて、間違ってなかったんだな…と思って15年。偉そうなことを言っておきながら、実は私、沖縄で潜ったこと、ほとんど無いのです。
初めて沖縄に行ったのは、まだ経験本数が20本くらいだった頃。友達に誘われてマンタを見に行ったのです。マンタしか覚えていません。
2回目は数年前に行った西表の矢野さんのところ。連日内湾のポイントを攻め続け、見た生き物の中で一番大きかったのはコブシメか?? もちろん、ものすごく楽しかったのですが、それで「沖縄の海、行ったことあるから知ってる〜♪」とは言いにくい。
普段から引き合いに出している以上、一度は大多数のダイバーが思い浮かべる「これぞ沖縄!」を見に行ってみないと。
ってことで、行ってきました。豪海倶楽部でお世話になっているエスティバン。池袋のマリンダイビングフェアーが終わった翌朝の飛行機でひとっ飛び。いいなあ、沖縄。飛行機安いし、物価も安い。同じ離島で、どうしてこうも違うのか。
それはさておき、肝心の海です。
エスティバンでは、ちょうどオーナーの川本さんがお留守でした。ここだけの話ですが、それを知った時には心の中で「ラッキ〜♪」。だって川本さんがいたら緊張しちゃうもん。「15年も八丈島で現地ガイドして、この程度か?」なんて思われたらどうしよう!?とか。
そして行ってみてビックリ。どうしてエスティバンのスタッフはたくさんいるのに、揃いも揃ってイケメン&可愛いのか!? 噂には聞いていたけど、レベルが高すぎるだろ…。いやあ、これだけでも楽しいなあ。
ごめんなさい。全然海の話になってないですね。今度こそ、海。
ちょうど久米島に到着した日も帰る日も一緒の女性の方が、とってもダイビングが上手な方で、しかもご自身は一応カメラは持ってるのにそれほど写真撮影には興味がないとのこと。
「だったらモデルになってくれませんか!?」と、厚かましくお願いして、ちょっとでもチャンスがあれば即パチパチ!
いや〜、おかげで楽しかった〜。いつも宝探しばかりしていたから、こんなアクティブなダイビングするの初めてだ〜。
イソマグロと泳ぐ彼女。
ギンガメを追う彼女。
安全停止中の鯉のぼり。
もちろん、ガイドさんもモデルになって頂きます。
海が良いから、どこにカメラを向けても絵になりますね。モデルさん、どうもありがとうございました。
そう言えば「八丈島の海は沖縄と伊豆を少しずつ混ぜたような感じ」が本当かどうかって話はどうなったんだろう?
その話は、始めると長くなりそうなんで、そのうちブログで紹介しま〜す。
夜遊び
ダイビングの話じゃなくて、食べる方の話。
何種類くらい、イカ、知ってます? 普段スーパーで見かけるイカ、タコと比べると種類が多いですよね。
私がよく行くスーパーで通年見かけるのは、紋甲イカ。もちろん冷凍もの。フライにすると美味しいです。北海道からスルメイカもやってきます。するめもいいけどイカそうめん大好き。今の時期はホタルイカ。茹でたのを酢味噌に付けて食べても美味しいけど、できたら生で頂きたい。八丈島ならではのアオリイカ、高級品です。久米島では居酒屋で巨大なソデイカを捌いているのを見かけましたが、八丈島では見たことないなぁ。イカってどれもこれも美味しい!!
そんな美味しいイカが最近釣れているらしいよ! というウワサが同業者の間を駆け巡りました。
黒潮が離れて八丈島周辺の水温が下ると、島の人達にヤリケンと呼ばれるイカが釣れるようになるのです。ヤリケンとは、ヤリイカのこと。20〜30センチ程度の大きさで、スーパーでは1ハイ約1,000円で売っています。
なぜか元々同業者には釣り好きが多く、そこへにわか釣り好きも集まって、夜中に堤防に集合するようになってしまいました。
かく言う私も、レグルスに置きっぱなしになっていた釣り竿を引っ張り出し、普段お世話になっている釣り宿のお父さんに仕掛けを作ってもらい、冷凍庫の中のサカナをエサに、いそいそと出かけました。
しかし…釣れているという噂は本当なのか? ちょっと潜って見に行ってみれば〜?
