期間限定 スペシャルトーク 豪海倶楽部  

エビ・カニインサイドストーリーから続く海の事色々! 第11回

写真は、ハマクマノミの雄の卵の保育シーンです。クマノミは初夏から夏にかけて、だいたい25度〜27度の間の水温時に産卵する事が多いようです。夏の間に、28度以上に上昇した水温が台風や海況の変化で下がった時期も産卵したりするのですが、秋から冬に掛けての水温が下がる頃には、ほとんど産卵しないようです。クマノミ自身が、これから上昇するのか下降するのか、微妙な水温変化を体内のセンサーで、自然の摂理を感じとっているのでしょう。

ちなみに、養殖中のクマノミの水槽内では、水温調整により一年中産卵させる事が可能なのですが、仮に27度という基本温度があるとすると、25度から徐々に上げていき、自然界の春から夏にかけての状況を作り出しているためだそうです。逆に水温を下げていっての27度では、やはり自然界と同じで産卵しにくいそうです。

この事は、自然界でも言えることで、水温がこれから上昇するのか下降するのかの違いで、生物の繁殖行動にも大きく左右するようです。回遊魚などでも、初夏の27度あたりまでは、イソマグロも1.5m前後の大きいサイズのものが浅めに群れをなし、ギンガメアジもそれぞれがペアーでバラバラになったり小群れで分かれたりせずに、写真のように大きな群れをなし「トルネード」と表現したくなるほどの渦を巻きます。

それらの回遊魚達は、徐々に上昇する水温に反応してなのか、次第に水深を下げだしたり、それほど大きな群れを成さなくなったりします。シーズン通してイレギュラーはほとんど起こらないのですが、極稀に初夏の群れ具合に戻る事もあります。30度前後に上昇した水温が台風などで急激に下がり、それからゆっくりと上昇する時期には、再び初夏のようにイソマグロは浅めに群れ、ギンガメアジは大きな群れを成します。これは、回遊魚なども、自然化において水温の上昇を敏感に感じて、下がった水温が徐々に上昇するのを、「これから夏だ!!さあ、繁殖だ!!」なんて具合に、初夏の水温上昇時と誤解し群れ始めるものだと思われます。

1シーズンに2度美味しい期間はそうそうあるものではありませんが、トンバラポイントなどで、初夏のド派手なシーンの数々を目撃している僕としては、夏の30度近い水温に身体が慣れてしまい、例え水温低下が身に沁みようとも、台風後の急激な水温低下からのゆっくりとした水温上昇を願わずにはおれないガイドダイバーの性なのです。


川本
川本 剛志

1965年4月3日生まれ
福岡県出身

久米島でダイビングサービスを営むかたわら、ライフワークである、冬に訪れるザトウクジラや各種の魚類、サンゴ、ウミウシ、甲殻類の生態を写真に収め続けている。多数の図鑑雑誌に写真を提供し、エビ・カニガイドブック2-沖縄・久米島の海から-等の著作を持つ。

沖縄・久米島

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BY 編集部