ガイドのつぶやき 海辺のエッセイ 豪海倶楽部  

第四話

このへんで写真を撮るガイドとしては、テクニカルな話しをしないと、フィロソフィーだけか?と思われてしまうので、泥の攻略虎の巻を一説。

泥のポイントとは言え、年がら年中超視界不良か?と言うとそうでもない。四季のある日本は、雨が少なくプランクトンも少ない絶好のマッドポイント攻略の季節がある。そう、水温の低くなる冬・・・。これが、確実で泥の住人達に多く遭える最大の攻略なのである。しかし、季節的に見れない生物もいるし、ドライスーツがN.G.の人もいるので、梅雨明けや台風明けなんかの雨の少ない時期も、狙い目になる。泥の堆積するポイントは、堆積する泥が何の影響に因って、どんな構成物質で?と言うことも攻略の重要なファクターとなる。一般的には、川の影響を受けたり、潮流の影響に因って形成されるケースが多い。川のない島などでも、港の中には泥が堆積しているケースもある。いづれにしても、ただでさえ視界の悪い状況に負荷をかける「雨水の洗礼」を加えなくても良いであろう。

次に、観察や撮影に関する具体的な話しに進みますが、観察に関しては、ポイントに精通した有能なガイドを雇う事、これに尽きます。百戦錬磨のマッドダイバーならば、セルフでの攻略もまた一興ですが、それでも最初の2〜3本は、空振りに終わるかも知れません。潮流の方向や強さもまた、重要な要素です。潮止まりに入ると、どんなに中性浮力の達人でも、被写体の側に着底した途端にモャ〜っと、折角見つけた被写体を秘密のベールで包んでしまいます(苦笑)。これでは、意味がありません。水の中では、常に潮の流れを感じ、被写体にアプローチする方向を検討して下さい。ガイドが被写体を見ている、あるいは見せている方向は、伊達や酔狂で陣取っているのではありません。一般的には、ガイドのライトを持っていない方向から(ガイドによっては、逆からアプローチさせるケースもあります)近付くのが、よりクリーンな環境のまま、観察や撮影が可能になります。

次に、お世辞にも明るい環境と呼べない、マッドポイントですから、ターゲットライトやリサーチライトは必需品になります。少人数の場合は、ガイドがライティングまでケアしてくれますが、巣穴に隠れるなど、一対一の状況を要求する被写体によっては、ガイドは観察者の後方で、気配を消しております。あるいは、運動信号(筋肉を動かす時に発する電気的なパルス)が微弱になる位置まで下がっています。その場合、しっかりと被写体を照らすターゲットライトは、各個人が持っていなければなりません。ところが、ただでさえ、重い撮影機材を持って行る上に、被写体に応じたライトを用意することは、困難を極めます。被写体が決まっている時は、1種類で済むライトも、幾つかの複合的な被写体を求める場合は、相手に合わせたライトが必要になります。被写体を限定したり、絞ったりするのも、観察や撮影の極意と言えるでしょう。同じ東芝のミニライトでも、クリプトン球だったりハロゲン球だったり、フィルターを付けたり、反射板を加工してあったり、様々です。HIDのライトや調光のできるライト、色温度の低いライトなど、ナイトダイビング以上に配慮しています。撮影の場合、極力左側を潮上にして、右目でファインダーを覗き、左目で周囲の状況を観察しながら、浮遊物の少ないタイミングを見計らってシャッターを押します。相手の動きのタイミングで撮影する場合には、通用しない方法ですが、意図的に浮遊物を少なくするには、この方法がベストです。また、ストロボの角度とポジションには、気を遣って下さい。状況に応じて、微妙に違いますが、フレキシブルな調整が可能である、アームやジョイントを選択した方が、ストレスが少なくなります。

裏業は、他にもいろいろとありますが、フィールドに出てしまえば、すべては能書きに変わってしまいます。まずは、自分の目で見て、肌で感じる事、そこからがスタートです。スタートもしていないのに、初めから諦めてしまったり、かけ離れた世界だと思わないで下さい。向き不向きがあるかも知れませんが、生物が好きな方ならば、必ずや満足のいくダイビングができると思います。

数々の難関をクリアーする、最もエキサイティングなマッドゲームをお楽しみ下さい。ゲームオーバーはありません。


鉄
鉄 多加志

1965年生まれ
清水出身

生まれ育った環境が、都市部?の港湾地域に近く、マッドな環境には滅法強く、泥地に生息する生物を中心に指標軸が組み立てられている(笑)この業界では、数少ない芸術系の大学出身で写真やビデオによって、生物の同定や生態観察を行う。

通称「視界不良の魔術師」
静岡・三保

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