デジタル談義 その12 豪海倶楽部  

【ゆ】

続5Dハウジング

先月の本部での取材は、デジタルカメラのテストがメインでした。ハウジングも新しいです。似たように作ってはいても操作部も多少なりとも、違うわけで、海で使うと本当にとまどいます。水中写真にとって慣れた器材というのは、本当に大きな部分なのだと、毎回思うのですが、どちらかというと、新しいものに換えていっちゃうタイプです。

【こ】

ハウジング、前回の不具合は解消されていますか?

【ゆ】

大部分は・・・絞り、S-速度はまだです。いろいろなハウジングを再確認しましたがイノンなど、小さなギアをかましていて、操作感もいいですが、ずいぶん回さないと変らない。僕のは速い、一長一短ですね。

深場は45m程度までしかテストしてません。多少操作感が固くなりました。

【こ】

道具を練り上げていくのって楽しいですよね。プロの場合、そんな悠長なことは言ってられないでしょうが。

【ゆ】

適正露出

さて現場で使ってみての感想というか問題というか・・・

まず問題点の第一、現場ですぐ撮影結果が見られるのはいいですが、適正露出がわからない。ノートパソコンしかないですから、ヒストグラムで見るしかないわけですよね。そこで、もう1回この辺の解説をお願いできないですか?

ま〜失敗露出も、僕の場合それほどは大きくないので、画面上では簡単になおるのが多いですが、画面上ではなく、実際にどの範囲なら適正といえるのか?

【こ】

RAWデータ(素材)としての適正露出はわりとはっきりしていて、ヒストグラムで「白とび・黒つぶれが極力ない」と「ヒストグラムの山はできるだけ中央に位置して、とんがった険しいものではなく、できる限り左右になだらかに広がったもの」ですね。

まぁ、前者に関してはRGB別のヒストグラムが見られるカメラでないと色の飽和に関しては見逃してしまうことがあったり、後者の条件は被写体とその状況で例外も多々ありますけど。

【ゆ】

その後、撮影したデータを、上記条件で見直してみると、僕の5Dのモニターでは、かなりオーバー目が適正かな(真ん中の明るさ設定で)、ヒストグラムが1番真ん中、中心に集ってるのより、少し左側中心の撮影になってるようです。おいおいわかるようになってるでしょう。現在の結論からいうと、デジタル、フィルムの露出差はないと、考えてよいですね。あたりまえか!

【こ】

表示してあるISO感度と、実効感度とのズレはモデルごと、メーカーごとにズレはありますけど、それはフィルムの時代から当たり前のことですしね。

またカメラのモニターは明るさを変えられるので、調整するのも一考です。

【ゆ】

買う前に、デジタルが、かなりピーキーなむずかしいものって聞いてたけど、うーんぜんぜん感じなかった。

【こ】

初期のモデルで、jpegで、というのと、5DでRAWで、というのではもう隔世の感があるわけですよ、実際。

また、5Dの場合、画素面積/画素数=画素ピッチが現在のデジタル一眼の中でもっとも大きく、これはラチチュードにものすごく大きく影響する数字なんで、かなり有利な面もあったりします。

【ゆ】

ひとつ「?」って思ったのは、適正露出と判定された画像は、一見オーバーに見える印象があったことです。しかしよく見ると、どこも破綻していない。どういう意味かというと、コースケさんのいうとおり、白飛び無し・・・

で、撮影モードは忠実ニュートラルの、コントラスト、シャープネスのかかってないものなので、5Dの僕の場合、これにコントラストをちょいつけると、かなりポジの印象に近くなる。さらにチョイ暗めにするとポジの印象に近くなる、感じです。個人差はありますが、主要被写体を浮き上がらせるため、背景など少し押さえるのが好きだし、この世界の常識的適正露出になっているんでしょう。

もっとも、時代はかわって、明るく可愛い印象のための、ハイキーオーバーな写真のうける時代ですが、やっぱり、素材としてみれば、白飛び無し、黒つぶれ無ししか、正解はないんだよね。そこから、作れる部分が多いので。

ポジの時代、逆にまずポジで見る、見せるということに、みんな振られすぎているんだろうと思います。

【こ】

なかなか「高彩度・高コントラスト」なポジで慣れている人が、「素材としての適正露出」に目を向けないんですけどね。

実際には「白飛びなし、黒つぶれなし、ヒストグラムの山は左右になだらかに広がったもの」というのは結局コントラストがかなり弱めなんですよね。

【ゆ】

あとノートでみて、あまりにオーバーの眠い写真で、心配になり撮影済み画像を、信頼できる筋に送って適正かどうか確認したり・・・ドギマギはしましたが、今うちのマックでみて、一安心・・・かな。いまいち自信ないけど・・・

ノートがダメなのは理屈でわかってるので。うちのマックとの差を覚えていくつもりですがもう少し、常識的な差にしたい。

あのエプソンのストレージはどうかな?

