ガイドのつぶやき 海辺のエッセイ 豪海倶楽部  

第十一話 青い曲がり角(後編)

抽象的な話しが続いてしまったので、いよいよパラオの海へ。

それまでは、乾季のブルーコーナーの実力と言うか凄さを反復学習するようなダイビングを繰り返していたので、この時期でもマダラタルミやギンガメアジ、バラクーダ、ツムブリ、各種サメが群れているなんてことは想像できませんでした。

しかし、潮に向かいながら目の当たりにした光景は、ある意味でベストシーズンのブルーコーナーと何ら変わりなかったのです。(ちょっと誇張しています)サメがさながら編隊飛行を繰り返し、ウメイロやレインボーランナーが駆け抜けてゆく状況は、ダイバーが沢山居ないだけで、シーズンは継続しているの?と疑うばかりです。

もちろん、量や質からすれば違いはあるのでしょうけど、この時期ですら当てに行っている時のブルーコーナーの様は、とてもシーズンの曲がり角を過ぎた状態とは思えないほどでした。

僕が好きなパターンは、ブルーホールから入ってドロップに抜け、コーナーに向かってドリフトしてゆくルートです。時には、潮が変わって向かい潮になることもありますが、それでもコーナーを目指します。いろいろな魚に追い抜かれながら、自分が人間だと、ここに普段は居ない存在なのだという事を知らされながら突き進みます。

コーナー近くなるとまた潮が急激に強くなり、青いスクリーンに吸い込まれそうな感覚に襲われます。慌てて、ホールドのし易そうな石灰質の突起を見つけて体を保持しますが、掴んだ瞬間!筋肉や腱が悲鳴をあげます。水中では重力を感じる事は少ないですが、潮の流れが強いときは、一種の応力を感じます。押し出されるというよりは、後ろに引っ張られる感覚。この際、どこまでも連れて行ってもらいたい感じもしますが、それにはあまりにも身重になってしまった...。(苦笑)

涼しい顔で、通り過ぎる応力も重力も関係ない青の住人たちは、難しい手続きの多い人間を上目遣いで見つめていました。自分がいつの間にか、青く透明な存在になってしまったように感じる世界で唯一の場所...それが、僕にとってのブルーコーナーなのです。


鉄
鉄 多加志

1965年生まれ
清水出身

生まれ育った環境が、都市部?の港湾地域に近く、マッドな環境には滅法強く、泥地に生息する生物を中心に指標軸が組み立てられている(笑)この業界では、数少ない芸術系の大学出身で写真やビデオによって、生物の同定や生態観察を行う。

通称「視界不良の魔術師」
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