待てど暮らせどイカはかからず、ただ同業者との夜のおしゃべりタイム。
マジメに釣っているのは、ほんの小1時間くらいか?
2時間も経つと、そろそろ帰ろっか〜?
1ハイも釣れないのは、きっとその日にヤリイカがいなかったから。そう言い訳していたら、別の場所で釣っていた知り合いが「大漁♪」の写真をFBにアップしていて、一同ガーン…。
幸か不幸か、ヤリイカが釣れるのは黒潮が離れている間だけで、予報では割とすぐに戻ってきてくれるはず。水温が高くなれば釣れなくなります。あと少しのチャンスで、1ハイでも釣れる日は来るのでしょうか?
仕掛けに3,000円くらい費やしたので、3ハイは釣らないと元が取れない計算。本当ならここに釣れたヤリイカの写真を載せるはずだったのになあ。釣れたら報告しますね〜。
せかされた産卵ショウ(床)の準備
今年は年が明けてから黒潮が八丈島にぶち当たり、例年よりも高い水温、20℃をキープしています。水温が高いと成長が早まるのでしょうか?
3月に入ってから、もうそこそこのサイズのアオリイカが現れ始めました。いつもなら3月中旬〜下旬に事業者が集まって設置している産卵床、今年は慌ててスケジュールを早め、3月9日に実施しました。
作業は使用する木の伐採から始まります。この2〜3年はレグルスの敷地内で勝手に成長していたサカキを使っていました。これをトラックに積み込んで八重根のエントリー口付近に運び、そこで何本かの枝を組み合わせて産卵床を作ります。
根本付近には、組み上げた木の束を海底に結び付けるためのロープを取り付けておきます。
できあがった産卵床を堤防の先端に運び、海へどぼん。
待ち構えていたダイバーがそれを引きずりこみます。最初は浮力があって、なかなか沈んでくれません。
その様子をのんびり眺めるアオウミガメ。
沈めた産卵床を、設置場所へ移動。この作業中、エアの消費が普段の倍! 皆さん、息切れ状態です。
設置完了。サカキの木は、海底に沈んだ状態でも葉っぱが青々としたままで、落ちることがありません。アオリイカは、この葉っぱの間を潜りこむようにして卵を奥の方へ産み付けます。
今年は14名の事業者が集まりました。
この後、みんなでランチして、盛大な産卵ショーに期待を高めていたのでした。
さて、今年最初の産卵を目にするのは、誰でしょうか?
アオリイカがいっぱい集まってくれますように。
ブダイの旅
今月の「八ック謎ナゾ生命体」は、代打、、背番号44、、、、加藤がお送りいたします。
知っている方はいると思いますが、知らない方は知らない。そう私、また凝りもせず図鑑を出版いたします。今回のお題目は「ベラ・ブタイ」に絞った限定図鑑となります。なのでハナダイが載ってないだの、ハゼが載っていないなど言わないでください。
その代わりベラは、分類上混乱している3種を除き、あとは日本産のものすべて載せる予定です。ブダイは日本産全種で、しかも不明だった雌や幼魚も大分載せる予定にしています。
そのブダイなんですが、八丈島で見られる種類は限られていて、というよりも、沖縄へ行かないと写真が揃わないのです。写真借りちゃえば簡単なんですが、ブダイ撮っている方ってあまりいないんですよね。ましてやよくわからない雌の写真を撮っている方は皆無です。
そこで行動を起こしました。沖縄本島と石垣島の一人旅。。
ANAのマイルを使いまくり、一人旅なんてしない、いやしたくない、いやできない私が、ブダイのために一大決心です。
計画では石垣島から西表島に行って、その帰りに屋久島に寄って帰ろうと思ったんですが、よかったぁ〜、2島だけにして。私にとって、1人旅は8日間が限界でした。やっぱり、八丈島でのんびりしているのがよいみたいです。
写真はシロオビブタイの雄です。
山渓の日本の海水魚に載っていますが、撮影地はインドネシアで雄輔さんが撮った写真。それとハンディ図鑑に、こちらも雄輔さんが伊江島で撮った写真が載っています。
