ガイドのつぶやき 海辺のエッセイ 豪海倶楽部  

第二話 またしても沖縄

あれから更に10年の歳月が流れた。名実共にダイバーになった自分は、再び沖縄の地を踏みしめた。大学生になり、マスターダイバーと言うランクになって、人並みにアシスタントやガイドの仕事をするようになっていた。しかし、駆け出しの恐いもの知らずは、またしても沖縄と大いなる秘密を築き上げてしまう事になってしまった。

那覇のハーバービューホテルをベース(当時ハーバービューは、かなりイケているホテルランキングの上位に位置していました)にして、ボートでチービーシに行き、車で前田岬や恩納ポイントに行った。3日目のダイビング最終日には万座毛に潜ることになった。器材を背負って、崖を降りて潜るのだと言う。実際、潜るまでに崖を2往復した。現地のガイドの人は3往復していたから、僕らの方がまだマシだった(笑)。

記録用(当時は、撮影なんてレベルではなかった)にニコノスV型を持ち、パチパチとやっていた。10年の間にフラッシュバルブは消え、発光管のストロボになり、ニコノスの型も目覚しい進化を遂げていた。フイルム換えるのにレンズを外さなくて良くなったのは、何よりも嬉しい。

オレンジのボディのニコノスを持ってエントリーすると、水深3mほどの棚が10mほど続き、そこから一気に60m近く落ちている。沖に向かって泳ぎ出し、棚が切れたところで「墜落する!」と錯覚しそうになる。もっと言えば、青で景色が塗りつぶされていることによって、太陽の光線が交錯する一際濃い部分が「ビッグバン」のようである。以前は、スキンダイバーの目線をバードビューに例えたが、無重力を背景としたこの3次元的空間感覚は「サテライトビュー」の世界である。

フィートファーストで恐る恐るそろそろと壁を降りてゆく。先程のシーンが再現されているみたいで、崖を降りている気分だった。しかし、陸上とは違って、僕には墜落を許さない浮力と言う「翼」があった。水深25mあたりで、下に大きなイソバナが見えた。その時点で、ダイビングを開始して10分ちょっと経っていた。そこから残圧が30気圧になるまでの記憶が全くない。

そうなんです、窒素酔いになってしまったようなのでした(苦笑)。

次号へ続く


鉄
鉄 多加志

1965年生まれ
清水出身

生まれ育った環境が、都市部?の港湾地域に近く、マッドな環境には滅法強く、泥地に生息する生物を中心に指標軸が組み立てられている(笑)この業界では、数少ない芸術系の大学出身で写真やビデオによって、生物の同定や生態観察を行う。

通称「視界不良の魔術師」
静岡・三保

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