ガイドのつぶやき 海辺のエッセイ 豪海倶楽部  

第六話 キャプテンクックのお宝(前編)

かなり前から地図に記載された、南太平洋のど真ん中にある「クック諸島」の文字に対して心躍っていた。その字を見ているだけで、その地図が「宝の地図」に見えて来てしまう。「行ってみたい!」単にそれだけ...。

で、行っちゃった。(笑)それが、僕の「秘境ダイバー」としての始まりになった。

レッドシーを経験しているとは言え、ここも遠かった。NZの南島でトランジットしてオークランドに向かい、そこから更にクック諸島の玄関口であるラロトンガへ飛ぶ...。日付変更線を行ったり来たりしていると、単なる旅行者ではなく、タイムトラベラーになった気分になる。今回の旅のファーストサプライズは、オークランドまでの飛行機に宮古島の24ノースの渡真利さんが同乗していたことであった。

トランジットの時に、どことなく見た事のある後ろ姿に興味を持ち、待合室までの間で見失わない様に、チェックし続けていた。お互い、ラフな格好の時にしか会っていないので、一瞬「ん?」となったが、何故ここに居るのか?と言う話しをし合って、旅の無事と成功を祈った。渡真利さんは丁度その時、オークランドでヨットを製作していて、その完成が間近に迫り、最終チェックと日本まで回航するために来たのだと言う。さすがは、日本が誇る世界のヨットマンである。夢の規模も持っている地図のスケールも全然違う。とは言え、僕の「何故クック諸島か?」と言う話しも、彼に言わせれば、同じくらい夢のある話しに聞こえるらしい。夢多き年頃は、年齢とは関係がないのだと、待合室から飛び立つジェット機を見ながらニマニマしていた。

さて、夢の入り口に辿りついた。ピークシーズンでないことは、空港の賑わいや繁華街のオープンしている店の数を見れば一目瞭然である。感じとしては、秋に訪れたコートダジュールの雰囲気である。冷め切っていない賑わいの残像が、そこには確かに感じとれる。

毎度の事だが、ホテルについてダイビングショップを捜し、翌日のリザベーションと場所や出発の時間を確認する。今回は、時間があったので、ダイビングショップまで受付をしに赴いた。今まで訪れた日本人の話しをしながら、儀式のように書類にサインをしてゆく。比較的、繁華街まで近かったので、身体をこの島に馴染ませる意味も含めて散歩して行った。

思いのほか時間が掛かったようで、いくつかのお土産物屋を冷やかした頃には、すでに薄暗さを感じて「ハタ」と帰りの事を考えた。バスの時間をチェックしていなかったので、慌ててバスストップへ行ってみると...もう終バスが40分も前に出ていた。急ぐ訳ではないが、今いる場所とホテルのある場所は、歩く事を想像できる範疇になかった。両替したNZ$をチェックして、タクシーを拾った。

海岸線に配列された如何にも南の島でござい!のカナリヤヤシの向こうは、薄いコンクリート色の空に鈍く星が見えた。自分のエリアならば、それだけで明日の天気が想像できるのだが、まったく想像ができない。まな板のコイ、慌てる○ジ○は貰いが少ない、臨機応変などの諺や4文字熟語が次々と浮かんでくる。暗中模索が出たところで考えるのを止めた。ホテルの食事は、可もなく不可もなく、多分シーラのムニエルだと思われる料理を食べた。

不思議と海外で食べて「不味い」と思った事がないのは、コンプレックスからなのだろうか?それとも、楽しいがスパイスになっていて、美味しく無いと感じないのだろうか?あるいは、リラックスして食べているからなのかも知れない。


鉄
鉄 多加志

1965年生まれ
清水出身

生まれ育った環境が、都市部?の港湾地域に近く、マッドな環境には滅法強く、泥地に生息する生物を中心に指標軸が組み立てられている(笑)この業界では、数少ない芸術系の大学出身で写真やビデオによって、生物の同定や生態観察を行う。

通称「視界不良の魔術師」
静岡・三保

ダイバーズ・プロ
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