でもそれ以外では見たことのないような。。解説文にも分布域でも少ないと書いてあるし、ネットで検索してもそんなに出てこないし・・・。
沖縄行っても難航しそうなブダイだなぁと思っていたのですが、石垣島のファーストダイブで、「なんだ普通種じゃん!」って思ったほどいました。雌も解明されてないけど、たくさんいるのですぐに雌も解明し、今回一番拍子抜けをしたブダイでした。
タイワンブダイのギンギンの婚姻色となった雄です。
真っ黒で体側に白い斑点があり、尾びれをくいって上げて滑るように中層を泳いでます。最初何のブダイなのか分かりませんでしたが、すぐにタイワンブダイの雄の婚姻色であることが判明しました。
こちらも図鑑には載っているものの地味、ネットにもかろうじて何点か出てくるものの地味、陸に上げられて死んだ奴ばかりだし。。
こんに婚姻色になるなんて。やっぱり現地で観察しないとダメですねぇと痛感したブダイです。もしかして沖縄一人旅で、一番気に入ったブダイかも知れません。
沖縄本島で10ダイブ、石垣島に移動して12ダイブで、もちろんベラも撮りましたが、主にブダイたちの撮影に没頭していました。
ブダイの撮影はとにかく泳ぎます。10m先のブダイを見つけると、水底近くを泳いで隠れなら回り込んで近づきます。ブダイが私に気が付いたときは、頭を押さえられ、仕方なく私の目の前を通らなければならない状態にするのです。
なので「見つける、ダッシュで隠れながら回り込み撮影」というダイビングを繰り返すわけです。
どれだけ泳いだでしょうか。気が付くと足の指の親指を以外、すべての関節部分に水ぶくれが出来てしまっていて、石垣島の後半戦頃には痛くて歩くのが辛かった。でも、泳ぐとその痛みも忘れるんですよね。なんか不思議。。
そして最終日、シジュウカラの撮影に挑んだとき、すべての豆が潰れたのでした。
シジュウカラ、サーフゾーンの中を勇ましく泳ぐ素敵なブダイです。指は痛かったけど、ロールする波を見上げながらシジュウカラとの楽しいひと時を過ごしたのでした。
沖縄本島と石垣島の一人旅は、ちょっと寂しかったけど、撮影は9割の成果があり、ほぼ目的を達することが出来ました。
でもどうしても満足できる写真が撮れなかったのがイロブダイです。
沖縄本島では、ダッシュの回り込みで近づくと、すぐに根の下に隠れてしまうので勝負できず。石垣島では何とか近づいて撮るも、やっぱりすぐに根の下に隠れてしまうので、ほとんど証拠写真程度で終わったのでした。他のブダイは高速で泳ぎ回るだけなんですが、イロブダイって隠れるタイプだったんですね。
そしてレグルスの今年の海外ツアーはパラオです。参加ゲストのキャンセルが相次ぎ、二人のガイドはいらないということとなり、だったら私、自腹で行ってパラオのブダイを撮ろう!ってことになりました。
パラオ、蓋を開けたらびっくりポンのブタイの宝庫でした。
イロブダイなんて普通種。やっぱりたくさんいると警戒心が薄れるのか寄りやすくなるんですね。ベストショット、頂きました。
パラオでは他にもいろいろ撮れました。これで今回の目的をほぼ達成し、鼻歌交じりの余裕のダイビングをしていると、目の前に見知らぬブダイが現れました。
「なんだ、キミ外国のお方ね」
普通だったらそのまま見過ごすんですが、ブダイばかり撮っていると、癖で撮っておこうと大脳にインプットされているようで。雄を撮ったら、近くに雌がいないかなぁ〜と、やっぱり大脳にインプットされているようで。雌らしきブダイも撮って終了です。
もちろん外国のお方なので、今回の図鑑には出すことは出来ません。
ところがこの外国のお方、日本でも撮影されてました。場所は西表島です。西表島でブダイの撮影しているとなれば、あのお方しかいません。さっそく聞いてみると即答で撮っているよだって。。やっぱり凄いお方ですわ。
