ゆうすけの豪海倶楽部The Diving Junky Magazine

高い水温

いよいよ10月である。パラオが鎖国をしてから半年が経った。

この間に変ったことと言ったら、パラオ在住の日本人の数と、僕のお腹周りの肉の量くらいだろうか。前のは減って、後ろのは増えているという困った状況だ。

と、そんなことを書きたかった訳ではありません。

今年は台風が少ないため海が混ざっていないのか、水温が少し高い。よく調べてみると、今年はラニーニャが発生してるようだ。

ラニーニャが発生すると西太平洋における赤道付近の海水温は上がる傾向にある。

その昔、パラオのサンゴが壊滅的なダメージを受けた1998年の高水温現象の時も実はこのラニーニャ現象に起因している。

サンゴというサンゴがことごとく死滅し、そのサンゴに藻が生えて、魚層が藻食のハギばかりになったのは昨日のことのように覚えている。

あの時は本当にパラオ終わったと思ったくらいダメージが酷かった。

98年のダメージは5年以上も残り、20年以上経っている今でも完全復活をしていないエリアもある。単純に心配だなと思う。

先日、パラオの有名なダイブサイトの一つ、ニュードロップオフに潜ってきた。

そこで久しぶりに色が抜け白化しているセンジュイソギンチャクを見つけた。水温が高いなって感じていたので「やっぱり」と思ってしまった。

生き物たちのほうが人間なんかよりもよほど敏感に感じているはずだ。どうも海の中に元気がない気がする。嫌な予感だ。

こんな時はクラゲのようにフワフワユラユラ成り行きに任せて、なんて呑気なことを言ってる場合じゃない。かもしれないですね。

クラゲ

激動の陸上、変わらぬ水中

世の中は激動の時代に突入しようとしているのでしょうか。

日本は総理が変わることになり、アメリカやパラオも11月に大統領選が行われます。

コロナの影響も負荷となり、世界は大きく変わっていきそうな気配を見せています。我々を取り巻く観光業の世界も打撃を受けていることは周知の事実です。

しかし、そんな大きな変化の兆しが見える陸上とは反対に、パラオの水の中はあまり変わっていません。

先日久しぶりにブルーコーナーに潜ってきました。ダイバーがパラオに来られなくなって6カ月になりますが、ここは変わらず魚が多い。6カ月くらいじゃサンゴも大して変わりません。

ブラックフィンバラクータの群れが小さいのは夏が来たからで、これは毎年の季節的変動の範囲内で、ギンガメアジもオオメカマスもふつうに沢山いました。

ドロップオフのエッジにアカモンガラがやけに多いのは、タテスジハタの幼魚同様、今年が当たり年なんでしょう。ナポレオンがなぜかずっと付きまとい、ちょっと寂しそうに見えたのが印象的でしたが、全体的に変わらず安定したブルーコーナーでした。

今は変わっていない水中にいると何だかとてもホッとします。

そう、海の中なんて6カ月くらいじゃなにも変わらない。陸上は時間が早すぎる。ゆっくりと今は時が来るのを待てばいいんだよ。

と、岩陰で動かないサラサハタが、今この時の過ごし方を教えてくれているようでした。

サラサハタ

ちょっとくらい。

ブルーコーナーでは、午後3時以降になるとドロップオフの棚上にクロヒラアジの群れが上がってきます。

決まって午後からで、夕方だとその群れの数は更に増えます。

おそらく夜の摂餌に向けて浅いところへ上がって来ているのだと思うんですが、日中の明るいときにはドロップオフのすごーい下のほうで活動します。普通のダイビングでは行けませんがきっと「ちょっと暗い」のがお好きな奴らなのでしょう。

WEBには最大70cmにもなる記録もあるようですが、ブルーコーナーに現れるのはせいぜい40cmくらいのサイズ。体側に7~8本の黒い横縞が入るので誰が見てもすぐに見分けられます。

