潜るコピーライターのアンダーウオーターズポエム | 豪海倶楽部 |
Mother's beacon 〜ぱいぱい塔〜 第四話 “ぱいぱい塔”は、どっしりと落ち着いた雰囲気をしている。 地球のピンチだというのに、なんとも堂々とした落ち着きようだ。なにがあっても揺るがずに、子供達が成す事を見守る覚悟なのだろう。。“信”だ。 はじめて“ぱいぱい塔”に会った時、ジュンペチも正直びっくりしたんだ。“ぱいぱい塔”にびっくりしたのではなく、“ぱいぱい塔”に会った自分の感想にびっくりしたんだよ。会ってみて『イメージが違う』とか、『なぁーんだ』とか、『うわぁ』とか、全然感じなかった。ただごく自然に“ぱいぱい塔”だった。不思議な事に、そんなお母さんの雰囲気に触れて、なんとなく『まもりたい』という気持ちが生まれつつもあった。もしかしたらそれはお母さんが持つ成長を促す雰囲気のせいなのかもしれない。 しばらく“ぱいぱい塔”を見つめていたゴルゴルが、グンとウロコをとがらせて意を決したようにつぶやいた。 「・・・・オイラ、行くわ」 「ど・どこへ?」 「まったく嫌ぁな予感が的中さね〜」 「ど・ど・どこへ行くのっ?」 「深空へゆくんだよ。深空へ。」 「え?」 「おっと、それよかジュンペチは自分の泡ん子を割っちまったんだったな。まったく相変わらずなやつだぜ。」 「ぷんっ、相変わらずって、どういう意味なのっ?」 「いつもそうだったからそうだって言ってんだよ。ジュンペチは、相手の心の中に住む自分の存在が弱いとか、薄いとか思い込んでいるんだよ」 「?」 「だから相手を疑う気持ち云々よりも、相手の中の自分自身を信用しきれねぃ、だからすぐに不安になるんじゃねいのかぇ?」 「なんでゴルゴルにそんな事が言えるのっ?!!!」 「あのさ〜、相手の中に居る自分を信用できるように、強く育てる方法を教えてやるよ。自分の気持ちを相手に精一杯伝えるんだよ。がんばって自分を表現するんだ。まず相手に伝わらなきゃぁ相手の中に居る自分にも伝わらない。単純な事だよ。それが出来ないようじゃぁいつまでたっても相手の中に居る自分は育たないぜ。」 「・・・・・」 ゴルゴルが言っている事はマシロが言ってた事とおんなじ事なのだろう。。わかるような気がする。ううん、わかった。わかったというより、それなら知っていたかもしれない。けど、気持ちを伝えるという事は勇気の要る事だ。自分の気持ちを上手に表現するという事は難しい事だよ。それにもしそれが相手にとって嫌な事なら、言わないでいるほうがどちらも傷つかなくていいのじゃないかな?とも思う。ジュンペチは黙ったままでいたよ。 「・・・まぁいいさ。おい、やるよ!っていうか、かえすよ!さぁ、オイラの泡ん子に入んな、これからは2プク一緒じゃぁ呼吸が保たねぃよ」 「待って。ゴルッチ!それでは君が!!」 「いいんだよ、マシロッチ、大丈夫だ。オイラには使命がある。だから旅について来たんでぃ。それよりもジュンを、この忘れん坊を、よろしくたのむぜ!」 「え?“ジュン“って?」 「おい、おい、ジュン。本当に忘れちまってるのかぇ?」 「え?」 「ジュンは何度生まれ変わっても、オイラの事だけは想い出そうとしないんだなぁ」 「何?誰?」 「オイラはジュンのハッカドロップだよ」 「・・・」 「いつだって、オイラ達は一緒にドロップを食べていたじゃぁねいか?」 「なんでドロップのことを知ってるの?」 「でも、その度にジュンは・・。ハッカドロップが出る度にジュンは泣き出して缶に戻していた。。。。まだ、想い出さねぃかぃ?」 「ひゃぁ。ゴルゴルは龍だったの?」 「やれやれ・・」 ゴルゴルの想いを持った泡ん子がニコニコ光って帰ってきたよ。そしてふんわりとジュンペチを迎え入れたんだ。 「あ・・・・この感じ・・・まさか?。う・・うわぁぁ〜ん!」 「ようやく想い出してくれたのかえ?