南国通信 楽園からのらくがき 豪海倶楽部  

つまみ貝

南の島で、酒の肴と言われると、私にはすぐに思い浮かべる貝がある。日本名『マガキガイ』と言われる、親指大の巻貝である。イモ貝の一種で、現地の人達も好んで食する貝の1つである。

一般には、イモ貝には毒がある、とよく言われるがそうではない。本当に毒があるのは極・極一部のイモ貝で、中には猛毒を持つものもあるが、殆どのイモガイは希毒か無毒かである。イモガイは世界中の熱帯・亜熱帯に生息しており、その種類は600種以上にも及ぶ。中でもマガキガイは繁殖力が非常に旺盛で、環礁内の至る所に生息している。水深1m前後の岩場と砂地の入り混じる浅海に棲み、周りの石や砂の色に溶け込んでいて、慣れないと見つけるはなかなか難しい。

友人や、親しいお客様がいらっしゃった時には、一緒にこの貝を獲って、晩酌のおつまみとしゃれ込む。フタの部分が細長い爪状になっており、摘んで食べるのに格好の形をしている。摘んで良し、食べて良し、で、私はこの貝の事を『ツマミ貝』と勝手に呼んでいる。

ツマミ貝を獲るにはチョットコツがいる。海底では保護色をしているのに加え、午前中は砂の中に潜りこんで砂に覆われており、この貝を獲る(見つける)のはチョット難しい。素人の人達にはまず見つけることすら困難である。それでも夕方近くになると砂地から体をもたげてきて、貝の輪郭が容易につかめる様になる。この貝は集団で生息しているので、一回の息つきで5個も10個も獲ってくることが出来る。干潮時には歩きながらでも簡単に見つけることが出来る。ついつい夢中になり余分の貝まで獲ってくる羽目になる。獲り過ぎは良くない。

ツマミ貝を茹でるにはチョットコツがいる。まず、獲ってきた貝は死なないように気をつけて家に持ち帰り、綺麗な海水を鍋に満たしてしばらく貝達を入れて置く。すると鍋の中で身を乗り出し、ゴソゴソ・ニュルニュルと鍋の中を這いずり回る。頃合を見て火をつける。遊んでいた貝達は身を乗り出したまま昇天してしまう。従って、茹で上がった貝から身を取り出すのは、いたって簡単である。これが、真水で茹でると、水に入れただけで貝達は貝の奥深く入り込んでしまう。従って、茹で上がった貝から身を取り出すのは不可能である。

つまみ貝を美味しく食べるにはチョットコツがいる。茹で上がったつまみ貝は、細長いフタの部分を摘んで簡単に身を取り出せる。問題はこの後である。茹でた貝の身は、水洗いをすると味が落ちてしまう。しかし、砂地に棲んでいるこの貝には、細かな砂が付いているし、貝独特のヌメリやハラワタが付いている。この、ワタやヌメリ、貝に付いている砂を水洗いせずにきれいに落とすには、私が考案した独特の方法がある。こうして、小さい貝の剥き身を、1つ1つきれいにして、『つまみ貝』の完成である。これは文句無しに美味しい! 手を掛けた分、さらに美味しい!

ところが今年はまだ『ツマミ貝』を口にしていない。家族みんながツマミ貝を待っている。。。

海を想い、貝を摘む。。。

チューク諸島
末永卓幸


末永
末永 卓幸

1949年1月生まれ
長崎県対馬出身

立正大学地理学科卒業後、日本観光専門学校に入学・卒業。在学中は地理教材の収集と趣味を兼ねて日本各地を旅する。1973年、友人と4人でチューク諸島を1ヶ月間旅行する。1978年チューク諸島の自然に魅せられ移住。現地旅行会社を設立。現在に至る。観光、ダイビング、フィッシング、各種取材コーディネート、等。チュークに関しては何でもお任せ!現地法人:『トラックオーシャンサービス』のオーナー。

ミクロネシア・チューク諸島

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