ガイドのつぶやき 海辺のエッセイ 豪海倶楽部  

第九話 未開の地 未知の青(前編)

バリでのアジアンブルーを体験した勢いで、一気にダイバーが殆ど潜った事のないスンバワへ向かった。

デンパサールからロンボクを経由してスンバワブサルへ入る。空港を出ると、道ばたには馬タクが走っている。路線バスと思われる乗り物も、割りと「箱乗り」状態であった。舗装路は、繁華街(と呼べるのかな?)だけで、気を抜くと直ぐにアスファルトはなくなる。道理で、街中も埃っぽいハズだ。

迎えの車に器材を載せて、しばらく逗留するクラブハウスへと移動する。もともと日本の企業が事務所兼宿舎として借り受けていた建物らしかった。何処までが敷地か分からなかったが、洋館造りは周囲の家屋から比べて際立っていたし、門扉や柵、セキュリティハウスなど、なんかエラそうだった。

歓迎のつもりだったのか?建物の中に入ると、あり得ないくらいにエアコンが効いていた。拒否られているんぢゃないか?と一瞬、思うくらいの温度に設定されていたんじゃなかろうか。

手早く海に行く格好へ着替えて、パッキングを解き、カメラをセッティングした。ものの30分で出発できる状態になったが、どうも現地の方がまだのようだった。リビングで、コーヒーの粉をウォーターサーバーのお湯で溶き、沈殿するのを眺めていた。カップの底に粉が落ち着いたのを見計らって、ゆっくり上澄みの部分を啜り込む。悪くない味だ。フィルターを介さない、ダイレクトな抽出方法に心を動かされながら、カップを眺めていると、出発のお呼びがかかった。

空港と逆の方向へ行くようだ。建物が少なくなった途端、アスファルトは無くなった。バンピー&ダスティ...ケニアのサファリを思い出した。違うのは、目に飛び込んでくる動物が、全て家畜ってことだ。10分も走ると、海のある方向へ車が右折した。こんな場所にボートがあるのだろうか?あまりに鬱蒼とした熱帯の樹木に気後れする。視界が開けると、確かにボートが見えた。

この桟橋を管理している家族だろうか?子供が何人か桟橋に座っている。整ったカワイさではなく、むき出しの笑顔が無差別に突き刺さってくる。手を振りながら、ボートに乗って、器材をセッティングする。

手始めに、一番近いポイントに行ってもらうことにする。ものの5分でポイントに到着する。ポイント名を聞くと「タンジュンムナギシ」つまりムナギシ岬だそうだ。ポテンシャルを知る上でも、この場所はボーダーラインになるだろう。バックロールでエントリーして、カメラを2台うけ取る。ドロップオフの地形だった。1本目だったので、軽く横に泳いで地形を把握し、白砂のクレバスが目にとまったので、そこを降りてみることにした。

ヤマブキ...ニチリン...おっ!アケボノ...タイニー...さっきからハゼばかりが目につくなぁ?フチドリハナダイだ...ルビロマクラタス...またハゼか?...ん、シグナルフィッシュs.p.、おっとっとっと、この辺で止めておこう。

やや水深を保ち横移動して地形を把握しながら、ゆっくりと浮上にとりかかる。途中、ピグミーシーホースの付くイソバナが何本もあったので、チェックしてみたが居ないようだった。このポイントは、突き出た岬の東側に位置していたので、15時に近いこの時間帯だと暗く感じる。あまり長居をしないで、西側に回ってもらう事にした。

キャプテンがポイントを選定しているのか?と思ったら、どこに潜って良いか迷っているようだった。あまり、と言うか一度もこちら側は潜っていないらしい。もちろんポイント名などない。この岬の対岸にはモヨ島があり、内湾からの水路のような状態になっている。気持ちは、内湾に行きたいんだけど、先に一般的なダイビングポイントを掌握してしまいたかったので、趣味の部分は後回しにした。


鉄
鉄 多加志

1965年生まれ
清水出身

生まれ育った環境が、都市部?の港湾地域に近く、マッドな環境には滅法強く、泥地に生息する生物を中心に指標軸が組み立てられている(笑)この業界では、数少ない芸術系の大学出身で写真やビデオによって、生物の同定や生態観察を行う。

通称「視界不良の魔術師」
静岡・三保

ダイバーズ・プロ
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Tel:0543-34-0988

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