あまり警戒心が強くないのでダイバーの近くを平気で通り、大きさもそこそこで群れだから迫力もあって、一応アジだから結構カッコ良かったりします。

でも、このクロヒラアジが棚上に上がってくるときは午後から夕方。遅くなればなるほど群れは大きくなる。

カッコよくていいじゃないと思うのですが、このクロヒラくん達はあまりゆっくり泳いてくれません。だから撮っているとシャッタースピードが追いつかずブレる写真を連発します。

ISOを上げればいいんですが、天の邪鬼な僕は無理にそのまま「流し撮り」をしてみます。たまに上手いこと行きます。でもこれって狙ってはいるけど確証はない「当てずっぽう」撮影です。(笑)

撮れれば嬉しいのですが、まあそう上手くいくものでもなく。もうちょっとくらいゆっくり泳いでくれてもいいじゃないか。と思うんです。

ちょっとくらいいいじゃないか、とちょっと暗いブルーコーナーでレギュ越しにブツクサ言うのでありました。

クロヒラアジの群れ

ヘレンの住民

本来なら今頃はヘレンにいるはずだった。

毎年恒例になっている龍馬クルーズでのHELENリーフ遠征が、今年は6月に行われる予定だった。

気の合ったお客さんたちと気ままにクルーズに行く予定だったのだが、ぜーんぶコロナってやつが悪い。コロナが悪くても誰かが悪いわけでもないから怒ることもできず仕方ないから一人でブツブツ言っている。

その本当なら行っているはずだったヘレンは、パラオの南600kmにあるハトホベイ州に属する南北30kmほどの大きさの環礁。

環礁の中には小さな砂島があり、現在はレンジャーが数名常駐しているのみで住民は鳥だけ。

多くはアジサシのようだが、太平洋を移動しながら途中のここヘレンにて繁殖を行うようだ。

僕らが訪れるのはだいたい毎年5月から6月なのだが、その時期多くの雛鳥と会うことができる。この写真も左下の砂浜辺りにいるのが雛鳥たちだ。

今年もここで沢山の雛鳥たちが育っていることだろう。鳥は1年で親となり営巣を行う。

来年その姿をヘレンで見られることを願ってやまない。

ヘレンリーフ

リサーチダイブ

毎日潜り放題という話しは先月も書きました。

驚いたことに今月もどうやら潜り放題のようです。まあ、それは自体はどうすることもできないので良いのですが、折角潜り放題なのでちょっと真面目に勉強を始めることにしました。

新しいポイントを見つけたり、知っている産卵シーンのタイミング精度を上げるための勉強です。僕らはそれを「リサーチ」と呼んでいますが、まあ調査ダイブの事です。

これが意外と面白くて奥が深い。そもそも分からないことを調べる訳ですからハズレが多いのも事実。1日中リサーチして何も見れなかったとか、なにも居なかったとか、そんなのはザラです。

ですが、こうじゃないか?って仮説を立て予測をし、そしてそれがその通りになった時の達成感を一度味わってしまうと、このリサーチってやつはナカナカ止められない中毒のようなものになります。

一日中潜って、水面休息時間はスノーケリングで探して、昼飯食べてる時もボートの上からはスタッフ全員で水面を見つめ続けて探す。帰りのボートではスタッフ皆、クタクタになって泥のように寝て帰ってくる。そんなにしても何も会えない日もある。

しかし、今日は違った。会えた。居た。嬉しい日になった。

これがあるからダイビングはやめられない。

早く見せたいな、って思います。そういうネタを明日からもまた探してきます。お楽しみに。

マンタ

バラフエダイの卵拡散

さて、世の中はダイビングに行っちゃだめ、海に行っちゃだめ、と自粛ムードがだんだんと息苦しくなってくるころでしょうか。

でも、皆さん大切なことなので、ご自身を守るため、そして大切な人を守るために、今は自粛が必要な時です。頑張りましょう。頑張ってください。

日本の皆さんが大変な思いをされているときに、僕らができることと言えば、せめて海の写真でもアップして、パラオの今の情報をお届けすることくらいです。

ご自宅でお過ごしになられている時間の、少しでも気休めになってくれればと思っています。

と、そんなことを書きたかった訳ではありません。いつも通りいきますよ。

さて、何がさて、なのかサッパリわからない書き出しでスタートした今月ですが、日本ではウイルスが拡散している最中、パラオではバラフエダイが卵を拡散していました。

今月はバラフエダイの産卵です。パラオのバラフエダイの産卵は有名でご存知の方も多いのではないでしょうか。

普段は大きな群れを作らず、基本単体で行動するバラフエダイですが、毎月満月前になると巨大な群れを作り産卵をします。特に大きな群れを作るのがペリリューとシャークシティーの2ポイント。

