南国通信 楽園からのらくがき 豪海倶楽部  

チューク諸島の海から

ある日我が家に、日本のTV局からの取材依頼が飛び込んできた.『ポカポカ地球家族』という番組だ。ここチュークでは、日本のTV放送などは全くない。従って我が家のメンバーはこの番組の事は全く知らなかった。海外に生活する家族が対象で、家族そろって元気に過ごしている姿を現地の情報を交えて放映するらしい。チュークの宣伝にもなるし、願っても無い事だったので、早速TV局からの質問に答えてOKのサインを送る。人前に出る事が苦手な我が奥様と高校生の次男坊は早くも難色を示している。末っ子のヒロミと私はルンルンである。

その後のやりとりでかなりの密着取材になるという事で、妻・かほるの頭の中はますます重くなってくる。私とヒロミはその度にニヤニヤしている。いつもは、第三者的な立場から取材コーディネートをやる私だが、今度は自分の番組のためのコーディネートである。うちの家族の様子、子供達の学校の様子、私の仕事の様子、お客様の取材、チュークの美しい景色等が主な撮影内容だ。

いつもは、妻のかほると一緒にとりとめのない会話をしながら仕事をしたり、買い物をしたり、と行動するのだが、今回ばかりはそうもいかない。常にマイクが仕込まれており、私達の会話はカメラマンに筒抜けである。ついうっかりととんでもない事をしゃべったりしてしまう。次々と質問やインタビューが飛び込んでくる。いつもお客様のガイドをして会話に慣れている私とは逆に、妻のかほるはいつ自分にマイクが振られるかと、ドキドキらしい。

家族の風景の一環で、1日海に出た。私達家族が時々やる海での遊びだ。午前中は釣りをして、お昼にバーベキュー、午後はのんびり無人島で遊んで帰ってくる。この日も無人島に上がる前に釣りをした。

今日は家族のためのフィッシングガイドである。なんとかお昼に焼いて食べる魚を確保した。しかし、この程度の釣りでは私も家族も満足しない。久しぶりの釣りということで、ヒロミとユウがてぐすねひいて待っている。ましてや今日はカメラが回っている。取材コーディネーターの私としてもちょっと気のきいた映像が1枚欲しいところである。波をおして外洋に出た。アウトリーフの際をトローリングする。まずは次男のユウがロッドを握る。程なくしてかなりの大物がヒットした。ロッドが大きくしなる。魚が何度も何度もジャンプする。1.5mはあろうと思われるバラクーダーだ。使い古したポンコツのリールが悲鳴をあげている。しかし、ユウの釣りの腕前は大したもので、それでもなんとかだましだまし魚をボートの近くまで寄せてきた。しかし、その瞬間サメの猛攻を受け、せっかくの魚も目の前でサメの餌食となってしまった。

今度はヒロミの番だ。私がヒロミのロッドにちょっと大きめのルアーをセットし始めた時、ヒロミはそれを嫌い、自分の納得のいくルアーを指定してきた。この子はいつもそうで、自分が納得しないと大人にも耳を貸さないときがある。ヒロミが指定してきたルアーは私も使おうかどうかと迷っていたルアーだった。

時間が流れる・・・・。誰もがそろそろ・・・・と思ったとき、ロッドが大きくしなった。さあ、ヒロミにヒットした。軽快なロッドさばきでどんどんと魚を寄せてくる。上がってきたのは、4キロ程のカスミアジ(ヒラアジの一種)だった。チュークで釣る魚としては大したサイズではないが、ヒロミが釣るサイズとしては上出来だ。しかも今日の釣りとしては願っても無い最高の魚だ。

この日の夕食は家族揃っての夕食風景を撮影する事になっていた。取材コーディネーターの私としては、この釣りでなんとか今夜のメーンディッシュになる魚を狙っていたのである。カスミアジなら言う事はない。刺身、塩焼き、フライ、から揚げ、潮汁となんでも来い!の魚である。ヒロミのお陰で今夜もいい仕事が出来そうだ。

我が家の役割分担は、日本の一般家庭とちょっと変わっている。子供の勉強、掃除、洗濯、家の片付けごとなどは妻・かほるの仕事だが、食事を作るのは概ね私の仕事である。特に魚関係は必ず私が包丁を握る。当然、この夜の夕食会はカスミアジのフルコースだった。取材班も一緒にカスミアジの料理に舌包みを打つ。家族揃っての夕食はやはり楽しい。何物にも替え難い。

最近の日本のニュースを聞く度に、人間不信に陥るような出来事ばかりが目立っている。友人や隣人、親族の間ですら、醜い事件が後を絶たない。そんな昨今の社会を見ていると、家族が幸せに過ごせる事がいかに大事な事であるかと思い知らされる。今回のテレビ番組を通して、南の小さな島で元気に暮らす日本人家族があることを見て頂きたい。


フェイリフ

ヒロミとカスミアジ

南の島の小さな家族
チューク諸島

末永卓幸

私達家族の放映日は、2月5日(土)午後6時30分『ポカポカ地球家族』です。


末永
末永 卓幸

1949年1月生まれ
長崎県対馬出身

立正大学地理学科卒業後、日本観光専門学校に入学・卒業。在学中は地理教材の収集と趣味を兼ねて日本各地を旅する。1973年、友人と4人でチューク諸島を1ヶ月間旅行する。1978年チューク諸島の自然に魅せられ移住。現地旅行会社を設立。現在に至る。観光、ダイビング、フィッシング、各種取材コーディネート、等。チュークに関しては何でもお任せ!現地法人:『トラックオーシャンサービス』のオーナー。

ミクロネシア・チューク諸島

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