ということで、この種類も載せられることになりました。
何気なく撮った外国のお方の写真。私の大脳と凄いお方に感謝です。
3度目のパラオ
「パラオ、ダイビング」で画像検索すると、サメ、マンタ、ナポレオン、何かのサカナの大群、地形、そしてダイバーの写真が大量に並びます。いくら「もっと表示する」ボタンを押しても、他には何もいないのか?と思うほど、そればかり。
初めてパラオへ行った時、そんな予備知識のなかった私は、自分に向かってきたサメに驚いて思わず根の陰に隠れました。そのサメの後ろからダイバーの大群が押し寄せてきたのには、さらに驚きました。
マンタが出るポイントでは他の人と別行動でイトヒキベラやフラッシャーを追いかけ、ホールやトンネルの中は苦手ですぐに出てきてしまっていました。
マクロレンズしか持たず、狭くて暗い場所が苦手な私にとって、パラオと言えば、ハナダイ、ハゼ、キンチャクダイ。
ハナダイはいつかカマジを見たい…と願っているのですが、まだ名前の由来となったカマジさんとしか会ったことがありません。外見は地味ですが、穏やかで楽しいステキな方です。パラオではなく、なぜか青ヶ島でお目にかかりました。でも、次はハナダイの方に会いたい。
そしてハゼ。こちらは今回初めて見せて頂いたのが2種。こんなハゼがパラオで見られるとは。どちらも白い砂泥がふかふかのポイント。
1つ目は、ナカモトイロワケハゼの近似種。
私はナカモトイロワケハゼも見たことがなくて、いつか沖縄へ見に行かなくっちゃ!と思っていたので、嬉しいサプライズ。
別種とは言え、沖縄へ行く理由が1つ減ってしまったかも。
2つ目は、ホムラハゼの近似種。
このタイプのハゼも全く見たことがなくて、いつか見たいと思っていたハゼでした。
でも、こちらはホムラハゼと比べると、かなり地味ですね。肉眼だと真っ白で何だかよくわかりませんでした。
パラオに、こんなドロドロの場所があったとは。水深はそれほど深くないので、もっと時間をかけて探し回ったら、他にも何か出そうな雰囲気満載。パラオらしくない雰囲気がワクワクします。
キンチャクダイも、念願叶って初めてコリンズ、アヤメヤッコを見ることができました。
何個体も見ることができて、今まで見られなかったのが不思議なくらい。しかもゆっくり写真を撮らせてくれる、とっても良い子でした。
最後はコチラ、名前を聞けば、八丈島でも見られるサカナと同じ。ですが、全然違うんです、パラオ・バージョン。
なかなか、これと同じ写真を載せている図鑑が見つからなかったので謎のキンチャクダイだ!と思っていたのですが、デベリウス&クーター&田中先生共著の図鑑で見つけました。その名も、ルリヤッコ。所変われば色変わるんですね。
何度行っても新しい出会いのあるパラオ。
次回はいつ行けるのかなあ。
次はベラとブダイ
自身はエビカニだの、ウミウシだの、海水魚だのを著し、ヤドカリやヒラムシの出版にも協力してきましたが、今度は「ベラとブダイ」に取りかかっています。
誠文堂新光社のネイチャーウォッチングガイドブックのシリーズで出して頂いている、加藤さんの図鑑。もうずいぶんとたくさん出して頂いたので、そろそろ図鑑出版の仕事はこれが最後でしょうか。
それにしても、初めて誠文堂新光社から仕事を頂いた7年前と比べると、ずいぶんと作業効率が上がりました。
膨大な写真のデーター、キャプション、説明文、その他の原稿をどうやって渡すか、そして返ってくる校正、色校正の原稿をどうやって短時間で戻すのか、たった7年前のことなのに、当時は「クラウド」という言葉も聞いたことがなく、まとまったデーターをポータブルHDDに入れて宅配便で送り、その後の追加・変更はメールやファイル転送サービスで送っていました。