ペリリューは産卵のタイミングが朝とても早いので、僕らがコローからアプローチしやすいのはシャークシティーの群れ。それもシャークの産卵は日が出てからの時間帯なので、明るくてよく観察できる。ダイバーにも人気の産卵イベントです。

って、なんだか雑誌の紹介文章みたいになってしまいましたが、実際に写真を追って見てみましょう。

中層に固まってる群れ

まず、朝エントリーすると、群れは中層に固まってタイミングを計っています。流れを待っているのでしょう。

沖へ広がる群れ

流れが動き始めると、徐々に群れの形が変わってきます。沖へ沖へと群れが広がります。

産卵開始

そして、産卵開始。最初は少数なのが、徐々に皆が産卵を始め、最後は大産卵になっていきます。

あちこちで辺りが真っ白に

大産卵が始まるとあちこちで花火を打ち上げたように辺りが真っ白になります。この写真も左上側はもう真っ白で水面が見えません。

バラフエダイの大産卵

毎月毎月、同じタイミングに決まったところで産卵ができる魚たちの体内時計の正確さにはただただ驚くばかりです。

ではまた!

大変なことである。

大変なことである。何が大変か?なんてここに書くまでもないだろう。

パラオはイレズミフエダイのシーズンだと言うのに、ダイバーが居ない。これは大変なチャンスである。

今年は、イレズミが集まるペリリューにはおそらくボートなんてほとんど来ないと思うので、僕らだけスタッフ皆で潜りに行って、好き放題写真や動画を撮る計画をしている。

ここ何年も、イレズミの時期は他のガイドとの間合いに気を使い、自分のお客さんにも見せないといけない(当たり前だけど)中で、なっかなか自分で撮影するなんてチャンスは巡ってこなかった。

しかし、今年は違う。

誰に気兼ねすることなく思う存分、ファインダー越しにイレズミを覗いていられるのかと思うと、もう、今からワクワクが止まらない。

確かに、いま世界では大変な事態になっている。しかし、今僕らに与えられていることは、目の前の海を一生懸命潜ることだけだと思っている。

登山家が山に登る理由が「そこに山があるから」と答えるなら、僕らダイバーは「そこに海があるから潜る」で良いのではないだろうか。

そこに潜れる場所が、海があるから、明日もまた潜るのであった。

イレズミフエダイの群れ

一心不乱

毎年春から初夏にかけて龍馬の遠征ルートが増える。

僕の好きなルートが多いので乗務も多くしている。必然、朝一発目の早朝ダイビングもよく潜る。

パラオのジャーマンチャネルは秋から初春にかけてがマンタが良いシーズンとなる。特に大潮周りの上げ潮で早朝の時間は人も少ないので狙い目となり、ポイントとして選ばれることも多い。

潮が動き、プランクトンが大量に流れ込んで来るとジャーマンチャネル海域の魚たちは活性し、どの魚も皆必死で餌を取るシーンが見られるようになる。

そんな中、マンタは大きいしどうしても目立ってしまうのですが、今日の注目は違います。

ふと水底近くへ目線を落とすと、マダラタルミがプランクトンを食べる姿が見られます。

普段は流れの中をただ浮いてるように泳いでいるだけの目立たない存在。まるで何かを達観したかのような静かな魚なのですが、この時ばかりは生きるための貪欲な顔を見せます。

