ガイドのつぶやき 海辺のエッセイ 豪海倶楽部  

第五話 シュクランブルー(後編)

部屋に入って、儀式のようにパッキングを解放して、カメラ機材をセッティングする。滞在中に余程のことが無い限りメンテナンスをすることはないので、念入りに古いグリスの拭き取りとグリスアップを行う。カメラのセッティングはバッチリ!だ。蛇口からの水は当てにならないので、大きなミネラルウォーターを買ってお守りのように傍らに置く。

明日から世話になるダイブショップで書類にサインをして、簡単な買い物をして、ホテルに戻ると、既に肌寒くなっている。Tシャツでは居たくない寒さというか、体感温度になっている。トレーナーを着てみたものの、下半身は相変わらず短パンとビーサンであった。周囲を見渡すと、如何に自分が愚かな存在かが一目瞭然であった。砂漠の気候は、以外に冷たかった。トレーナーに短パン、ビーサンで鼻を啜りながら、食べたピジョン(鳩)の料理は、香辛料は必要以上に強く刺激的だったが、味は自分の着ている衣服並みに薄かった。まるで、この地の平和を象徴するかのような味付けだった。

明けてダイビング初日は、ビーチダイビングだった。ビーチと聞くとバカにする人もいると思うが、ジープでかなりの距離を走ったあとに、砂漠の段丘から見える海を目の当たりにしたら、オアシスに辿り着いたキャラバンの気持ちが分かるくらいに感動する。「あぁ、僕の求めていた海はこれですね?!」と無抵抗に受け入れてしまう。

砂岩の切れ目からエントリーすると、見知らぬ青が迎え撃つ!初体験の自分は、いとも簡単に迎撃されてしまう。抗うとこなど出来やしない。レッドシーとは名ばかりの「真っ青」な海に、好き放題に翻弄される。これでもかっ!と言うばかりに振り回され、左脳がスッポ抜けたような状態で、エキジットした。

初めてのダイビングをマリアナブルーのサイパンで行った初心者のように、僕はスッカリとアラビアンブルーの海に曝露されてしまった。翌日のボートダイビングで、何故レッドシーがダイバーの三大聖地の一つに数えられるかを知った。きっと僕はダイバーになる時、この海に潜るためにCカードを取っているに違いないと思えるほどの、運命的な「青」である。自分がダイバーである事に感謝し、この海を維持しているアラーに目を閉じ深く頭を下げる。この海が、青が、いつまで続くかは、インシャラー(神のみぞ知る)である。きっと、イスラムの人々が信仰を忘れなければ、アラーはこの海を与え続けるに違いない。つまり、絶対に潰えることがないと、現地のスタッフは朗らかな笑顔でレッドシーの青さを語ってくれた。


鉄
鉄 多加志

1965年生まれ
清水出身

生まれ育った環境が、都市部?の港湾地域に近く、マッドな環境には滅法強く、泥地に生息する生物を中心に指標軸が組み立てられている(笑)この業界では、数少ない芸術系の大学出身で写真やビデオによって、生物の同定や生態観察を行う。

通称「視界不良の魔術師」
静岡・三保

ダイバーズ・プロ
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