南国通信 楽園からのらくがき 豪海倶楽部  

吐き気の止まらぬマンタと僕

今日は、ちょっと二日酔い。ムカムカする胃袋を抱えながらお店に来た。あ、まずい、吐きたくなってきた・・・。

吐きたくなってきたと言えば、以前、北のポイントAiwokako Channel(ユーカクチャネル)をマンタ狙いで潜っていた時のこと。

いつものようにクリーニングステーションにマンタが1枚やって来た。でもこのマンタ、口をあけたままで泳ぎ方が何だかおかしい。たまに咳き込むような動きをするし。「変だなぁ」って思ってみていたらその固体がいきなり吐いた。

マンタが嘔吐をするシーンを初めて見たでの驚いたけど、よくよく考えてみればナポレオンなんかもブルーコーナーでよく食べた物を吐き出したりしてる。でも状況が違うようだ。ナポのは餌を食べやすくするために、口から出したり入れたりするのだが、このマンタのは明らかに“吐きだし”だ。何か変な物を食べたのだろうか?

人が吐いたものなら見たくもないが、マンタが吐いたものならちょっと興味がある。吐き出した塊が水底に落ちてきたから手にとってみた。

・・・・・・なんじゃこりゃ?・・・良く分からない。

なんだかプランクトンの塊に見える。茶色っぽくてパサパサした感じの、何て説明したらいいかな?そう、乾燥パセリのフレークに手を突っ込んでいるみたいなさわり心地。見れば、かなり沢山のアマモが混じっている。このアマモは緑の幅1Cmほどの海中草で別名「リュウグウノオトヒメノモトユイノキリハズシ」とも言う。漢字にすると「竜宮の乙姫の元結の切り外し」で、ちょっぴりHな妄想をかきたてられる名前だ。なんでも長さでは1位2位を競う植物名なのだそうだ。 どうやら、このアマモが吐きの原因のようだ。きっとチャネルの内側でプランクトンの集まる場所があるのだろうが、そこはこのアマモの切れ端の溜まり場にもなっていたのだろう。このマンタはプランクトンとアマモを食べ分けることが出来ず、とりあえず食べたものの、お腹が受け付けず吐き出したのだろう。もう少し慎重に食べれば良いのにと思うが、まぁ、あの大口開けての食事の仕方なら仕方がないのかもな。ましてやマンタの目は口の両サイド外側に付いているので口の中に何が入ってきているのか本人達は分かっていないのかもしれない。

生存競争の激しい海の中で生きていくことは厳しく、「食べられるときに食べておく」的なルールもあるのだろう。明日はちゃんとしたプランクトンのみのご飯を食べて欲しいものだと思ってしまうのだった。

P.S. 昨年5月号でHarlequin Antias通称カマジハナダイのことを書き、パラオ以外での報告例はないと書きましたが、メナド、ブナケン島のレクアンというポイントで-72m以深で目撃、撮影されたそうです。残念ですがパラオ固有種という枠は外れてしまいました。でも、パラオの方が全然浅いから、ま、いいか。


秋野
秋野 大

1970年10月22日生まれ
伊豆大島出身

カメラ好きで写真を撮るのはもっと好き。でもその写真を整理するのは大キライ。「データ」が大好物でいろんなコトをすぐに分析したがる「分析フェチ」。ブダイ以外の魚はだいたいイケルが、とりわけ3cm以下の魚には激しい興奮を示し、外洋性一発系の魚に果てしないロマンを感じるらしい。日本酒より焼酎。肉より魚。果物は嫌い。苦手なのは甘い物。

ミクロネシア・パラオ

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