校正用の原稿も、郵パックで送ってもらい、訂正個所は全て電話で連絡。それこそ、お互い徹夜の作業。相手が出版社の方1人ならまだしも、連絡を取り合う相手が、編集、協力者、デザイナー、と増えてくると大変でした。
それが、今ではFaceBookとクラウドサービスを活用して、お互いのスケジュールに配慮することなく、空いた時間にどんどん作業を進めることができます。今進めているのは、加藤さんが自分で写真を整理し、種類ごとにまとめ、その種のイラストを描き、説明文を書いているところ。出来上がったものから、私がチェックして、文字の間違いや、表現がわかりにくいところを訂正していきます。
加藤さんと私は、すぐ手の届くところに座っているのですが、それでも作業はFaceBookとクラウド経由。FaceBookに載っているものを見て、訂正個所がある場合には、その旨をコメントし、クラウドに入っているデーターを編集して上書き保存しておきます。
以前は、このデーターの全てをプリントアウトしてもらい、訂正個所を赤で記入して返していたのですから、ものすごい時間と紙の節約。
さらに、このクラウドに入っているフォルダーは出版社の方にも共有して頂いているので、最終的にはそこからダウンロードしてもらうことができるのです。以前のように、今日発送しますから、そちらには明後日届きます、なんていうことはありません。
こんなに効率よくスピーディーに仕事が進められるようになったのに、なぜか締め切りに追われる状態には変わりがありません。
予定では今年の初夏の頃??
形が見えてきたら、またご紹介させてくださいね。
その後のクジラ
昨年末から話題になっている八丈島周辺のザトウクジラ。12月にはNHKの取材班が来ていたのですが、その時一緒に鯨類学が専門の先生も一緒にいらっしゃっていたのだそうです。
その方が八丈町役場の大会議室で講演会をしてくださると言うので、行ってきました。
大会議室と言っても、入れるのは60名程度。いつもはその人数さえ集まることが少ないそうですが、この日はぎゅうぎゅう詰めの満員御礼。町長を始めとした役場関係の方、学校関係、そしてダイビング事業者が中心に、大勢集まっていました。そしてその様子をNHKも取材をしていました。
この講演会の模様は翌朝の「おはよう日本」で放送されたそうです。私は見ていないのですが、放映時間は短くて、約1時間半の講演内容を伝えるものではなかったようです。
講師の加藤先生のお話は、ご自身の経歴などの紹介から始まり、クジラの祖先や進化の過程、現在の分類についての話しに続き、1時間くらい経ったところでようやくザトウクジラの話しになりました。
若干前置きが長いように思えましたが、要はザトウクジラというのは、他のクジラとちょっと違う身体の特徴、生態があるんだよ〜ということをお話になりたかったようです。
私にとって最も興味深かった点は、ザトウクジラは、夏は北極や南極に近い高緯度帯、冬は赤道に近い低緯度帯を回遊しているのだけれど、どんなに赤道付近に近づこうとも、それを越えることはない。
つまり、北半球と南半球のクジラが行きかうことはないということ。
そして、かなり几帳面に同じ場所を回遊しているということ。今まで沖縄で越冬していたクジラが、ちょっと来年は小笠原に行ってみようかなあなんて気まぐれを起こすことはないのだそうです。
ですから、何かよほどの理由がない限り、初めての場所で越冬するというのは考えられない。八丈島で越冬するクジラが出現したということは、学者さんとしては「びっくりぽん!」(本当にそうおっしゃいました)。
さて、ここでようやく「なぜ?八丈に」というお話に入ります。
理由はきっと簡単なものではなく、複数の要因が考えられるのだろうと思うのですが、先生が一番大きな理由として考えているのはザトウクジラの増加でした。
私たちが想像するより、はるかに急激に増加しているのだそうです。
