南国通信 楽園からのらくがき 豪海倶楽部  

南北縦断サファリ(前編)


南北縦断サファリに行った。毎年春に数本行うスペシャルツアーで、コロールから出発して北のカヤンゲル環礁から南のペリリューまで、潜りながら移動する5泊6日のダイブサファリだ。

元々カヤンゲルもペリリューも10年以上前から日帰りで潜りに行っていたのだが、日帰りだと時間が足りなくて遊びきれない。いつも腹七分目くらいで満足がお腹いっぱいにならない。もっとゆっくり遊びたいという気持ちが積もっていた。

そして04年からカヤンゲルは春のツアー、ペリリューは秋のツアーと1泊しながら潜るオーバーナイトをやるようになった。そして僕がペリリューへ行っていた06年に、この豪海にも書いている遠藤が日本事務所の原山と、この2本のツアーをまとめて現在の南北縦断サファリが完成した。

ペリリューはペリステが出来てから気持ち的にずいぶん近くなったけど、カヤンゲルは未だにそうでない感じがする。距離は確かにそうなのだけど、距離よりも来る回数の少なさによるイメージなんだろう。

そんなカヤンゲルは環礁の中には4つの島があって成り立っている。人が暮らしているのは一番北の1島だけで他の3島は無人島。僕らは有人島に泊を取るのだが、その本島に上陸する前に他の無人島で遊んでから行く。この無人島のビーチが綺麗で海鳥も沢山いて、遊んでも写真撮っても、とにかく何してても楽しい場所なのだ。

島には上下水道なんてものは存在しない。水は井戸、トイレ、シャワーだって今でこそ完備されて便利になっちゃったけど、去年までは昭和30年代の日本の田舎みたいなノリだった。まさにサバイバルって感じで僕は好きだったんだけど。

島で民家を一件借り切って泊まる。といっても大広間に茣蓙を引いてみんなで雑魚寝。BBQでしこたま飲んで寝ちゃうから、まあ別に問題はない。子供のときに行った林間学校みたいな雰囲気があってまさにキャンプって感じが気分を盛り上げてくれる。僕は何故かいつも、ここに転がるとなんとも言えない満足感というか幸せな気持ちになる。

カヤンゲルの海のことにも少し書こう。前述したが、ここの海は僕らガイドでさえ年間のダイビング回数が他のポイントと比べると桁違いに少ない。だから未だに緊張する場所になる。ペリリュー並みにギャンブル性も高かったりするので、正直やり難いったらありゃしない。ま、ペリリューは近年データが集まってきているから、そういう意味ではペリリュー以上なのかもしれない。だから面白いというのもあるのだけど、それでもガイドする方はホンットに緊張する。潜る前には胃がキリキリする。(笑)

でも、ここの海ならではの面白さがあって、例えばかなりの高確率で見ることのできるシルバーチップシャークとか、シーズンになるとここにも出てくるイレズミフエダイの大群とか。ペリリュー以上に体のデカイ ロウニンアジや、さらにタマカイやカジキは突発的にでてきて僕らを喜ばせる嬉しい大物となる。上の写真はこのツアーの時に撮ったタマカイ。謙虚に書いたとしても2m以上あった。左奥に映っているイトヒキフエダイが80cm弱なのだけど、奥に映っている魚が80cmなんだから、タマカイのデカさが分かる。ちょっと怖かったけど、こういう遭遇はアドレナリンが出ちゃう。こういうのがあるから、ここまで来る価値があるんだ。

話しがかわるが、僕はカヤンゲルやペリリューみたいなパラオの離島が好き。理由は島の雰囲気。パラオは、特にコロールはこの10年で大きく変わった。ものすごく便利になっちゃったけど、でもこの島の雰囲気は未だ変わらない。点々としかない民家。のーんびり、ホントにのーんびりした島の人たち。逃げない鳥や動物たち。21世紀にこんな島が現存していること自体が、ミラクルというか、ものすごく特別なことなのだと思う。

いつまでも変わって欲しくない場所。僕にとってそれが、カヤンゲルとペリリューなんだ。島の桟橋で綺麗な夕焼けを見ながら「また来よう」と思いつつビールを煽るのでした。そして翌日からはいよいよペリリューへ僕らのサファリは移動する。そしてそれは来月の後編で。


秋野
秋野 大

1970年10月22日生まれ
伊豆大島出身

カメラ好きで写真を撮るのはもっと好き。でもその写真を整理するのは大キライ。「データ」が大好物でいろんなコトをすぐに分析したがる「分析フェチ」。ブダイ以外の魚はだいたいイケルが、とりわけ3cm以下の魚には激しい興奮を示し、外洋性一発系の魚に果てしないロマンを感じるらしい。日本酒より焼酎。肉より魚。果物は嫌い。苦手なのは甘い物。

ミクロネシア・パラオ

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