バクバクと一心不乱に捕食をするマダラタルミの不細工な顔に妙に心を惹かれてしまう早朝の僕でした。

捕食をするマダラタルミ

パラオの春の風物詩

パラオの春の風物詩であるイレズミフエダイの大産卵が今年もやってくる。

毎年3月から5月の新月前に巨大な群れを作る。

コロールからでも、クルーズでもアプローチできるが、早朝の産卵を見に行くにはやはりクルーズがおススメです。

龍馬なら快適にイレズミ見に行けますよー。と宣伝をしてしまった今月でした。

イレズミフエダイの群れ

新年あけましておめでとうございます

新年あけましておめでとうございます。

2020年、この太陽に向かって泳いでいくマンタのように、明るいところへ向かって行きたいですね。

この一年がまた、皆さまにとって良い一年でありますように。

今年も安全で素晴らしいダイビングと、沢山の出会いがありますように。

マンタ

10月のパラオの言えばMND

10月に入った。

10月と言えば、毎年龍馬でMND、ミッドナイトダイブ(ブラックウォーターダイブ)のイベントを行う。

今年は10月20日から27日までの1週間。1週間ほとんど夜しか(一部日中も潜りますが)潜らない。

最近少しずつ世界でも広がりを見せてきている、この夜の浮遊系ダイビング。

面白いから、もっともっと、たくさんの人に楽しんでもらえるようになるといいなぁ。

ミッドナイトダイブ

編集後記を書く凄い人

DayDream 7のボートオペレーター

豪海倶楽部にはRYOさんという編集者がいる。編集後記を書いているその人がそう。

RYOさんはもう10年以上になるのかな? この豪海の編集をしてくれている。どんなことをしてくれるのかというと職名の通り、ズバリ、この豪海倶楽部の編集である。

僕ら執筆者がその時の気分というバラバラのフォーマットで好き勝手に書いて送ってくる原稿のフォントや書式を揃え、清書し、一緒に添付されている写真のリサイズをして掲載の準備をする。なんてのは序の口で、毎月末にはアクセス解析のレポートをくれ、「秋野さん、あなたのコーナーは今月何人のユーザーが見てきています。凄いですね。でも、隣のコーナーの○○さんには、これだけの人が見に来ています。もっと頑張れるのではないですか?」と文字になっていない数字のプレシャーを送ってくれる。(笑)

さらに凄いのは、毎月25日になると「原稿送ってください」というリマインドメールが届く。このメールには「送ってください」だけでなく、その後に「お願いします」と結ばれている。僕らがRYOさんに編集してもらっているのに、RYOさんからお願いされる。なぜか?それはおそらく、怒られたことはないが、僕を含む多くの執筆者が月末ギリギリで入稿しているのだろう。ギリギリで入稿された原稿を上記の要領で修正して掲載し、翌1日に何事もなかったかのように翌月号をリリースする。これって大変な作業なのだろうと簡単に想像できる。

それなら早く書けばいいのだが、RYOさんからの「原稿送れ」メールが来ないと闘志が湧かないというのも、困ったことに事実なのである。メールを見て「ああ、今月も月末かぁ」で1日、「なに書こっかなぁ」で2日、書き始めるけどうまく書けずに止めて1日、そのまま自信を無くして酒飲んで2日、であっという間に月末日である。で、慌てて書く。そんな毎月。

RYOさんはそんな僕らのペースに付き合い、合わせてくれる凄い人だ。これだけ面倒見の良い編集者は世界中探してもそうはいないでしょう。だから毎月休まず、できるだけ迷惑をかけずに原稿送りたいと思っています。(6か月も休んでて、毎月おもいっきり月末ギリギリに入稿するんだけど、懺悔の気持ちは一応ある)

RYOさんいつもありがとうございます。

と、RYOさんを持ち上げといて、海のことなんて一っつも書かないで今月は終わろうと思います。

今日のパラオは久しぶりの大雨でした。明日は晴れるそうです。パラオは暇です遊びに来てね。

それではまた来月。

夏でもマンタ

時が経つのは早いもので、すでに8月。

僕の原稿はなんと3月から止まってしまっていました。

なんてことだ。

隣の垣内のを見たら、なんとあいつは2月から書いてなかったことが発覚。

「あ、俺3月から書いてない!」「僕なんて2月から!」と、「何やってんだよ!」「何やってんですか!」と、見苦しい争いを一通り店のオフィスでした後、二人で並んでシコシコと原稿を書いている。