このペースが続くと、単に喜んでいるわけにもいかず、各地での座礁、漁業や海運業への影響など、仕事や生活に支障をきたす人も現れるはず。
また、ホエールウォッチングをビジネスで考える人が増えることを予想するのであれば、自治体や事業者に任せているルール作りを、国が取り組まなければならないかもと。
今、八丈島で越冬しているクジラたちは、八丈島周辺だけではなく青ヶ島辺りにまで足を伸ばして、広い範囲の中で生活している模様。小笠原で越冬していたクジラたちの一部が、南側へ逃げ出すことはできない(赤道は越えない)ので、北側の八丈島へ越冬場所を移したのかも知れないとのことでした。
そして、来冬も八丈島にクジラがやってくる可能性は、とても高いのだそうです。
たくさんの人達の思惑をよそに、黒潮の中で遊ぶザトウクジラたち。まだしばらく目が離せそうにありません。
いまどきの水族館
先月お伝えした「八丈島みんなの写真展」、そのオープニングパーティーが1月23日に無事終わりました。
その上京ついでに、よく遊びに行くのが水族館。池袋サンシャインに行くことが多いのですが、今回は久しぶりに品川エプソンに行ってみました。
あとで調べてわかったのですが、ここはそもそも水族館と呼べるような場所ではありませんでした。
名前も水族館ではなく、アクアパーク。「音・光・映像、生きものたちが融合するエンタメ施設」ですって。
確か、昔はもっと普通の水族館だったような。今では、まず入り口を入って最初に現れるのが、生き物ではなく、ポート・オブ・パイレーツとドルフィンパーティーと呼ばれるアトラクション。
昔のように、お勉強する雰囲気は一切なし。水槽に入っているのは、きれいで華やいだ雰囲気のサカナたちばかり。それが何と言う名前なのか、どんな環境に生息しているのか、などの説明はありません。
途中にはバーが現れ、サカナたちが泳ぐガラスのテーブルでお酒を楽しむことができるようになっていました。気になったのが、3種類のジョーフィッシュが入ったテーブル。ゴールドスペックルドジョーフィッシュ以外の2種類は知らないジョーフィッシュだったのですが、何でしょう?
クラゲ・ルームは怪しい雰囲気が満載です。
親子連れよりも、友達と一緒に来ているグループやカップルの方が多かったかも。
個人的には、目の前にいるサカナの名前も何もわからないまま眺めているのは、なんだか欲求不満が溜まりそうなのですが、訪れている大勢の人達は全く気に留めていない様子。
魚たちが可愛かったり、動きが面白かったり、迫力のある大きさであれば、それで十分楽しいのでしょう。
ダイビングの楽しみ方も、この先どんどん変わっていくのでしょうか?
将来、ディズニーランドやUSJの中でダイビングができるようになっているかも知れませんね。
年末ジャンボの当たりはクジラ!
それは12月2日、私がナズマドでジャパピグ、つまり米粒くらいの大きさしかない日本版ピグミーシーホースをTG-3の顕微鏡モードで必死に撮影している時でした。
その瞬間から、八丈島のクジラ祭りが始まったのです。
写真がぶれないように、必死で壁に張り付いて、息を止めてジャパピグを目で追っていた時、背後からものすごい排気音と殺気を感じ、振り向かずにはいられませんでした。
見ると、目玉が飛び出そうになった、ものすごい形相の梅ちゃんが私にすぐ目の前にいて、スレートに何かを書こうとジタバタしているではありませんか。
何か事故でもあったのかと、こっちまでパニックになりそうになりましたが、ぐっとこらえて彼がスレートに何かを書くのを待っていると、2回くらい書き直ししたあと、「クジラ」の3文字。それこそ、こいつ口から泡を吹いてそのまま気を失うのではないか?と心配しながら、OKサインを出して見せると、次に「通った」と書いて見せ、ダッシュでエントリー口へと帰っていったのです。
さて、どうしたものか?
