潜るコピーライターのアンダーウオーターズポエム 豪海倶楽部  

母の海。

我が子等が・・憎しみ殺し合う様を、微笑んで見る親があろうか?
人はどうして気付かないのだろう、我が個の命は根底の大いなる源でひとつであるということに・・。大地の裏で砕ける波と足元をそよぐ波の、何処に違いがあるというのか?繋がっていない海があるのか?地球という珠の上、境目などは、ない。

“ブライアン・サイクス著(大野晶子=訳)「イヴの七人の娘たち」”の頁をめくれば、DNA鑑定技術が進んだ現在、人類が過去へ遡る旅に成功したという事実に触れる。人間の細胞の中に棲むミトコンドリアDNAという遺伝子は母から娘へ、そしてまたその娘へと受け継がれてゆく。結果、母系を逆にたどることにより約15万年前のアフリカ・“ミトコンドリア・イヴ”に巡り会えた、というのだ。イヴの魂は七人の娘に受け継がれ現人類の母達となり、地球という大きな家族をつくった。そう、全ての地球人はこの一人の母から生まれた・・・。

遥かの母達は命を抱いて海を渡った。生きるため、愛を蒔くために海を渡った。
だが海は険しい事もあっただろう。高波に、足をすくわれた時に悔しさを拾う。真っ黒な夜のうねりに不安を拾う。子を一人・・奪われた時に憎しみを拾う。

愛ゆえに憎悪の念はあるという。人は狂おしく人を求め、失った時、倍の情熱をもって否定をする。そしてその感情を正当化するためには手段を選ばない。人を殺す、奴を殺したと笑うだろう。愛犬が死んだ、親友が死んだと嘆くだろう。では虫を殺したら?・・・何も感じないのではないだろうか?虫は個ではなく、一つの塊としてその命を括られる。例えばどの蟻を殺しても、蟻はただの蟻なのだ、人と比べて虫が小さな命でしかないという理由で。

我がもの顔で地球を所有する人間。もし全能なる神が居られるとするならば、地球は神の創った貴石でしかない。青を汚す人間を蟻のように一括りに駆除することは、たぶん、容易い。

母はただ待っている・・。永い生命の駆け引きで薄れていった素朴な感情が思い出されることを待っている。母が海で拾ったものは、暗い感情だけではない。生まれくる朝陽から感謝を、溶ける太陽から慈しみを、水面に映る月の姿からは希望を、そしてなによりも、海を越えてくる風のささやきには、遠く離れた家族同士がお互いを思いやる声を聴いた。遥かから、すべてはここで繋がっているのだ。

だが子等は兵器を抱いて海を踏む。
我々は、海を透し・・・貴石を眺める神の目を見つめ返す事が出来ないだろうか?

母の想いが泡から降った。。。


仲
JUN-P(仲 純子)

大阪在住ファンダイバー
職業:コピーライターとか

1994年サイパンでOWのライセンスを取得。

宝物はログブック。頁を開くたび、虹のような光線がでるくらいにキラキラがつまっています。

海に潜って感じたこと、海で出会った人達からもらった想いを、自分のなりの色や言葉で表現して、みんなにも伝えたいなぁ。。。と思っていました。そんな時、友人の紹介で雄輔さんと出会い、豪海倶楽部に参加させていただくことになりました。縁というのは不思議な綾で、ウニャウニャとやっぱりどこかで繋がっているんだなぁ・・って感動しています。どの頁がたった一枚欠けても、今の私じゃないし、まだもっと見えてない糸もあるかもしれない。いままでは、ログブックの中にしまっていたこと・・少しずつだけど、みなさんと共有してゆきたいです。そして新しい頁を、一緒につくってゆけたら嬉しいです。