けどよぅ、いつも最後までハッカを残していたから、今もこんな形でしか会えねぃんだぜ?」 「だって、だって、会いたくて、会いたくて。今度こそパインかな?と思って缶々をふっても、またヒュウヒュウ辛いハッカで・・・・だから・だから」 「ばかでぃ。オイラ達が一緒に食べれば、何味だって分かちあえたのじゃぁねぃのかえ?」 「うん。うん。そうだね。そうだよ。きっときっとそうだったんだよ、、なのに・なのに」 「わかればいいんだよ。。わかれば。オイラ行かなきゃなんねぃけど。サヨナラだけど。辛いけど。これが最後に残したハッカの味だ。。。泣いてもいいから全部食べちまっておくれよ?オイラ達の新しい缶に・・、ハッカだらけは、もぅゴメンだぜ!ははっ」 「ゴルゴル・・。やっと会えたのに?」 「あははっ、会えたから行くんじゃねいか!オイラは龍の末裔として、海の生まれ変わりに責任があるんでぃ!」 「っっこれは生まれ変わりなの?!」 「そうだよ。“飽和=海産み“の時さ。龍にはわかっていたことだ。」 「地球が海を産むということ・・?」 「そう。宇宙が地球を産み。地球が海を産む。そして海は生き物を産む。果てしなく遠い時の輪を、ゆっくりとたどりもどるようにくり返されていたことさ。まさしく明日の裏満月。そう、その時に起こる超大潮が、伝説に云う“来るべき時”なんだぜ」 ゴルゴルが続けた話はこうだ。 けれど悠久に一度だけ、お月様は後ろを向く。地球がこっそりと合図をするんだ。『お願いです。すこし着替えをしたいのです、はずかしいので絶対に見ないで下さい』ってね。けど、この言い方は地球の小さな嘘なのらしい。だって、こうでも言わないとお月様は後ろを向いてはくれないからだ。海産みにとって最後に必要なのは、お月様の地球を見たくて仕方がないという気持ちから発する大引力だというのに。。。 「お月様は地球を愛しているから、お願いは聞く。けど本当は見たくてしょうがないのな〜。見たい見たいの大引力さ。ははっ。その頃は深空に住んでいたオイラ龍のご先祖は、ひょんなことからこの嘘を知っちまったんだ。けどさ、龍もイタズラ者だろ?お月様にしゃべっちまったら大変だよ、大昔の神話のように、お月様も“ふり返りの禁忌”を破って全てが台無しでぃ。それは困ると思った海は、龍が欲しがっていた水を司る力を授けた、でもその代わりに普段は海に隠れててくれって言うのさ。まいったね、オイラそのおかげでとんだかくれんぼ上手だえ?くすっ。けっこうおかしな話だろ?このように、海産みは本来恐れることもない。宇宙から見ればなごやかな日常の営みなんだぜ。」 と、笑いながら話をするゴルゴル。けれど次の行はキッとした目で言った。 「但し、“人の手”が作用していなければ、の話だがね。」 ジュンペチは科学の時代に生きたとき、人として科学をいろいろ利用してきた事をおもい出した。もちろん人の役に立って、人を助けた科学もあった。必要だった科学もあった。けど、それは“人”にとって、だけだったのかもしれない。“人”だけが、、海の子ではないだろうに・・・・・・。 「海が生まれ変わる時は、海の子である生き物達もみんなで傍に居たいよ」 「わかってらぃ。海もそれを望んでいるよ。しかし海が成長するまでには、気が遠くなるほどの時間がかかるんだ。海が赤ちゃんの間は、生き物みんなも赤ちゃんのように泡ん子の中で眠って待つことになるよ。今からジュンはマシロッチと海中に戻って、生き物達みんなにその事を伝えてくれろ。そのために“ぱいぱい塔”は2プクを呼んだんだぜ。。さぁ行って海面までみんなを導いてくれぃ。そして海産みに立会うんだ」 「龍は?ゴルゴルは?」 「深空にて、海を御護りする」 「は?」 「へっ。ようするに空の破れ目をなんとかするのさ。時が来る前にこぼれちまっちゃぁどうしようもない。不自然なんだよ、それじゃぁ。