南国通信 楽園からのらくがき 豪海倶楽部  

ペリリュースローライフのススメ

ペリリューなんてところに居ると、スローライフが身に付き、だんだん“ゆったり”とした人間になってくる。生活がゆったりと人の心のゆったりは連動すると思う。まあ、ゆったりと言っても僕らにはお客さんがいるので仕事のときはそうでも無いが、それでも、何て言うか、ふとした時に感じるゆったり感があるのだ。きっと島独特の時間の進み方というか、スローな雰囲気から来る感覚なのだろう。

スローを感じさせるのは時間だけではない。島の人たちだってゆったりしている。彼らは基本的に昼間何もしないことが多い。朝と、夕方にチョコチョコッと仕事をする。もっとも、給料をもらって仕事をしている人たちはこの限りではないが、基本的にそんな感じ。ダイビングに出てしまっていると意外に涼しいから気がつかないが、暑い日はペリリューの村あたりは日中気温が37度以上にも上がる。平らな島だから海岸の木が防風林になってしまって風が抜けない。日向に立っていたら熱射病で倒れちゃうほどだ。だから外で仕事なんて“出来ない”。出来ないからその辺でブラブラしてる。暑いから“うだる”し、ダラダラする。早く動くと暑いからスローになる。うーん、It’sスローライフ。

それに働かなくても、のどが渇けば椰子の実を取ってココナッツジュースを飲めばいいし、腹が減ったらマングローブクラブだって、ヤシガニだって、ウカエブ(オカガニ)だってあるし、椰子の果肉を食べたっていい。海に釣り糸を垂れれば魚が釣れるし、陸上には野生化している地鶏も山ほど居る。パラオでは高級食材のコウモリだってここでは特産だ。一応「畑」とは言われているが、ほとんど世話をしないその場所にはタロイモや、タピオカが生っているし、ジャングルにちょっと入ればバナナやパパイヤだって取り放題。食べ物に困らないのである。水は井戸があるからこれまたOKで、家なんか適当に立てても気温があるから凍えることも無い。そう、なんとなく自給自足が出来ちゃうのだ。だからあまりお金が必要ない。だからこの島は人が皆おおらかだ。ゆったりしちゃうのも理解ができる。

しかし、実際にこの場所に日本人として住むことになるといろいろ難しいこともある。地域の習慣、特に冠婚葬祭等の風習の違いや、無い物だらけの生活などを楽しめない人には厳しいかもしれない。ちょっと短期で遊びに来るならいいが、生活するとなるとそれはちょっと話が違う。でもそれもまた気の持ちようで、そういうのを工夫しながら生活できるようになればこの場所での生活は一転、楽しくて仕方の無いものになる。そんな島だからお金は全く使わない。貯金したい人向きの場所なのだ。そう、良いほうに受け止めればいい。現地での僕の唯一の散財はビールを買うことくらいだ。

今、この島で普通の日本人では経験できないような生活をしている。僕にとっては毎日がとても新鮮だ。でも、ここへ来てスローライフを送りなさいと言われても日本で普通の生活に慣れている人には難しいかもしれないなぁ、と思う。しかしこの贅沢な時間のすごし方に一度はまってしまうと、これがまたなかなか離れがたいライフスタイルになる。

スローライフというのは別にペリリューでしかできないという訳ではないだろう。自分の場所で、自分の気持ちの持ち方でスローライフは実現できると思う。スローライフとは、つねに自分の心の中にある概念みたいなものだと思う。そう、「自分の中のゆったり」を見つけられる人はスローライフを実現しているひとなのだろう。そんなことを考えながら今日もまた1日に感謝しつつビールを飲もう。乾杯。


秋野
秋野 大

1970年10月22日生まれ
伊豆大島出身

カメラ好きで写真を撮るのはもっと好き。でもその写真を整理するのは大キライ。「データ」が大好物でいろんなコトをすぐに分析したがる「分析フェチ」。ブダイ以外の魚はだいたいイケルが、とりわけ3cm以下の魚には激しい興奮を示し、外洋性一発系の魚に果てしないロマンを感じるらしい。日本酒より焼酎。肉より魚。果物は嫌い。苦手なのは甘い物。

ミクロネシア・パラオ

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