南国通信 楽園からのらくがき 豪海倶楽部  

チューク諸島の海から

こぼれるような満天の星空、南の空には南十字星が椰子の葉の間にくっきりとその姿を見せている。上弦の月が水平線に浮かんで、夜の海をオレンジ色に染めている。幻想的な夜のビーチ。椰子の葉の間を通ってくる優しい夜風を肌で感じながらグラスを片手に夢の世界に浸る。・・・・・ここはチューク諸島の南に位置するとある無人島である。

原始の無人島でキャンプをしたい! そんな単純な発想から始まったこの無人島・2泊3日のサバイバルツアー、今回で5回目を迎える。自分達で魚を釣り、貝を獲り、イセエビ・カニを獲り、食糧を調達する。その過程がまた楽しい。

今回の参加者はリーダーの宮田を入れて5名。紅一点、今回も女性の参加者があり、男ばかりの無人島生活に華を添えてくれる。それにガイドの私と現地人スタッフ2名の、総勢8人での無人島キャンプだ。出発に先立ちキャンプに必要な物を補充・調達する。ビール・お酒などの飲み物。これがなくては夜の楽しみが半減する。釣具の補充。これが大きな威力を発揮する。ちょっとした道具だが、食糧調達には欠かせないものだ。各人のテントと食器は各自が日本から用意する。大まかな装備と現地スタッフ用の準備は私の担当である。

ホテルでの1夜が明ければいよいよ出発である。まだ見ぬ無人島への思いを胸にボートに乗り込む。広大なトラック環礁をボートが疾走してゆく。何度乗っても気持ちがいい。みんなの顔も笑顔で緩みっぱなしだ。ましてや今回は3日間の無人島生活が待っている。

途中、チューク環礁のアウトリーフで釣り大会を行う。この釣りは毎度恒例のお祭りみたいなものであるが、キャンプを張る前のメンバーの親睦とその日の食糧調達を兼ねたとても重要な催しでもある。リーダーの宮田を除き隊員4名の釣り大会がスタートした。女性の参加者がある場合は、すべて私が面倒を見る事になっている。その例にもれず、今回も私が女性隊員の釣りの手ほどきをする。

糸を垂れると同時に彼女の竿がしなる。男達の悔しそうな顔を尻目に、次々と魚を釣り上げてゆく。しかも今宵の宴会を考えたような高級魚ばかりである。彼女の賑やかな笑い声とみんなの囃し立てる声が明るい海にこだまする。そのうちに男達の竿にも次から次へとあたりが出始めた。現地スタッフが忙しくボートの中を走り回る。あっと言う間にクーラーボックスが満杯となってしまった。自然と笑いがこみ上げてくる。

漁に来た現地人達のボートが2隻、近くの無人島で昼休みをとっている。釣った魚をお土産に、早速我々もその仲間に入れてもらう。大漁の後の楽しいお弁当の昼食が始まる。今夜のおかずはすでに確保して、誰の顔も底抜けに明るい。午後の楽しいひと時を過して、さあ、いよいよキャンプ地の無人島に出発だ。

3時前、無人島に上陸。荷物を運び終え、ボートはモエン島に帰ってゆく。これからの3日間は我々だけの無人島となる。みんな思い思いの場所にテントを張る。この3日間の我が家と言うわけだ。私達も、現地スタッフとリーダー・宮田との4人が生活をするベースキャンプの設営を行う。キャンパスシートで屋根を覆い、もう一枚をグランドシートに敷いただけの簡単なものである。食事や宴会の場所には、新鮮な椰子の葉っぱを一面に敷き詰めて、椅子代わりに浜から大きな流木を担いでくる。これで立派な宴会場の出来上がりだ。

我が家が出来た人は、我先にと海に入ってゆく。さんご礁の海をのんびりと泳ぐ者、今夜の宴会用にと獲物を探しに行く者、椰子の木陰で読書をする者。夕食までのひと時を、思い思いに過す。その間に私と現地人スタッフは今夜使う薪を集めたり、夕食の準備にと余念がない。男性隊員が手に手に獲物を持って嬉しそうに海から上がってくる。シャコ貝、ラクダ貝、クモ貝、オニサザエ、どれも酒の肴にピッタシだ。

大きな夕陽が水平線に落ちる頃、楽しい無人島の宴(うたげ)が始まる。尾頭付きの魚の塩焼き、カスミアジの刺身、貝の刺身、貝の煮物、ハタのスープ・・・。全てが今日自分達で獲ったものばかりである。素朴だが日本では決して口には出来ない新鮮な味わいと旨さ。昼間のほてった体に椰子の夜風が心地良い。冷えたビールと南国のカクテルが居る者を天国へと誘う。

満天の星空に水平線を照らす月の明かり。聞こえるものは、椰子の葉のそよぎと、夜のビーチを優しく洗う波のささやきだけ。。。赤く燃える焚き火が、残り2日間の夢と希望の世界を照らし出す。天国に集う者達の心の言葉が夜の無人島にしみわたる。

天国にあそぶ
チューク諸島

末永卓幸


末永
末永 卓幸

1949年1月生まれ
長崎県対馬出身

立正大学地理学科卒業後、日本観光専門学校に入学・卒業。在学中は地理教材の収集と趣味を兼ねて日本各地を旅する。1973年、友人と4人でチューク諸島を1ヶ月間旅行する。1978年チューク諸島の自然に魅せられ移住。現地旅行会社を設立。現在に至る。観光、ダイビング、フィッシング、各種取材コーディネート、等。チュークに関しては何でもお任せ!現地法人:『トラックオーシャンサービス』のオーナー。

ミクロネシア・チューク諸島

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