早すぎるってんだ。そうなるともう海は生まれ変われねぃ。そんなのはダメだっ!オイラがまもる。絶対に超大潮までもたせてみせるぜ。この夜を乗り越えるためにオイラの命はある!」 「ふさぐというの?ダメだよ無理だよ大きいよ。宇宙にこぼれておぼれるよ」 「それもまたよし。望むところさ。それによ、オイラ龍だぜ?雨にのって戻ってくるさ。そん時はよ・・オイ!お前さんが、ジュンが呼んでおくれよ。」 「雨を呼ぶ・・・?。そんなことジュンペチに出来るの??」 「もちろんでぃ!“命の素”を授かりし者の本能さ。祈りだよ」 そうだ、女性は“命の素”をお母さんから受け継いで、又、子供に伝えるんだ。体に海を持っていると、、、自分が母体であるということを忘れずに、日々を大切に生きるように、、と。遠い昔に教えてくれたのもゴルゴルだった。 「宇宙から戻る海は雨となり、地球にそそぎ、又、海として育ち、地球を甦らせる?命の育み。。。ねぇゴルゴル?地球は宇宙に海を産むのだね」 「そうさ。すべては繋がっている。おおきな丸なんだよ。それによ、泡ん子族のお母さんも頑張るんだぜ。緑達と協力して空気の赤ちゃんをたっくさん産むんだよ。あの空の破れ目なんか目じゃねぃさ。みんなそれぞれの使命がある。マシロッチはうすうす知っていたのさ。オイラの使命も、そしてオイラがジュンのハッカドロップだってことも・・。だから黙って見守っていた。」 「黙っていてごめんねジュンペチ。でも、どうしてゴルゴルが僕のじゃなく、ジュンペチの泡ん子に入っていたかわかるかい?・・ゴルゴル、言ってもいい?」 「う、、う〜ん」 「ジュンペチの想いに触れたかったからだよ。『ちゅっぱ!』をしたのもだからなんだよ。それと、あだ名の事も気にしてたろ?・・・言うよ?ゴルゴル?」 「あ〜う〜〜」 「あれは真似でも、横取りでも、仲間はずれでもないんだよ。3プクの名前に“チ”がつけば、みんな一緒でしょ?ゴルッチは、そうしてジュンペチと・・、今のジュンペチと一緒の事が欲しかったんだよ。はやく仲良くなりたかったんだよ」 「そうだったの。ゴルゴル・・、ううん。ゴルッチ、ごめんね。そんな気持ちも分からずに、2プクを困らせて。ジュンペチは本当に相変わらずだね」 「へへっ。もういいさ。それよか時間がねぃよ。地球が下を向いちまう!」 「行かないで!・・・ううん、がんばって・・・・。がんばってね!きっとまた会える。ジュンペチはゴルゴルの中のジュンペチを信じるよ」 「おう!自分を信じることが、みんなを信じることに繋がる。オイラもゆくぜ!これが海と龍との繋がり。龍が空からおちてた理由なのだから。あぁ、あんなにも焦がれつづけた深空に、手が届きそうだぜ。青いな・・、さ青だ。」 青。 いつも胸をトクンとさせる色。 龍は青へと飛び立ってゆく。 一度だけ振り返ってくれた微笑みに、ジュンペチはとても安心をしたんだ。 つづく お話は来月号へ続きます。。。 |
JUN-P(仲 純子) 大阪在住ファンダイバー 職業:コピーライターとか 1994年サイパンでOWのライセンスを取得。 宝物はログブック。頁を開くたび、虹のような光線がでるくらいにキラキラがつまっています。 海に潜って感じたこと、海で出会った人達からもらった想いを、自分のなりの色や言葉で表現して、みんなにも伝えたいなぁ。。。と思っていました。そんな時、友人の紹介で雄輔さんと出会い、豪海倶楽部に参加させていただくことになりました。縁というのは不思議な綾で、ウニャウニャとやっぱりどこかで繋がっているんだなぁ・・って感動しています。どの頁がたった一枚欠けても、今の私じゃないし、まだもっと見えてない糸もあるかもしれない。いままでは、ログブックの中にしまっていたこと・・少しずつだけど、みなさんと共有してゆきたいです。そして新しい頁を、一緒につくってゆけたら嬉しいです。 |