八ック謎ナゾ生命体 豪海倶楽部  

ようこそ天空の城へ

多分、前に勤めていた会社の、同じ部署で働いていた人が言っていた言葉だと思う。

私の記憶が正しければ、会社の留学制度でMBAを取得、出世コースに乗った若い課長さんだった人だ。一時上司だった時があったっけ? 考え方が合理的で、何を言っても説得力があった。だからと言って、高飛車でもなければ押し付けがましくもなく、ただ普通に話をしているうちに「そうだ、そうだ。」と思ってる自分がいる。その人が「寒い所へは寒い時に! 暑い所へは暑い時に行くべきだよ!」と言ったのだ。今度の休みにどこへ行く〜?っていう程度のたわいのない話なのだが「北海道へ行くなら冬! 沖縄へ行くなら夏!! じゃないと、その土地の良さが味わえないじゃん! 沖縄は海、北海道は雪でしょ!!」なるほどー!! そうだ、そうだ。多分そうだ。

その土地本来の特徴が最もよく出ている時期に、その土地へ出かける。だとすれば、八丈島に行くなら梅雨の頃が一番良い。なんでって、八丈島は日本でも有数の多雨の島だから。

島の人たちは、そんなこと口が裂けても言わない。青い海、青い空、夜には満点の星空、春にはアロエが咲き、フリージア祭りが開催され、夏の山はウォーキングだのマラソンだのトレッキングする人たちで賑わい、海には釣り人、ダイバー、そして海水浴客の歓声がこだまする。お盆の頃には底土海岸で花火大会、屋外ステージはカラオケやフラダンスショーで盛り上がり、秋は地魚を堪能して露天風呂で癒される、南国の島、八丈島へようこそ! そんな宣伝ばかりしている。だから、初めて観光に訪れた人は「雨が降ったらどうするか?」ということを考えていない。雨に当たらない確率なんて、すごい低いのに。できれば「雨の日こそ、体験ダイビング! どうせ濡れるんだから、楽しさ同じ!」と宣伝したいのだけど、どうもイメージがイマイチだ。

つまり、島に住んでいる私たち自身が、八丈島は格別に雨が多い所だと知ってはいても、その良さがちっとも見つけられないでいるのだ。だから、ひた隠しに隠す。気が付かないふりしちゃう。八丈島は、いつだって青い空。

しかし、いつまでもそんな誤魔化しは通用しない。もっと雨の日こそ楽しい八丈島。雨が降ってて良かったぁって思えるような、何かを見つけ出さなければ。でないと「残念!」な日があまりにも多すぎて悲しすぎるじゃないの。

別に八丈島の観光産業を慮ったわけじゃなく、自分が休みの日に雨が降ると、あまりにも退屈なもので・・・。動機はともかく、雨の日を楽しもう!と、出かけてみた。私の場合、雨だからインドアっていう考え方はダメだんだよね。なんかポジティブな感じがしなくて。仕方なくインドアじゃなくて、雨の日だからこそ外出。書を捨て街へ出よう! いや、街はないな。でも、とりあえず出かけてみた。

折りしも、ここ数日、連日の雨。ただでさえ雨が多いのに、梅雨だから出血大サービス。雲はどんより鼠色。島いっぱいに霧が立ち込めて、車で走っていると、天国へ続く道に吸い込まれて行くような気分。もしかして、これこそが天空の城? 若干イメージ違うけど、これが現実。じゃあ、あえて雲の中へ入って行こう!ということで、山の中へ。

山の中は、本当に真っ白け。

これは火曜サスペンス劇場の殺人犯行現場にピッタリ!映画好きの人なら、斧をかついだジェイソンうろつかせたり、逃亡中のハリソン・フォードを走らせても良いかも知れない。忍者対決にもピッタリだな。おどろおどろしいのが嫌いだったら、許されない恋に落ちた二人の秘密の森とか。 要は、何も見えないので、想像力が無限大に活躍できるわけ。

これは、どっちかって言うと、怖い雰囲気。

こんな雰囲気、雨の八丈島でないと味わえないでしょ?あなたが監督なら、どんなシーンに使う?

そして、夢に出てきそうな、雲の中へ消えていく小道。

この道を歩いている間、決して後を振り向いてはいけないんですよ、って言われそうな気がしない? あるいは村上春樹の小説の中の一場面みたい。どこかに、誰も知らない井戸がぽっかり空いてて、落ちても誰も助けてくれない。

雨が多いと、コケやシダもいっぱい、わんさか生えてくるんですよ。
足元をよく見ると、こんな小さな森ができています。

こうやって、いろんなことを考えながら雲の中をほっつき歩いてみると、雨の日もそんなに悪くない。元々落ち込んでる時には止めた方が良いかもしれないけど。

レイニー・ツアーと銘打って、雨の森をトレッキングするツアーとかやってみたら面白いかも。わざと、雨の日ならではのシーンを訪ね歩く。晴れたら中止? 残念ですね〜、良い天気になっちゃって。

次回は、雨が降りそうな日を選んで参加してくださいね。


水谷
水谷 知世

昭和40年代生まれ
兵庫県出身

一見、負けず嫌いで男勝りというイメージだが、実は繊細な女性らしい一面を持つ、頭の回転はレグルス一番!!の頼もしい存在である。(レグルス親方・談)

伊豆諸島・八丈島

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