ガイドのつぶやき 海辺のエッセイ 豪海倶楽部  

第九話 未開の地 未知の青(後編)

以前、縁があって、ケラマの有名な先輩ガイドのお世話になったことがありました。

彼のガイドは、僕の知っている今までのガイドの方法とは趣が違っていたのでした。もちろん、生物の紹介や地形のトレースなど、従来のツボは存在しているのですが、彼が行っているのは、僕のガイドの方法ではなく、オーケストラのコンダクターのような、いわゆる「指揮」であった。

見せる生物が楽器で、地形が旋律、彼のタクト(一挙一動)が進行を促す。何処に何が居て、どの順番でこの人に見せると、より効果的な演出ができるのか?最初から決めてあるのではなく、あくまでも臨機応変に、しなやかな進行の中で。ラストに待ち構えていた、スカシテンジクの何千という群れが、彼の振り回す指し棒(タクト)に操られているように躍動していた。

あんなガイドもあるんだなぁ?

ガイドがオペラやミュージカルや宝塚と並ぶ、一大エンターテーメントと思った瞬間であった。そんなガイドが演出できるポイントを捜したい。もちろん、ポイント自体のポテンシャルも大事だけど、本当に必要なのは、地形を理解し、生物を把握し、ゲストに応じたガイドのできる「人間力」を養うことなのだと思う。

ここに根を下ろす、ガイドに日本人のアイデンティティやフィロソフィーが理解できるだろうか?

こんな言い方をすると、日本人に向けたガイドを推奨しているように聞こえてしまうけど、必要最大限のガイドターゲットが日本人ならば、後は引き算だから...難しくないような気がする。

いや、待てよ!シンプルなガイドほど難しいのではないだろうか?

カメラ派と呼ばれる優れたゲストばかりを相手にしていると、いつの間にかシンプルなガイドができなくなってしまうのです。

ガイドの本分は、被写体を提供することではなく、楽しみや不思議な体験を共有することなのです。ポイントを通じて、ガイドの素性やこの海の特性が伝えられるような演出...ポイントの選定と伴に台本も考えなければいけないような気がした。


鉄
鉄 多加志

1965年生まれ
清水出身

生まれ育った環境が、都市部?の港湾地域に近く、マッドな環境には滅法強く、泥地に生息する生物を中心に指標軸が組み立てられている(笑)この業界では、数少ない芸術系の大学出身で写真やビデオによって、生物の同定や生態観察を行う。

通称「視界不良の魔術師」
静岡・三保

ダイバーズ・プロ
アイアン

〒424-0902
静岡市清水区折戸2-12-18
Tel:0543-34-0988

Divers Pro IRON
blog.goo.ne.jp/under-w
blog.livedoor.jp/diverspro_iron
ameblo.jp/g-iron
iron@if-n.ne.jp

アイアン
GROUP IRON
ORGANIC KELP