南国通信 楽園からのらくがき 豪海倶楽部  

ボボちゃん来日

2ヶ月ぶりに日本に帰国した。前回からはたった2ヶ月しか経っていないから久しぶりというわけでもない。例によって月末が近づき、「さて今月も豪海くらぶの原稿を書こう」として気がついた。そうだ、写真が無い。写真データを全てパラオに置いてきてしまった。持ってきたノートPCの中を探し回っても使えそうな写真は1枚も無い。無いのが分かっていてもあれこれ探してしまう。こういうのパニックって言うのか。困った・・・。そんな時、運良くパラオからスタッフが来日することになっていた。急遽、彼にデータを運んできてもらうことにした。

彼の名前はブロイアン・オイテリン、通称ボボイ。18歳。ウチのスタッフは皆、彼のことを親しみを込めてボーイと呼ぶ。ボーイはこの夏、西表島「うなりざき」に日本口語勉強のため3ヶ月間一人で滞在する。パラオとは全てが違うこの国で、違う文化、言葉、人、海、サービスを3ヶ月間肌で感じるのだ。通称「鬼の3ヶ月研修」。夏の沖縄は冬のパラオと同じくらい、いや、もしかするとそれ以上に忙しいかもしれない。そこはボーイにとって慣れているパラオとは違う、日本語しか話せない環境。ホームシックにもなるだろうし、辛くも感じるだろう。でも、だからこそ、それをやりきった時の達成感は何ものにも代えがたい宝物となる。それが本人の自信に繋がる。ボーイの先輩パラオ人は皆誰一人脱落することなくこの「3ヶ月研修」を終了してきた。彼にも是非頑張ってほしいと思う。

実は、裏話を少しだけすると過去、この3ヶ月研修中ホームシックなどに罹りパラオに戻りたいと言った先輩スタッフは少数だがいた。研修中をどうしているか心配になりパラオから電話をしたことがあった。すると、

「アキノ、モウダメ、パラオニ カエリタイ・・・」
「ダメだ」

これで決定。彼は3ヶ月頑張りぬくしかパラオに戻るすべはない。彼は頑張った。やりきるしかなかった。

でも、そんな辛い時間はおよそ1週間から10日間で終わるらしい。その頃になってくると、現場スタッフ同士仲良くなったり、海の面白さに魅了されたり、西表の島の持つ雰囲気が気持ちよくて楽しくなってくるようだ。大体、研修後半になって電話すると、

「アキノ、トッテモタノシイ、コノママ イリオモテニ イタイデス」
「ダメだ」

スタッフは皆違った意味で泣きながら帰ってくるのである。

さて今回の主役、ボーイはいったい何を西表島から吸収してくるのだろう。どのスタッフもそうだが、この研修が終わって帰ってくると一回り成長して戻ってくる。外国に生活することの厳しさ、難しさ、不便さを感じ、そして同時に人の優しさ、言葉とコミュニケーションの大切さを学んでくる。人の暖かさというのは、実際に自分がそういう状況に置かれてみないと分からないものだし、他所の土地だとなおさら感受性も豊かになる。

この場所で、人とのふれあいの中から彼らが学ぶ「人の接し方」は、この仕事をしていく上で何ものにも代えがたいスキルとなる。彼らが西表という外国の島で接した人の優しさ、心の温かさ。それは自分たちのホスピタリティーとして今度はパラオに来るお客さん達に還元されていくはずだ。

違う土地で受けた人の優しさ、それはまた人から人へと繋がっていくのだろう。僕は、その現場にいつまでも居続けたいと思う。


秋野
秋野 大

1970年10月22日生まれ
伊豆大島出身

カメラ好きで写真を撮るのはもっと好き。でもその写真を整理するのは大キライ。「データ」が大好物でいろんなコトをすぐに分析したがる「分析フェチ」。ブダイ以外の魚はだいたいイケルが、とりわけ3cm以下の魚には激しい興奮を示し、外洋性一発系の魚に果てしないロマンを感じるらしい。日本酒より焼酎。肉より魚。果物は嫌い。苦手なのは甘い物。

ミクロネシア・パラオ

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