おそらく今月は垣内も掲載することでしょう。

心の弱い僕らはお互いを鼓舞し合わないと書けないので来月も「なんやってんだよ!」「なにやってんですか!」の〝鼓舞の儀式″を繰り返すことになると思うが、休載してご迷惑をおかけするよりも何倍もいいことなので、そうしようと思う。来月も覚悟しておけ垣内。

と、そんなことを書きたかったわけではありません。

2月に1月のことを書いて、今回はいきなり「夏真っ盛り」となってしまう僕の連載は、僕が5か月休載している間に地球が勝手に夏にしてしまったからで、僕のせいではありません。

しかしながら地球には地球の事情もあるようで、そんな事情は海の中にも起きています。

元来パラオは北半球、西太平洋にあり、この季節、直撃は少ないですが台風の影響を受けます。ですが、低気圧や台風が近くに来なければ、いわゆるイメージ通りの「いつものパラオ」の海が戻り、海の中も賑やかになります。

そんな夏真っ盛りのパラオでも、やはり人気なのはマンタ。

もう僕も相当見ていますが、あの大きさと優雅さは何度見ても「やっぱりスゴイなぁ」と飽きません。ステーションの岩でのクリーニングに集まるマンタも楽しいですが、やはり写真のような捕食のタイミングに出会えたらうれしいですね。

大潮前の日程がねらい目です。捕食が始まるとマンタたちは食事に夢中になり若干警戒心が緩みます。

このタイミングでそーっと友達顔をしながら寄っていくと、結構近くまで寄せてくれたりします。特にねらい目なのは夕方です。マンタたちの餌に対する執着が昼間のそれとは全然違うように思います。

繁殖のシーズンである11月に向けてこれからマンタたちにとってはいい季節になります。

お天気が良いことを祈りつつ、素敵な捕食マンタを見に行きましょう。

マンタ
イッセンタカサゴの群れ

1月のツノダシ

僕らのクルーズ船、龍馬号の2019年10月から2020年6月のスケジュールが発表になった。この季節に翌年のスケジュールをリリースするためには、前年の2月からスケジュールを作り始める。分かりやすく書くと、毎年2月になると2年先のスケジュールを作り始めるのだ。

ただスケジュールを作るだけなのだが、なかなかこれが手間のかかる仕事である。

龍馬はパラオの他のクルーズと違って、クルーズごとにテーマを設定している。あるクルーズはカンムリブダイの産卵を見に行くことをメインテーマとし、あるクルーズはペリリューのロウニンアジの大群を見に行くことを狙う。そういったクルーズごとの特色を出して好みのダイビングができるクルーズを選んでもらえるようになっている。これを年間60本以上あるクルーズすべてに設定をする。この作業が2月から始まるのである。

スケジュールに「これこれ見せます」と書くのは簡単だが、書くからには見せないとならない。その為に過去のデータを洗い直してカレンダーを作る。僕らはこれを“海のイベントカレンダー”と呼んでいる。

月ごとの横並びにカレンダーに、いつにどこでどの魚が何する、とハイライトで書き込んでいく。このカレンダーを元に1年間の予定が組まれていくのだが、言ってみたらこれはデイドリームの年間予定のキモ。当然ながら龍馬のクルーズスケジュールも、実はこの“海のイベントカレンダー”が出来上がるのを待つことから始まるのである。

しかしながら、このカレンダーがなかなか簡単には完成しない。

まず過去のデータをまとめた第一案を作り、それをガイドさんたちの前年のデータと照らし合わす。すると、ところどころにデータのズレが起きるのである。例えば「キツネブダイの産卵が12月のどこどこで行われるという元データに対して、昨年のスタッフの観察では2日ズレていた」といった具合である。2日ズレたらゲストにとっては大問題で、下手したらお見せすることが出来ずに帰国なんてことになってしまう可能性もある。

さあ、ここからが大変。なぜズレたのか?の検証が始まるのである。理由とデータをすり合わせながらこのカレンダーのブラッシュアップをしていくのだが、これが手間で面倒くさい作業である。しかし、これをやるからこそ毎年カレンダーの精度が上がっていくことを考えると文句も言えないのである。