梅ちゃん、兄弟子の店で働いているスタッフですが、沖でクジラに遭遇したのはわかったけど、今から自分がその方向へ出向いたところで、会えるものなのか? 通ったってことは、行っちゃったってことで、同じ場所には戻ってこないでしょ? 特に今は「行っちゃったばっかり」なんだから。
でも、なんだかお尻のあたりがムズムズしてきたので、後悔しないよう、とりあえず沖へ出てみました。20分くらい沖でふらふらしてみたけど、やっぱりクジラなんていませんでした。
しかし、この日から島内同業者の間にクジラ・フィーバーが巻き起こり、ナズマドが凪の日にはゲストがいなくとも3本クジラ待ちをするツワモノまで現れました。
私は…と言うと、その後用事があってしばらく上京。みんなとのお祭り騒ぎには参加できず。
しかも、八丈島から戻ってきたその日に、ご近所ショップのメグちゃんが、ナズマドでバッチリなザトウ写真をゲット!
さらにその写真がNHKのニュース9で紹介されたのです。
ナズマドにはさらに大勢のダイバーが集まるようになりました。
正直言って、本来なら「今日はみんな何してるんだろ??」と年賀状書きや事務仕事に邁進する冬の閑散期、そんな12月に大勢のダイバーと一緒になって海で盛り上がっている、その雰囲気だけで楽しい。
昨日、12月20日、やっと私もお祭り会場に出かけることができました。みんな、ちょっとでも当たりを外さないよう、エントリー口から見張ります。沖の方でブローが上がるのが見えたらすぐにエントリーできるよう、器材をセッティングして待っているのです。
そして水中で待つ場所は必ず三角根。それほど大きくない根の頂上に、ダイバーが鈴なり。この広い海の中で、そんなにうまくこの付近を通過してもらえるものなのかしら?
通過してくれたところで、ほんの一瞬の出来事だろうから気がつかなかったら終わりだし。
みんなが必死で遠くを見つめている様子が面白くて、その様子を撮って遊んでいました。
その時です。
みんなの背後にある、何もないはずの海の向こうから、黒い大きな丸いものがどんどん大きくなってくるのが見えたのです。
まさかの「キター!!」でした。まさかの、待っているダイバーよりも岸側通過。沖を見つめるダイバーたちは誰も気づかず、だったのでした。
向かってきたクジラは最接近したところで頭上を通過。
そのあと私のそばに下りてきました。
一緒に泳いでいる時間が、とても長く感じられました。実際、この間に撮った写真が12枚。見ることができてもせいぜい1〜2秒だろうと思っていたのに。
もちろん最後には引き離されてしまいました。
もう追いつけない…と思ったところで、後ろを振り返ると、必死で泳いでくるダイバーの群れ。こんなに追いかけてきちゃって、元の場所にちゃんと戻れるのか!?と少し心配になりましたが、みんなで元の三角根へ。
興奮冷めやらず、撮った写真を見直す人、すぐに次のチャンスを狙って見張りの体制に入る人、人それぞれ。もちろんエキジットした後も大騒ぎ。
この感動をもう1度。このお祭りは年をまたいで、しばらく続きそうです。
新年は「みんなの写真展」
皆さん、明けましておめでとうございます。
昨年は黒潮が蛇行して、水温が乱高下。まるで日本の株価のような1年でした。そのせいか、例年見られるサカナやウミウシの出る時期がずれたり、全く見られなかったものもあれば、ビックリするようなものが登場したり。
そんな1年を自分が撮った写真を見て振り返ってみても、好みが偏っているせいかイマイチ例年との違いが感じられないのですが、ゲストに撮って頂いた写真を見直してみると、なんとなく傾向が表れているような気がします。
そんなゲストの撮った写真を集めた写真展を、今年の1月5日から、溝の口にある居酒屋の店内で開催することにしました。
きっかけは昨年の2月。
改訂版の「海水魚1000」の出版記念パーティーを開催させてもらった時のことでした。店のオーナーもダイバーで、店内にはステキな水中写真がたくさん飾られていました。条件が合えば、アマチュアのフォト派ダイバーだって、ここで個展が開催できちゃうのです。
ここに1枚でも八丈島で撮影された写真が飾られていたら良いのに。
そう思って、昨年の1年間、フォト派のゲストの方にご協力頂いて素敵な写真をいっぱい撮って頂いたのです。いわば、1年間の活動報告会のような写真展。
是非皆さん、溝の口のFU-KUに飲みにおいでください。
美味しい沖縄創作料理を食べながら、今年のダイビング計画を立ててくださいね。もちろん八丈島を入れてください!
