ガイドのつぶやき 海辺のエッセイ 豪海倶楽部  

第七話 カリビアンブルー(中編)

いわゆるカリブにおけるガイドダイビングの初日、その後今に至っても伝説扱い(鉄家において)されている「バックロール事件」が勃発した。(って、やっちまったのは自分ですけど)

海外では、ほぼ適当にブリーフィングを聞いている僕は、来るべきして、この時を迎えた。始めから話しを聞き流していた僕は、最後の「ヒァウィゴー」だけがシッカリと耳に届いた。嫌!届いてしまった。船縁に腰掛けて話しを聞いていた僕は、カメラを持ったまま“OK!Rock’n Roll”と言って消えた。

実は、このダイビングボートはカナリの大型船だったため、後ろのタラップからジャイアントで...とのご説明だったらしい。まさか、2m近い舷からバックロールで、しかもカメラを抱えてエントリーする奴は誰もいないだろうと、少なくともボートの上にいたスタッフ&ゲストは思っていたに違いない。船上に残された家内は、伝説にしたくなるような味わったことのない複雑な感情を受け止めながら、ほぼ飛び蹴りの状態で、ブリーフィングに従ってタラップからエントリーした...らしい。(爆)きっと、彼女のフィン先には、明確に僕のニヤけた顔のイメージがあったはずだ。

僕は、この旅で見たい!と欲している魚が2種類いた。スプレンデッドトードフィッシュとスポテッドドラムの幼魚であった。スポッテッドは家内が、スプレンデッドはガイドに教えてもらった。この魚を教えてもらった時、各々に面白いエピソードがオマケでついていた。親になると、単なる色違いのタカノハダイみたくなってしまうスポッテッドドラムであるが、幼魚期の背鰭が伸長している状態のカワイイことったら...ありゃしない!色こそモノトーンではあるが、カリブの極彩色の中にあって、このモノトーンの持つ意味の凄さと言ったら、放送禁止で言えない様な表現ばかりが浮かんでしまうので、書かないけれど(笑)初めてサラサハタの幼魚に遭遇した時の7倍以上の感動があった。

運良くなのか、悪くなのか?は気の持ち様でどうとでもなるので、あまり気にしないけど、その時はタマたまドームポートの中に14mmなんぞと言う、超メガトン級の広角をブチ込んでいたため、終始ワイドな被写体に徹していた。ダイビングも終わりに近づいてきた頃、何やら頭上からウナリ声のようなサケビ声のような、兎に角注意を促す声が聞こえた。見上げると、家内がマスクを曇らせ、半分水没させた状態で頻りにアピールをしている。「あぁ、日焼け止めなんか塗るからマスクが曇るんだよぉ!はい、はい、さぁマスククリアーして...」なんて、全く彼女の意図することと違う事を思い描いてしまった僕に、スポッテッドドラムの幼魚の存在を知らせるのは、非常に困難である。ラチが明かないと悟った彼女は、ついに両手で僕の頭を魚の方へ向けるという強行手段を講じた。

目がワイドモードになっている状態で、いきな6cm程度の幼魚はキツい。見えるのは、フラミンゴタンの付いたヤギやウチワばかりである。その中心付近で、何やら動くものがある。「うぉおおおっ!」水中で思わず唸り声を上げてしまった。勝ち誇ったような視線を送ってゆっくりと浮上にとりかかる彼女に手を合わせて感謝し、残りのフイルムに魂をこめた。

次のダイビングは、サンドウエーブにパッチリーフが連続するポイントであった。暫くすると、モレイとライオンフィッシュのガイドを得意とするメキシカンのサポートスタッフが僕の横に来て、何やらスレートに書いている。あまり期待しないで見ると“Sanddiver”と書いてあった。僕が、砂地にベッタリと伏せて写真を撮っているので、特有のメキシカンジョーク(ってそんなのあるの?)のつもりかと思ったら...エソの事だった。これこそ、出来の悪いアメリカンジョークの様な話しだった。そのスタッフが、やはりそろそろ上がるくらいのタイミングになって、物凄いスピードで近寄ってくる。また今度は何だ?と思いつつ、彼に連れられて、石灰岩の下を覗くと...○×△□*◇?!何と!ストライプのナマズがいるのではないか!写真こそ撮れなかったけど、ボートに上がってから、彼を絶賛した。


鉄
鉄 多加志

1965年生まれ
清水出身

生まれ育った環境が、都市部?の港湾地域に近く、マッドな環境には滅法強く、泥地に生息する生物を中心に指標軸が組み立てられている(笑)この業界では、数少ない芸術系の大学出身で写真やビデオによって、生物の同定や生態観察を行う。

通称「視界不良の魔術師」
静岡・三保

ダイバーズ・プロ
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