そして出来てきた“海のイベントカレンダー”で狙う魚たちはかなり高い確立でその光景を僕らダイバーに見せてくれる。

写真のツノダシもその一つ。

12月から始まり、1月、2月までがシーズンだが一番群れが大きくなるのは1月。この集団は産卵前行動と考えられているが、その産卵のシーンを見た人は未だいない。僕らも毎年追いかけているのだが、もうしばらく解明には時間がかかりそうだ。

ツノダシたちの産卵生態の解明までの道のりはまだまだ遠いとしても、眼の前でツノダシたちが群れる光景は純粋に素晴らしく美しい。命がけで命を繋ぐためにそこに集まって行われるダンス。決死だがらこそ尚美しく見えるのだろうか。瞬きも忘れるように見ていると、生態だのカレンダーだの、そんな難しいことはどうでもよく思えてきてしまう1月の海であった。

ツノダシの群れ

新年のご挨拶

バラクーダ

大忙しである。

まあ大体年末年始なんてものは毎年大忙しなのだが、今年はさらにTVの取材なんてのも入っちゃって、もうどうにもこうにもならん。

「ああ忙しい、ああ忙しい」と目一杯忙しいアピールをしていたら、スタッフのサキさんが「あ〜、でも秋野さんは忙しいっていいながら、結構仕事は後回しにしていますよね〜(笑)」と正面からぶった切っていただけた正月から始まった。

と、そんなことを書きたかった訳ではありません。

今年もがんばりますので、皆様、本年もよろしくお願いいたします。

マンタフィーバー

マンタ

10月からクルーズ船「龍馬 I」の新しいシーズンが始まっている。

3年ぶりに今季はクルーズディレクターとして乗務することになった。一旦出港してしまうと通信環境が遮断されてしまうので船はまさに洋上の孤島状態である。

なので今月は原稿の締切に間に合わず遅れて掲載となりましてすみません。という言い訳をするのに150文字も使っている大バカモノ。

と、そんなことを書きたかった訳ではありません。

11月は毎年ジャーマンチャネルのマンタの景気が良くなる。なぜだかよく分からないが、11月はいいのである。遭遇率も個体数も他の月に比べると確率がグググッと上がる。うちのスタッフで最もマンタを勉強している祥子は「繁殖では?」と読んでいるそうだ。

エントリーするとほぼ100%の確率(と書くと出なかったときに怒られるから)に近い高確率で遭遇できている。

これも大体毎年のこと。季節外れの台風とか来て水面が荒れるとそのときはどうやら深いところに行ってしまうようなのだが、海況が戻ればまたいつものジャーマンチャネルに戻ってくれる。

この時期パラオはまだシーズンオフでダイバーも少なめで、海は空いていてマンタは沢山いて、もうやりたい放題(一定のルールはもちろん守ってのこと)で、とにかく11月はマンタのことを考えるなら最高の月なのだ。

マンタ

ヘレンリーフ 2018

ヘレンリーフ

今年もまた6月23日から1週間、パラオから南に550km南下するヘレンリーフへ行ってきた。

ヘレンは南北35km、幅15kmにもにもなる広大な環礁で、HELEN REEF(ヘレンリーフ)もしくはヘレン環礁が正式な名称となる。

以前、豪海にも書いたと思うが、この場所には滑走路が無く飛行機は降りられず、ヘリコプターでは遠すぎで航続距離が足らず、唯一の訪れる方法が船という場所である。僕もパラオでガイドを始めた頃から行ってみたい場所だったし、龍馬を就航した最大の理由でもあった。

なのでここは僕にとっても龍馬にとっても特別な場所なのである。年間で訪れるダイバーは30人もいない。たまにヨットが立ち寄る程度。とにかく人が来ない=「滅多に行けない場所」なのである。

毎年少しずつ、ルートだったり、スケジュールだったり、「なにか」手を加えながら変えていて、今年は南西諸島の“5島+1環礁”全ての場所に潜ることと、新たに手に入れた「海流図」を参考にそれぞれの場所を潜ることにしていた。

