ガイドのつぶやき 海辺のエッセイ 豪海倶楽部  

漂着

私が八丈に来た5年前、確か人口が9800人位いました。1万人を切ってしまったことが話題になっていました。8月1日現在、島の人口は8837人。この5年で約千人減ったことになります。人口はただダラダラと減っていっているのではなく、毎年3月にごっそり減ります。中学や高校を卒業した若い人達が、進学や就職のために出て行ってしまうからです。その後年末まで、特に夏の時期、島へ移住しに来る人や、Uターンして帰ってくる人がいても、減ってしまった人口を補える程ではありません。

高齢化が進んでいるこの島では、亡くなる方の数が多くて、生まれてくる子の数では補えません。この調子でいくと、2〜30年後には、がらーんとした寂しい島になりそうです。

私が八丈に来た5年前、クロメガネスズメダイは数が少なくてなかなか見られませんでした。その頃どっぷりと冷水塊に浸かっていたせいです。幼魚が見つかると、それだけで心も体も温まった気分になれました。それがここ数年は黒潮のおかげで通年見られます。しかも成長して大きくなった姿も珍しくありません。でも、どういうわけか、まだ求愛している様子や産卵の様子は観察できていません。クロメガネスズメダイの繁殖を見ることは、本来そう難しいことではないはずです。生息場所は通常のダイビングエリアですし、繁殖の時間帯も日中です。

繁殖するには、まだ数が少なすぎるのでしょうか? それとも、子供を産んで育てるには、彼らにとって何か足りないものがあるのでしょうか?

人間も魚も、たくさん八丈へ流れ着いてきます。どんなに流れ着く数が多くても、ここで生涯暮らしていこうと思えるような環境がなければ、増えてはいかないだろうなと思います。 八丈に足りないものは何でしょう?


水谷
水谷 知世

昭和40年代生まれ
兵庫県出身

一見、負けず嫌いで男勝りというイメージだが、実は繊細な女性らしい一面を持つ、頭の回転はレグルス一番!!の頼もしい存在である。(レグルス親方・談)

伊豆諸島・八丈島

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