ガイドのつぶやき 海辺のエッセイ 豪海倶楽部  

ところ変われば?

先日、テレビで面白い話をしていました。

人の「顔」の話しです。
ご覧になった方もいらっしゃるでしょうね。

日本人は欧米人と比べると比較的顔の彫りが浅く平坦な顔つきの人が多い。これは、今更言われなくても見ていてそう感じます。そして、欧米人と比べるとウィンクが苦手な人が多く、ウィンクが苦手な人に限って耳垢がカサカサに乾いている人が多いのだそうです。ウィンクはともかく、耳垢なんて他人のを見せてもらう機会なんてありませんから、そんな違いがあったの…と、ちょっとビックリ。そんなことを調べた人がいるということにもビックリしましたけど。そして、これらのことは全て、私たちの祖先がどんな環境で暮らしてきたか、ということに起因するのだそうです。普段、他の国の方に接するとき、顔かたちや体色、あとは生活習慣のようなことにばかり目が行きますが、生活環境って脳の働きや体内の細かい部分にまで影響しているんですね。渡航中に使用した現地の日用品や薬、外国ブランドの化粧品が体に合わないことがあるので、体質が違うのだろうなと思っていましたが、具体的に説明されると目からウロコです。

魚の場合、どうなんでしょう?
ちょっと飛躍しすぎているかも知れませんが。

魚は住んでいる場所によって体色が違うということは、ダイバーにはよく知られています。地域変異と言われています。たまに、同じ魚とは思えないほど違うものもあります。豪海ライターの中にもいらっしゃいましたっけ。日本語上手ですね、って言われちゃう日本人のガイドさん。同じ日本人に見えないんだもん♪ 逆に、こんなに違うのに同じなの!?と思っていると、いえ、実はホントに違う魚でした…というのもあるみたい。

今年の2月、そんな魚の1つに会うことができました。

それはヨコシマクロダイ。

幼魚だけは、八丈でも水温が高い時期に、たくさん見られます。こんなにたくさんいるんだから1匹くらい越冬できるだろうと期待しても、冷水塊がやってくると見事に全滅します。まさに死滅回遊魚。スズメダイのような形をして、黒と白の横縞模様、尾びれが淡い黄色です。

このヨコシマクロダイを「日本の海水魚(3版第6刷)」で調べてみると、幼魚から成魚まで、1種で8枚もの写真(半分が雄輔さんのだ♪)が掲載されています。注目したいのが、この幼魚の写真。頭の部分が美しい青紫で白い縞が上品に細いもの、縦縞のもの、縞のないもの、が載っています。特にこの青紫っぽい幼魚、似てますが、断然八丈のものより美しい! 図鑑の幼魚の方がどうして美しく見えるかと言うと、白い縞の輪郭がきりっとしている、白以外の部分が濃い黒ではない、黒い縞が背びれにはない、頭部が美しい青紫色をしている、といったことからでしょうか。感覚的に言うと、はんなりとした淡い上品な色合いをしているから。

いつか八丈でも、この色彩のヨコシマクロダイが見られるのではないかと、一生懸命探していました。残念ながら、まだ八丈では見ていません。 今年の2月に見た場所は、フィリピンのアニラオです。

かなり嬉しかったです。

コンデジしか持っていなかったのですが、ゲストを差し置いて必死で撮ってしまいました。

あまりにも嬉しかったので、帰国してから、自分の写真を眺めながら改めて図鑑と見比べてみました。そしたら、新しく出たハンディ図鑑「日本の海水魚」には、ヨコシマクロダイだったはずのものが「ヨコシマクロダイ近似種」になっていて、違う学名が付いてるじゃないですか。

あら? ヨコシマクロダイじゃなくなっちゃったの??

そこで、「ヨコシマクロダイ」をネットで画像検索してみると、八丈と同じ色のヨコシマクロダイがいっぱいヒットしましたが、近似種の写真もヒットしました。撮影地は串本や沖縄です。国内にも数少ないながら生息しているんですね。で、この写真を撮った皆さんも私と同じように、これはヨコシマクロダイだと思っているわけです。バリのサイトでは、両方の色彩の魚の写真を並べて、両方とも「ヨコシマクロダイ」として掲載していました。

最後に「魚類写真資料データベース」を検索してみました。

すると、さすがに、ちゃんと区別されていましたよ。なんと近似種には「レッドフィン・エンペラー」という立派な英名が付けられていたのでした。成魚もヨコシマクロダイに似ていますが、ちょっと日焼けしちゃったような色合いで、いかにも南国風。

何か違って見えるけど同じなのか〜と思っていた魚は、地域変異ではなく、本当に違う魚だったのでした…。日本にもいるのですから和名が付くと良いですね。

国内ダイバーの皆さん!
もっとレッドフィン・エンペラーの写真を撮ってブログに載せましょう!!


水谷
水谷 知世

昭和40年代生まれ
兵庫県出身

一見、負けず嫌いで男勝りというイメージだが、実は繊細な女性らしい一面を持つ、頭の回転はレグルス一番!!の頼もしい存在である。(レグルス親方・談)

伊豆諸島・八丈島

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