特にクルーズの名前にもなっているヘレン環礁は、龍馬を就航してからずっと環礁内を潜ることに重点を置いていたので、今年はその外側を潜ってみようと思っていた。そこで役に立ったのがこの海流図。6月のヘレンリーフ近辺は南赤道海流が当たっているようで南東からの流れとなる。当然ながら潮当たりのいい東側を潜ろうということになった。

ウメイロモドキ

今回潜った環礁外側の北東の張り出しを潜るのは実は2回目。ヘレンクルーズを開始して最初の年に潜ったというログがあるのだが、当時の僕がサボっていて何もデータを書いてない。何年も前のことなので覚えても無い。じゃあまあ潜ってみましょうと入ってみた。

エントリーしたら0.5ノット程度の流れがリーフに沿うように南から北に向かって流れていて透明度は50m。リーフの白と、真っ青な海の色とのコントラストが気持ちいい。

まずはカンムリブダイの群れがお出迎え、人を見たことがないから僕らが横を泳いでいてもフツーにしてる。続いてグレイリーフシャークとマダラトビエイがドロップオフ下に見える。さらに下には1.7mもあろうかという大型のハタ「タマカイ」が付かず離れず僕らのことを観察している。追うと逃げるが追わなきゃ逃げない。豪華じゃないですか。どうして今までここに潜っていなかったのかちょっと思う。

ここまでが序章。そこからが凄かった。

ツムブリ

ギンガメアジ1000尾ほどの群れがワーっと寄って来て僕らの周りを回り始めたら、続いてツムブリの2000尾以上もいるかと思うすごい群れが僕らを取り囲んでグルグル回りはじめた。ダイバーの泡に絡みつくように下から水面に向けて一気に泳ぎ上がり、さらに降りて来る。そして周りグルグル。これを繰り返しながら5分以上も回っていた。

目の前を通る1尾1尾と目が合う。僕らを興味深そうに見ている。ダイビングして僕らが水中を見に行っているはずなのに、逆に見られている。変な感じ。ギンガメとツムブリの同時攻勢にちょっとひるむがとにかくものすごい群れに囲まれてダイバー皆のテンションも一気に上がった。

楽しい時間は常にあっという間で、40分という時間はすぐに過ぎてしまった。エキジットした水面で皆が感動していたのは言うまでもない。

もちろん常にこういったシーンに出会えるわけではないのだろうが、またチャレンジしてみたいと思う。特に来年はもっともっと環礁の外側を潜ってみたい。クルーズが終わったばかりなのにもう来年のことを考えている自分が可笑しい。これからもずっと、何か新しいことに挑戦し続けたいし試していたい。ワクワクすることドキドキすること、それを冒険と言っていいのなら、これからも僕は冒険を続けたい。

カメラを構えるダイバー

ベラスコリーフ

ベラスコリーフの海図

ベラスコリーフに行ってきた。

パラオの最北端でカヤンゲル州領海内、英語だとVelasco reefと書く。

南北におよそ37km、東西に17kmほどあるリーフで南端にちょっとした環礁、ガルアンゲルがある。リーフの大きさはパラオ本島のバベルダオブよりも大きく、もし陸地だったら、パラオにしては大きな“いい島”になるのにと思う。

載っている海図も少なく、Google Earthで見ても1/3くらいしか出てこない。当然インターネットを調べてもほとんど何も出てこない。更に、ここの海中を知っているガイドもほとんどいないため、事前情報収集は意外にも、もっとずっと遠いパラオ南端ヘレンより苦労した。

ベラスコリーフの北端はコロールから直線距離でおよそ130㎞。ダイバー用の日帰りダイブトリップでは微妙に遠い距離のため、基本的にはない。

しかしクルーズ船ならアプローチできる。龍馬を駆って5月23日から26日まで行ってきた。

ツムブリの群れ

初日にノーザンリーフと呼ばれるカヤンゲル南にあるリーフを潜り、ここから徐々に北上しベラスコを潜っていく、カヤンゲルまでは海の色がパラオ独特のどっしりとした青だが、ベラスコは北赤道海流の影響を受けているので、水の色は水色。

