ガイドのつぶやき 海辺のエッセイ 豪海倶楽部  

第八話 マッドベイ

暫く間を置いて、バリに出掛けました。目的は、ピグミーシーホースとシグナルフィッシュのS.P.を見る事でした。もちろん、三保と比較される事の多い“シークレットベイ”を潜りたおすのも目的の1つでした。

早々に目的を達成し、次のステップをどうしようかと、当時Dive&Dive'sの看板ガイド小川アキラと相談していると、彼からある提案をもらった。「どうでしょう?折角ガイド同志が潜っている訳ですから、新しいポイントの開拓をしてみては?」“開拓!”と言う言葉に少し反応。

ゲストを連れて行けないようなドロドロの場所で、興味深い生物がいる可能性が高いのだとアキラは続ける。「バリの初記録、2人で出しちゃいましょうよ〜?」“初記録!!”に強く反応!方向性は決定した。

やはりドロだ!(笑)翌日、ダイバーのパラダイスであるムンジャガンに背を向けて、真逆に位置する生物の天国へと船を向かわせた。闇雲に潜ってもドロに塗れるばかりで、初記録どころじゃなくなってしまう。ある程度の指標生物を決めリサーチを開始した。いきなり、リボンゴビー、スカーレットバンドフィッシュ(アカタチの仲間)、ゴールデンタイルフィッシュ、フラッグテールダートゴビー、その他不明多数!!

ガイドの眼力とは、恐ろしいものである。もちろん、そのポイントのポテンシャルの問題もあるが、こんなにも簡単に歴史を塗替える事が許されて良いのだろうか?嬉しい悲鳴がこだまする。こうなると、歯止めがまったく効かなくなる。ブレーキの壊れた暴走機関車状態!殆ど視界がない状態にもかかわらず、ヤバイくらいに攻め捲り、窒素のゲップが出るほどだった(苦笑)

これほどハマったガイド同士のコラボレーションダイブは今のところ、後にも先にもない。それこそ歴史に残るダイビングになってしまった。ドロドロのシークレットベイは“マッドベイ”と言うポイント名で、エキスパートなゲストに対して公開されているらしい。既に楽しんで、ハマったゲストからの話しも多数うかがっております。

☆☆☆☆& (^-^)(^-^)(^-^)(^-^)


鉄
鉄 多加志

1965年生まれ
清水出身

生まれ育った環境が、都市部?の港湾地域に近く、マッドな環境には滅法強く、泥地に生息する生物を中心に指標軸が組み立てられている(笑)この業界では、数少ない芸術系の大学出身で写真やビデオによって、生物の同定や生態観察を行う。

通称「視界不良の魔術師」
静岡・三保

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