今年の4月、この豪海の仲間が大集合した。我らが親分、吉野雄輔さんを筆頭に沖縄・本部から高野肇氏と、伊豆・川奈より八木克憲氏、そしてカメラマンの細田健太郎氏の4人。なんでこのメンバーなのか?と言うと、事のはじまりは昨年の秋にまで遡る。某ダイビング誌の特集取材のために、僕と肇が八木ちゃん主幹のサービス「川奈日和」に集まった。取材が大成功だったことに気を良くした僕らは、次回また何処かで集まる計画をした。その時の取材カメラマンがホソケンこと細田氏だった。雄輔さんは陣中見舞いに川奈まで駆けつけてくれた。思えばすでにこの時点で何となくメンツが決まっていたのだ。

そして今回、その4人が訪れる場所はパラオ・ペリリュー島。迎え撃つのは僕らデイドリーム・ペリリューステーション。7日間の大撮影大会。豪海なツアーinペリリューのはじまりだ。

今回は全員バラバラの日程でのペリリュー入りだった。最初に到着したのは雄輔さんと肇の2人。3日遅れて八木ちゃんとホソケン。出発日もバラバラなので、全員が揃う日は5日間しかない。焦りはしないが余裕は無い。もう少し長い日程があればとガイドの立場だと思うのだが、考えてみたらみんな超多忙の人たち。5人が5日間揃っただけでも奇跡に近い。プレッシャーを多少感じつつ、早速ペリリューコーナーへウォーミングアップに行った。

そういえば、このロケ中にいくつかのトラブルがあった。ストロボのアームを忘れてきた人、海に行こうと思ったらタンク屋が空気を入れてなくてタンク待ちをさせられ、その事をそのスタッフに指摘したら逆切れされた人。お腹をこわして水中○○に行ったり、電池のチャージャーを忘れたり、充電をしているつもりがチャージャーの電源が入ってなかったり。それぞれ本人にとっては大事件なのだが、見ているほうはおかしいことばかりだ。まあ「トラブル」という程のものでもないのかも知れないのだが、こういった旅での珍事やアクシデントというのは得てして「おいしい」ことが多い。それぞれの当事者を指差して笑ってあげた。

しかし、シャレにならないトラブルもあった。水中で雄輔さんのドームポートに突然ヒビが入ったこと。水中撮影をする以上、機材トラブルは不可抗力的な部分がある。感動したのはその後の雄輔さんの言葉だった。僕なら間違いなくオロオロするだろう場面。「まずいなぁ。ワイドのほしい画角のレンズが無くなっちゃったなぁ」と16-35mmの超高いレンズを1本ダメにしながら、そのレンズのことよりも今後の撮影のことに気を回す雄輔さんのプロっ気に胸を打たれた。「大丈夫。あるレンズで撮れる絵を狙うよ」と言いきった親分。なんだなんだ、カッコいいぞ。


トラブルではないが、今回何度かハシナガイルカの群れに遭遇した。こういう嬉しいアクシデントは大歓迎だ。

ボート上からの撮影中、僕は長いレンズでハシナガのジャンプを撮っていた。水面に飛び出してくる位置を特定することが困難なイルカのジャンプ。このシーンを写し止めるのって意外に難しくて、未だに満足いくカットは撮れていなかった。しかし、この時は違った。僕のレンズが向く方向で面白いようにハシナガイルカが跳ねる。跳ねる。跳ねる。

「よっしゃーっ」と鼻息を荒くしながらシャッターを切る。フレームの中でイルカが止まった気がした。まぐれでも何でもいい。「撮れた」そう手ごたえのある1カットだった。イケてるはずだ。そう思いながら満足気に液晶を見ると、そこにはしっかりとハシナガイルカのジャンプが写っていた。そしてそこには嬉しそうな八木ちゃんの頭も一緒に写っていた。

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(秋野 大=DayDream PALAU