南国通信 楽園からのらくがき 豪海倶楽部  

南の島の30年

チュークに住んで30年が過ぎた。

そしてこの30年間、良きにつけ、悪しきにつけ、ずっと島の変貌振りを見てきた事にもなる。この間のミクロネシア各地の変貌振りは大変なもので、特に、グアム、サイパンのマリアナ諸島やパラオの変貌振りには目を奪うものがある。

そのグアム島から僅か1000キロ、1時間半のフライトで訪れる事が出来るここチューク諸島では、マリアナ諸島やパラオ程の変化は見られないが、それでも幾つかの顕著な変化も見られる。

格段の変化は飛行場だ。

当時の飛行場は、日本時代の飛行場をそのまま利用しており、舗装もしてなくて、コーラルサンドを敷き詰めただけの滑走路であった。

管制塔はおろか誘導灯すらも無く、島の海岸に滑走路が延びているだけのもので、柵もフェンスも無く、飛行場への出入りは全くの自由であった。毎日、毎日、散水車で水をまき、ローラーをいつも転がして路面の整備をしていたのを思い出す。

砂埃をもうもうと立てながら着陸した飛行機は、これまた砂埃の中からゆっくりと姿を現しエプロンに向ってやってくる。その当時のコンチネンタル航空のポスターに、砂埃の中から姿を現したボーイング727の雄姿が映ってる写真が今は懐かしい。着陸態勢に入った飛行機は、1度超低空で滑走路上をかすめて飛び立ち、飛行場内にいる、犬やブタ、ニワトリ、はたまた滑走路内で遊んでいる人間ドモを追い払ってから、安全を確認し降りてくる始末であった。飛行機が遅れ日没を過ぎると、野球の日没コールドよろしく、チュークの空を跳び越して飛行機はグアムに飛んで行った。スコールがチョットでも強くなると、やはり飛行機は降りることなくチュークの空を通り過ぎて行った。

一日に1回のフライトが終わると、子供達は一斉に滑走路に飛び出し、日が暮れるまで遊んでいた。夜ともなれば、みんながゴザを持ち出し夕涼みをしたり、天気の良い夜は朝まで寝ていたものだ。広い滑走路はまた若者達の格好のデートの場所でもあった。夜、滑走路内を歩いていると、あちこちでその現場に出くわした。そんな島人達の憩いの場所も、今では厳重にフェンスを張り巡らし何人たりとも立ち入る事は出来ない。

港もまた大きく変化したものの1つだろう。

何度かの工事のお陰で岸壁が整備され、今では貨物用のコンテナが所狭しと並べられている。当時の港は、飛行場と同じく出入りが自由で、夜になると夕涼みを兼ねて良く釣りに行ったものだ。今は警備も厳しく、関係者以外は港に入ることは出来ない。貨物の取扱量も格段に増えて、当時は港近くに1件だけだったスーパーマーケットも、現在では港周辺を中心にたくさんのお店が出来ている。豪華なクルーズ客船の入港も増えて、その数は年間10隻以上にも及び、狭い島の中にも国際色豊かな情景が見られるようになって来た。

そんな変化も主島であるモエン島に限った事で、他の島々は依然として30年前と殆ど変ってはいない。モエン島の一部を除き、殆どの島には電気も、道路も水道も無く、病院も、銀行も、いまだ何も無い。ライスや肉、カンズメなどの食べ物が当時より消費されるようになってはいるものの、これとて、急激な人口増加にも要因がある。かれらの食生活は依然として、パンの実、タロイモ、バナナ、タピオカなどの伝統的な食べ物に頼っている。昔からある港周辺の市場には、当時と同じ現地人の食べ物が所狭しと並べられている。

人々の生活もまたしかりである。

私が来た当時のアメリカ時代から考えると、むしろ時代から逆行している感じさえあるほどだ。

当時のチュークは、今よりあらゆる事がきちんとしていたし、政府や行政もちゃんと行なわれていた。むしろある面ではマイナスの変化が多く見られるのも事実である。病院、学校、ゴミや環境問題、役所・行政などの全ての事が今よりもキチンとなされていた。

今の学校は11時までで、教室にはイスも机も無いのが普通である。以前の学校はきちんと3時まで行なっていたし、給食も毎日支給されていた。病院しかり、ゴミ問題しかりである。

なんといっても政治・行政の腐敗がもっとも大きな問題で、政治家やお役人だけが私腹を肥やしている。30年前、私が降り立った時に比べチュークの社会は確実に衰退の一途を辿っている。

文明の波に押しつぶされ、島の伝統も自然も破壊されるのは困る事だが、このような政治・行政の腐敗がもとで、島人たちの基本的な生活環境が守れず、自然や伝統が残ってゆくのも複雑な思いがする。

チューク諸島
末永卓幸


末永
末永 卓幸

1949年1月生まれ
長崎県対馬出身

立正大学地理学科卒業後、日本観光専門学校に入学・卒業。在学中は地理教材の収集と趣味を兼ねて日本各地を旅する。1973年、友人と4人でチューク諸島を1ヶ月間旅行する。1978年チューク諸島の自然に魅せられ移住。現地旅行会社を設立。現在に至る。観光、ダイビング、フィッシング、各種取材コーディネート、等。チュークに関しては何でもお任せ!現地法人:『トラックオーシャンサービス』のオーナー。

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