ガイドのつぶやき 海辺のエッセイ 豪海倶楽部  

ブーン

父が転勤族だったせいもあって、引越しの多い人生でした。今までウンじゅう年生きてきましたが、改めて数えてみたら、ここ八丈に来たのは12回目の引越しでした。単純に平均を出すと、一箇所にとどまっているのは3年と少し。それがこの夏で、八丈暮らしが5年になりました。私にとっては記録的な長さです。

子供の頃、学校は何度も転校し、卒業後にも何度も引越しをしているので、どの卒業名簿にも「住所不明」。ほんの限られた友達としか連絡を取り合ったりしていないので、最後に卒業した学校の同窓生でさえも、私が今八丈なんぞで暮らしているとは夢にも思っていないでしょう。

それが、つい最近になって、私が卒業した小学校の同窓生が掲示板を立ち上げたというメールが届きました。見ると昔の写真が貼ってあり、それぞれが近況報告をしていて、ちょっとビックリ。私だけでなく、皆転々とした人生を送っているようで、現住所も広範囲。海外で暮らしている友達も多いようでした。

小学生だった頃、「私達ってさあ、30歳とか40歳になった時って、どうなってるんだろうね?」とよく話をしていました。少なくとも、今の私は、あの頃考えていた私には想定外の状態。だって、ダイビングの仕事なんて知らなかったし。

写真は、水深1〜2mくらいの明るいゴロタの上で、つい最近までたくさん見られていた幼魚です。金色に輝き、腹ビレをピーンと張って、まるで空を飛んでいくかのように泳ぎます。最初何の魚かわからなかったのですが、大きくなってきてツマグロハタンポなんだとわかりました。

ツマグロハタンポは、成魚なら大きなオーバーハングの中の暗がりや、洞窟の中で通年見られます。でも、まさかこの幼魚が、こんなに明るい場所で暮らしているとは夢にも思いませんでした。この子たちは、自分が将来穴の中で暮らすことは知っているのかしら。もっともっと腹ビレを広げて、明るくて広い海へ飛び立とうとしているように見えるのに。

私もブーンと八丈へ飛んできたんだけど、この先まだ飛べるのかなあ?


水谷
水谷 知世

昭和40年代生まれ
兵庫県出身

一見、負けず嫌いで男勝りというイメージだが、実は繊細な女性らしい一面を持つ、頭の回転はレグルス一番!!の頼もしい存在である。(レグルス親方・談)

伊豆諸島・八丈島

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