【こ】

RAWで撮っていれば、個人的には「いまいち自信ない」程度のものは、「あとから何とでもなる」し「何とかした痕跡もまず残らない」というのが実感です。(もちろんこのあたりの感覚も個人差がありますが)

雄輔さんのノートパソコン、確認していないんですが、最低限(+α)の画面の調整はついていないですか?・・・自分のノートはかなり細かな調整ができますけど。(もちろんノートパソコンだってキャリブレートできますが)

できるならば、おうちのマックと並べて、同じデータを表示してできる限り同じように見えるようにノート側を調整していくとかなり解決すると思います。

エプソンのは「綺麗に見える」という評判ですが、写真家にとっては「撮れているかどうかの確認」程度かと思いますよ。

【ゆ】

このへんも、できれば近いかんじが、楽しいし、うれしいね。おいおいやりたい。

人間って、見えるものにひっぱられるよね〜俺プロなのに、少なくとも、自分のパソコンで見えるものがすべてではないということを、頭にいれとかないと・・・

【こ】

上級機種になればなるほど「素材」であるという観点から、眠めの絵がでてきますからね。

「色かぶり」に関しても、人によって「記憶している色(温度)」を再現すると、結構ずれるかと思います。まったくの自然光で自分の目で見た色に引っ張られるか、ライト(ストロボ)の当たっている状態での色に引っ張られるか・・・もっと言えばフィルムで撮った写真(プリント)の色に引っ張られる場合もあるかと思います・・・日ごろ見ている印刷物(プリント)がデフォルトになっちゃうわけです。

RAW→現像という工程を経る限り、どこまで色かぶりを取るか(残すか)という問題はずっと付きまとうと思います。

【ゆ】

陸上の写真以上に水中はめちゃくちゃ個人差は多いだろうね。ある意味色は幻想でもあるし、やり過ぎの色はやだけど。これはそんなにシビアではない。自然のカメラマンというスタンスだけ守るだけだね。

【こ】

そうなんですよね、幻想に近いものがあるかと思います。

何度も触れていますが、水中写真を撮る人に限らずダイバーって「ベルビア色」に慣れちゃっていますし・・・雑誌的には見栄えが良くていいんでしょうけど。

先日、「水中でモニターが赤っぽく見える」というお話しがありましたが、あの原因は「水中の赤がほとんどない世界の中で、人間の目が赤に対して敏感になっている(増幅している)。その状態のときに通常の光のバランスのモニターを見ると赤がきつく見える」としか考えられないんですよ。

のあたりの「人の目の自動補正」も考慮に入れなければいけないと思います。かなりあいまいな「記憶色」。

【ゆ】

あ〜そういうことか〜〜〜!!

赤のない世界で、なんで赤く見えんの!ってびっくりしたんだ!!故障?なんかの設定?なんてな〜〜あはは、俺の場合、幻想かもしんないけど、深場でも赤がみえる?度が強いはず・・・

だってさ、モニターがあまりに赤いので、ホントびっくりしたんだ、なんだーーーって、目が出血してる?なんて・・・

【こ】

自分も時々あって不思議に思っていたんですよ。故障しているわけではないですし。ただまぁそう考えると理屈に合うので、たぶんそのあたりが正解だと思います。

【ゆ】

ピント

ピントの見方もわからないですね。

いままでは、8倍ルーペでみて、このレベルのピンならこのくらい問題なしって、体験的に判断できたんで、4倍でみて、合ってるようにみえても、8倍でみるとピンあまの場合あるでしょ。

そんなのも4倍でみて、微妙なずれもわかるんだ。ピントって同じルーペで見ていてもどんどん、厳しく見えてくるんだよね。訓練なんだろうけど、だから、どう基準を置いていいかがわからないんだ。

【こ】

「ガチピン」は「ガチピン」でしかないわけで、結局どこまで「甘目を許容できるか?」なんでしょうけど、このあたりはいろいろな印刷解像度でいろいろな大きさでプリントしたものを見比べなくては、感覚として捕らえることは難しいかもしれないですね。

【ゆ】

そうかもね。それを早くつかまえたいだけなんだ。それにしても、デジタルを、モニターで見てみると、ガチピンがあるじゃないですか!!

だから、ガチピン以外は捨てか〜〜!!??なんてびびりました。正直。甘めの許容範囲をつかむのも必要なんで。

【こ】

ピントに関しては厳しくなりすぎると泥沼に入っていくと思います。本当の「ガチピン」があまりにも素晴らしいですから(笑)。ただ、許容範囲に関してはやっぱり「それをどの大きさで印刷するか」(+どこまでシャープをかけるか)によって違ってきますので、これは経験とかトライアンドエラーでつかんでいくしかないですね。

やっぱりプリンターも必要ですよ(笑)。

【ゆ】

うん、買うよ。少しまじめに?写真だすときは、プリント見本が必要になりそうだ。このへんはまいる。

でも印刷所も、一時、おじさんの色の見られる人達が「いらない」なんて言っていたのが、やっぱり必要だということになってきているようです。さらに将来はわかりませんが。

こういう人達がホントありがたいんすよ、トホホ。

【こ】

インクジェットプリンターとプリントする人のスキルの進化でしょうね。

プルーフ(色見本)として、インクジェットから出力したものを使うことが全く一般的になってきて、プルーフ用のインクジェット用紙も出てきていますから。色見本を自分で作りこめる、ということはある意味、厳密な仕事にとっては歓迎すべきことですけどね。