釣り師か?サカナか?
2つの火山の溶岩が流れ出て、つながって8の字形になった八丈島。島の周囲のほとんどが岸壁で、周回道路から徒歩で波打ち際まで下りられるところは限られています。
そのため、島の沿岸全てがダイビングポイントになり得ても、ビーチエントリーできるのはごく一部。
それと同じように、釣りをする人達も、磯釣りができる場所は限られてしまいます。その中で、足場の良いところや、サカナが集まる場所に、人が集中するのは当然のこと。
ドライブをしていて、最も釣り人が集まっているのを見かけるのは、八重根の堤防の先端。
本来なら立ち入り禁止の場所ですが、凪で天気が良ければ、それこそ黒山の人だかり。
普段、私たちも潜っている八重根。堤防の先端周辺は、堤防の基礎となるコンクリートブロックが整然と並び、その水底や沖合には白い砂地が延々と続いています。釣り人とトラブルになりたくないのはもちろんですが、あまりにも人工的な風景なので、あまり近寄ることがありません。
そんな場所に、島内のガイド11人が集まり2はいのボートに分乗して潜ってきました。年に一度の海中清掃。いつも冬の閑散期に実施するので、寒さに凍えながら作業しているのですが、今年は黒潮のおかげでホカホカ!
予報が外れて陸上も良い天気、ウェットスーツの濡れた身体でも船上で寒い思いをすることがありませんでした。
しかも、透明度抜群。ゴミ拾いの作業ダイビングなのに、なんだかみんな楽しそう。
ところで、この場所、以前から知り合いの釣り人に「今はシマアジがよく釣れてるけど、カンパチとかヒラマサも釣れてるよ」と聞いていました。
でも普段のダイビングでシマアジなんて見かけないんだけどな。」と思っていたのです。
ところが、ちょっといつものコースから外れているだけで、シマアジの大群ぐるぐる!
それを追ってヒラマサ、ツムブリもやってきます。同業者はハンマーも目撃! 水底では巨大なマダラエイがうろうろ。
ブリーフィングの時、いつも「八重根はマクロポイントです」って言っていたのに。大物+群れいっぱい。
どうやら、毎日釣り人たちがエサを捲き、そのエサにサカナたちが集まり、そのサカナを狙って大物がやってきているのだとか。
あれ? それって逆じゃないんだっけ?
サカナが集まっているところだから、釣り人が集まっているんだと思っていたのに。サカナが先か?
釣り人に迷惑かけない程度に、また行ってみたいな。
ガイドのつぶやき
- 三浦半島・葉山から
- 真鶴半島・湯河原から
- 伊豆半島・伊東から
- 伊豆半島・川奈から
- 伊豆半島・伊豆海洋公園から
- 伊豆半島・大瀬崎から
- 伊豆半島・平沢/静浦から
- 伊豆諸島・八丈島から
- 静岡・三保から
- 紀伊半島・尾鷲から
- 和歌山・串本/古座から
- 高知・沖の島から
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