ガイドのつぶやき 海辺のエッセイ 豪海倶楽部  

親方賛歌

人を褒めるのって、難しいですよね。

以前勤めていた会社には、いろんな国の人達が周りにいたのですが、日本人て褒めるの苦手なんだなあと感じる場面がよくありました。いくら本当に感動したからって、目をキラキラさせて「素晴らしい!!」と拍手をしながら握手を求める…なんて、やる方もやられる方も、なんだか芝居がかってる感じがして気恥ずかしくないですか?

でもそんな中で、褒めまくる日本人がいました。私たちはその人を「褒め殺しの佐藤(実名)」と呼んでいました。私の上司でした。

彼は元々明るく愉快な人で、どんな些細な仕事の相談でも「こういう人が見過ごしてしまうような問題点に気が付くっていうのは、やっぱりあなたは素晴らしい人だよ!!」と言いながら、まるで名探偵が難事件を解決しようとしているかのようにメガネをちょいとかけ直し、「いいか? こういう事は、案外ちゃんと考えておかないと後で大変なことになるんだよ!!」と言うのです。

そんな彼の褒め癖は、お酒を飲むと何十倍にもパワーアップします。

お酒をよく召し上がる取引先からの接待なんぞ受けた日には大変でした。

「私はこの会社に勤めて30年になるけど、何が一番良かったって、皆さんのような方たちとお付き合いする機会が持てたってことが、本当に幸せだ!」

「皆さんにご不満もあるかも知れませんが、今の私たちはかつてないベストメンバーだと思いますよ! こんなに信頼できる部下達に恵まれて、私は良い会社にいるんだなぁ!」など、など…。

この絶え間なく降り注がれる褒め言葉と、間髪入れずに注がれ続けるお酒に、最後はほぼ全員が泥酔状態となり、翌日まともに仕事ができた試しはないのです。

今の上司は、全く逆です。上司というか、親方ですね。

私、彼ほど褒めてもらいたがる人を見たことがありません。

ガイドから帰ってくると

「ねえ、ねえ! こぉんなにちっちゃいフリソデのちびちゃん見つけちゃった!! すごい!?」

「ピグミー、別の場所でも見つけたよ!! すごい!?」

写真の現像があがってくると

「ねえ、ねえ!! 見て、見て!! 俺って写真うまい!?」

あのぉ。。。すごいです。お上手です。。。

「ねえっ! なんで豪海倶楽部に俺のこと書いてくれないの? たまには自分の親方のこと褒めなさいよ!!」

「はあ…。」

ごめんなさい、私が佐藤さんのように褒め上手なスタッフだったら良かったのに。

相手が有名な水中写真家だったり、魚類学の学者さんだったり、せめてお客さんだったらともかく、スタッフの私なんかに褒めてもらって嬉しいですか??

ここで「うちの親方のガイド、すごいです! 写真も上手です!」って書いても、店の宣伝みたいだし、何だか変じゃないですか?

どうしてもって言うなら…。

関係ないけど、うちの親方、手先が器用です!

手品も料理も上手です!!

イラストも可愛いです。レグルスのHPのイラストは全部親方が描いてます。

子供と粘土で遊んでいるうちに思い付いて作り始めた携帯ストラップ、ゲストに大好評です!!! 私もこんなに作ってもらっちゃました。

気が向かないと作らないので、リクエストはしないでください。

そうだ!

サカナの学名に、親方の名前が付いているのもあります。

本当は「すごいでしょ!?」って、いろんな人に言いたいみたいなんですけど、八丈ではそう簡単には見られません。

昨年、綺麗なオスが1匹だけ見られました。

メスがいないもんで、周りのベニヒレイトヒキベラやスジベラを追いかけ回すヤンチャ者でした。

まるで、こう言っているみたい。。。

「ねえ! ねえ! 僕、綺麗!? 褒めて、褒めて!!」


水谷
水谷 知世

昭和40年代生まれ
兵庫県出身

一見、負けず嫌いで男勝りというイメージだが、実は繊細な女性らしい一面を持つ、頭の回転はレグルス一番!!の頼もしい存在である。(レグルス親方・談)

伊豆諸島・八丈島

レグルスダイビング

〒100-1511
東京都八丈島八丈町三根1364-1
Tel/Fax:04996-2-3539

http://www.edit.ne.jp/˜regulus

レグルス