ただ、モニターに関してもいろいろ「お勉強」が必要だったように、プリントに関してもいろいろと勉強すべきことが多いですよ。どちらも「カラーマネージメント」という点では同じですから。

【ゆ】

これを聞くと、画面であるレベルにみえる=そのレベルでプリントが作れる=印刷が可能なのかもしれないですね。つまり、画面で30cmの大きさにして、ピンがきてれば30cmに印刷してピンきてるのかな〜〜?

【こ】

画面が96dpi、一般的な商業印刷が350dpi・・・つまり画面で見ている96/350=大雑把に1/4のサイズならリサイズせずに印刷できるので、ピント関連で言えば画面での確認で十分だと思います。

【ゆ】

あ、そうか〜それでいいなら、4倍にしてみれば、いいわけだな。マックの整理ソフトにはなんかそんな機能があんのかな?

フォトショCS2にはあんのかな?

【こ】

いや、そんな単純なものではないんですけど(笑)。

フォトショップには結構前のバージョンから「ズームツール」のなかに「プリントサイズ」で見る機能が付いています。


(フォトショップ7.0のものです)

ただこれは一度プリントサイズを指定して保存しないとちゃんと機能しなかったかと思います。

【ゆ】

CS2もやはり必要かなぁ・・・写真整理に有利だそうで、なぜかはまだしらんけど。

【こ】

1年半ごとに出るフォトショップの最新版は、カメラマンにとってはアドビに対する「お布施」程度に考えてもいいかと思います。何よりもフォトショップ(の中のCAMERA RAW)で現像ができる、というのは大きいですよ。(CSでは5Dに未対応)

写真整理にはフォトショ付属の整理ソフトで、RAW現像もできる「Adobe Bridge」が使いやすいということでは? 確かに自分も事実上これだけで写真セレクト→現像をしていますが、便利ですよ。(「Adobe Bridge」は確かCSにも入っていましたけど、CS2になった段階で、かなり進歩しています)

ただ、前にも少し触れましたが、もう少しこの用途に特化した「Adobe Lightroom」というソフトがもうすぐ出ます。ベータ版を入手しましたが、現像過程で「Before」と「After」の両方を見ながら現像できるところが便利かも、ですね。現像機能自体は「Adobe Bridge」とほぼ同じです。(まだ英語版だけなんで、使いこなしているとは言いがたいんですが)

ばかでかいスクリーンショットをつけましたけど、これが24インチ(1920×1200)の大きさです(笑)。(ブラウザで開くと縮小して全体が見えるようになりますので、原寸で見てみてください)

雄輔さんの場合、マックなんで「Aperture」という競合ソフトが既に発売されていますね。

まだ英語版しか出ていませんが、こちらも選択肢に入りますね。ただフォトショップとの連動性で言えば「Lightroom」でしょうね。

【ゆ】

パソコン

しかし今回40GB程撮影しましたが、データ量がでかくて、たいへんだ〜〜

【こ】

とりあえず撮ったRAWデータを現像ソフト上に展開するだけでも、非力なパソコンだとものすごく時間がかかってしまうわけで・・・それが自分なんかは600万画素ですけど、1200万画素の5Dだとさらに単純に言えば2倍の時間がかかってしまうわけです。今まで折に触れてはパソコンに関して言及してきましたけど、ちゃんと効率的にやろうとすると必然的に「パソコンとその周辺から」ということになってしまうんですよね。保存だってしかりですし。

【ゆ】

DPP(キャノンのソフト)でセレクト画面にいったとき、ピントが合うのにかかる時間が、一番改善したい部分です。うちのMACでみて1秒ちょい?、たしか、ノートだと5−6秒かかってた。ここが現場で1番時間の無駄になりました。

【こ】

荒い画像が一度出てから、精細画像になるまでの時間ですね。

実はこのあたりの処理時間はパソコンの能力だけではなく現像ソフトによって全く違うので・・・確かDPPはいろんなところでかなり遅かったような・・・。

自分が使っている範囲ではCAMERA RAWが一番速くて、LightRoom、DPPの順番ですね。

【ゆ】

ホント!じゃ〜DPPで見てたから、次回はCAMERA RAWで見てみよう。

【こ】

CS2が必要ですよ(笑)。

【こ】

まとめ

ニコンのD80、キヤノンKiss-D Xが発表されたり、サムスンから10万円台後半で20インチのAdobeRGB対応モニターが出てくるお話しやら、実はもうできているネクサスの30D用ハウジングの話題もあったのですが、長くなりましたので来月ということで。

【ゆ】

いや〜字にすると、むずかしいですね。案ずるより・・・です・・・勉強中につき忙しいので、これだけ・・・

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