南国通信 楽園からのらくがき 豪海倶楽部  

椰子の葉の効用

椰子の木は南の島にとてもよく似合う。

中でも椰子の葉のみずみずしい緑は、南の島に独特の風情と清涼感をかもし出している。そんな椰子の葉っぱも、島に住む人たちにとっては、とても大切な生活の道具となっている。

椰子の葉があれば、簡単に、あっと言う間に立派な小屋を作ることが出来る。椰子の葉を編みこんで屋根を葺き、壁を作る。そして青々とした椰子の葉をそのまま床に敷けば清潔な涼しいフロアーが出来上がる。チューク環礁の無人島には、そんなかわいい椰子の葉の小屋があちこちに見受けられる。チェットだけ無人島で過す時の現地人の住まいである。しょっちゅう無人島でキャンプをする私のお気に入りは、この青々とした椰子の葉のカーペットだ。清潔な緑と、素肌にひんやりとした緑の感触は、1度体験すると必ず病みつきになってしまう。

チュークの女達は掃除が好きだ。

毎朝、毎夕、若い娘達が家の周りの落ち葉を掃いたり、草をむしったりしている。そんな時に使われているのが、椰子の葉の箒(ほうき)である。やしの葉っぱの枝をそのまま使って先端を切りそろえ箒にしたものがある。大きな葉っぱやゴミを掃く時に使われる。そして、椰子の葉っぱの芯を削り取って大量に束ね、箒にしたもの。細かな掃除に使われる箒で、日本の庭掃き箒に似ている。チュークの家にはどこの家にも、この椰子の葉の箒が立てかけてある。

冠婚葬祭の度に、家の周りには青い椰子の葉を張り巡らす。道行く人達に何があるのかを無言のうちに知らせてくれる。祝いの時、葬式の時、祭りの時、パーテーの時、椰子の葉のフェンスは、その時々の雰囲気を見事に演出している。

チュークの人は蛮刀1つで山に行く。 そして山から下りてくるときには、椰子の葉っぱで作った立派なバスケットを肩に担いでいる。 その中には、獲ったばかりのパンの実やバナナ、タロイモなどがいっぱい入っている。 とても便利な運搬道具だ。 椰子の葉のバスケットは誰もが編めるチューク人の常識でもある。

日差しが強いときには、麦藁帽子ならぬ椰子の葉帽子が作られる。 バスケットを編む要領で、細長い椰子の葉の特色を生かした洒落た帽子が出来上がる。 大きなツバの椰子の葉の帽子は、日よけ効果万全で、しかもオリジナリティー溢れた優れものだ。 観光客に人気の一品でもある。

日曜日の朝、どこの教会も現地人たちで溢れている。 そんな女達の手には、現地独特のウチワが見える。 椰子の葉っぱの最先端を編みこんで作った南の島独特のウチワである。 熱帯の島では無くてはならない女達の持ち物だ。 中には様々な模様を施した物もあり、実用品を超えた民芸品としても優れたものだ。 我が家にも、浴衣姿を描いた日本のウチワに混じって、椰子の葉のウチワが置いてある。

枯れた椰子の葉もまた、生活には無くてはならないものだ。 もともと油を含んでいる椰子の葉は、燃料としてもとても優れている。 枯れた椰子の葉が1本あれば、ヤカン一杯のお湯を沸かすことが出来るほどだ。 民家のカマドの周りには、枯れた椰子の葉を束ねた物が、何本も放置されてある。 この椰子の枯葉を長いままに束ねてタイマツを作る。 椰子の葉のタイマツの明りを頼りに、魚や貝、タコなどを探してゆく。漁火(いざり火)だ。 月の無い大潮の夜、手に手に椰子の葉のタイマツをかざし、遠浅の海岸を練り歩く女や子供達。 南の島の夜の風物詩でもある。

南の島の生活に密着した椰子の葉。

大きな青葉や枯れ葉が島の生活を支える大事な道具として使われている一方、椰子の若葉は、島人達のレジャーの道具として欠かせない物となっている。葉っぱとして開く前の椰子の若葉は、閉じた扇子のような束になっており、薄緑色した艶のある光沢をしている。祝い事がある時にはこの椰子の若葉が必ず使われる。中でもよく使われるのが、ダンサーへの装飾である。若い男女の頭や腕、足、腰、など体中を若葉で飾って、情熱的な南国の踊りを一層盛り上げるのに一役買っている。

椰子の若葉は、島の若い男女同様、南の島の情熱の象徴でもある。

椰子の葉と暮らす人々

チューク諸島
末永卓幸


末永
末永 卓幸

1949年1月生まれ
長崎県対馬出身

立正大学地理学科卒業後、日本観光専門学校に入学・卒業。在学中は地理教材の収集と趣味を兼ねて日本各地を旅する。1973年、友人と4人でチューク諸島を1ヶ月間旅行する。1978年チューク諸島の自然に魅せられ移住。現地旅行会社を設立。現在に至る。観光、ダイビング、フィッシング、各種取材コーディネート、等。チュークに関しては何でもお任せ!現地法人:『トラックオーシャンサービス』のオーナー。

ミクロネシア・チューク諸島

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