水中景観はパラオというよりもマリアナの海に近いイメージが強い。サイパンやグアム、ロタといった島々のような水の色。とても新鮮だ。

印象としてはどのポイントも、まずツムブリが多い。

どこに入ってもツムブリの熱烈歓迎を受ける。2009年からパラオはサメを始めとする魚類の保護に乗り出していて、近年その結果が海の中に現れてきているように思う。魚が増えている気がする。

イソマグロ

全体的にしかまだ分からず、潜っているポイントも限られているのだが、一か所ピックアップするなら特に面白いポイントはベラスコチャネルという、ベラスコの西側に長さ5㎞以上ある太古の川の跡。ここの出口というか終わりの部分が非常に面白い。

全体的にフラットな地形のベラスコにおいて、ここは大きな水路跡が水中にあるため、おそらく魚たちの隠れ家となっているのだろう。グルクン類から始まり、ヤッコもチョウチョウウオも他のベラスコよりも多い。

カヤンゲル以北では珍しい光物の群れも、ここではオオメカマスやブラックフィンバラクーダが大きな群れを作っていて目の前を通っていく。

そしてそんな彼らの捕食者となるイソマグロやシルバーチップシャーク、グレーリーフがウヨウヨ泳ぐ。人を見たことがないから魚が逃げるどころか寄って来る。まあ天国なポイントなわけです。

シルバーチップシャーク

どうしてこんなところに潜りに行くのか?というと、単純に「人の知らないところを潜ってみたいから」シンプルにそれだけ。

ベラスコには島がない。だから風よけになる場所がない。北赤道海流が当たるから波が立つ。

なのでとにかく行くのが難しい場所で、龍馬なら行けるが非常に海況に左右される。僕も今回で北端まで来たのは2回目。

そう、ここもまた滅多に来れない場所。そんな場所にあるダイブサイトを一つずつ紐解くように潜っていくのは面白い。まさに冒険。

現代の世の中は何でもインターネットで調べられるし見られる時代。でもここは誰も知らないし分からない。ここに潜る僕らだけの海がここにある。

毎日感動

4月になった。

パラオは毎年2月から6月までの4ヶ月はトップシーズンと呼ばれ、それこそお祭りのような海中イベントが日々続く。

僕らガイドも連日海に出ては新たな発見や遭遇に感動をしているが、既に1万本を超えてもまだ初めて見るシーンというのに出会う。

それが海の凄さであり、懐の大きさであり、スケールの大きさだと思うが、いやはや、それにしても海ってやつは、終わりというのは無いのだなぁとまた今日も感動するのであった。

クマザサハナムロの群れ

自分の海

偉ばれた話ではないが、1月は1ヶ月の内1/3を日本で過ごすというガイドとしてあるまじき月だった。

もちろん仕事なのだが、ここまで海から離れると海のこと書こうとしてもなかなか簡単に出てくるものじゃない。

でも締切は迫ってくる。でも書けない。そんな葛藤のまままた一日、また一日と、過ぎて行き、結局パラオに帰って来てしまった。

と、そんなことを書きたかった訳ではありません。

パラオに戻ってきて思うことは、やはりこの空気感がいい。

うまく言葉では言い表せないんだけどこの湿度と気温。これが最高に気持ちいい。力が湧くというか元気が出るというか、うん、いわゆるそんな感じ。

日本に居るときの自分も自分なのですが、パラオに戻ってくるともっとリアルに自分を感じる。ここは自分の場所なのだと実感する。

気温が高い、汗をかく、喉が乾く、だからビールが旨い、結局そこか!というツッコミもいただきそうだが、しかしそれって大事なことで、生きてるって実感ってそこじゃない?

大好きな海の近くに存在し見つめ続ける。日本人として、人として、男として、父親として、そしてガイドとして、自分はどうやってこれからもこの海と付き合っていくのか。

離れて分かる。やはり自分はこの海が好きで、これからも此処でやっていく。だからたまにはおセンチに海を眺めることも大事なのだと思う。

パラオの海
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