沖縄周遊見聞録 豪海倶楽部  

第4回 石垣島 マンタ対決

最近、芋焼酎を飲む機会が多い。実を言うと僕はこれが苦手だった。実家のある伊豆大島の地酒が焼酎で、これまたとても臭い芋焼酎だったのだ。子供の頃たまに親父に飲まされたが一度たりとも“旨い”などと思ったことは無かった。しかし歳とともにこの味がなかなかどうしてシアワセな美味しい味に感じてしまうようになった。僕は「人生ずっとビール党」を自負していただけに、この急転回的味覚変化には正直自分でも驚いている。でもビールも引き続き好きで、毎晩の“とりあえず”には欠かさず登場するところを見ると、僕の中で未だ根強い人気を誇っているようだ。

こういうの、なんとなくどっちつかずで気持ちが悪い。選挙のときに政党か決まらず投票箱の前で悩んでしまう自分を思い出す。でも待てよ。歳を経て味覚が変わるのは自然な事で、これは浮気でもなんでもなく人としてあるべき成長の証なのではないか。そうか、そうなのだ。ビールと焼酎の連立政権ってやつがあってもいいのだ。そんな馬鹿馬鹿ウマシカ的な思考から“ビール焼酎連立政権”が誕生したところで今月も始まってしまった。そういえば沖縄周遊中の石垣では八重泉という泡盛ばかり飲んでいた。

尋ねたのは江口という後輩がマネージャーを勤めている「うなりざき 石垣」。石垣島に到着したのが10時。その日、パラオ人の若いスタッフを西表島に研修に行かせることになっていたので、彼を港まで送る用事もあった。タクシーで動くのも面倒なので思い切ってレンタカーにする。港に行く途中にうなりざきの店を見つける。寄ってみたが誰も居ない。皆ダイビングに行っている時間だから当たり前か。そのまま腹ごしらえをするために港の近くの食堂に入る。西表研修に行くボボイから“ソーキそば”と“八重山そば”の違いを聞かれてしこたま困る。僕だって知らないのに、と思いながら「見た目と値段が違う」などと日本人として恥ずかしい適当な答えをしてそういう難しい質問は流した。

夕方になって店にいくと江口が居た。屈託の無い笑顔は相変わらずだ。彼のことは以前から知っていたのだが実はあまり接点がなかった。2004年くらいから仕事でやり取りするようになって最近はかなり仲がいい。いろんな話をしたかったので、翌日の段取りはパッパと済ませた。

翌日、天気は快晴。風が強いため石垣島の周りでなく西表まで遠征した。石垣の店としてはこういう潜り方をするところはあまり多くないらしい。風が吹くと石垣周りは透明度が極端に落ちるため、こういう海況の時はあえて西表のポイントを選んでいるそうだ。ふーん、いろいろ考えてんだ。現状2名のスタッフ+ヘルパー1名の3名体制。この人数で出来るものだと感心するのと同時に、お客さんに対して妥協をしないよう心がけている体制には頭が下がる。うなりざきの伝統なのだろう。気持ちのいい時間を過すことができる空気感がある。

2日目は石垣島のポイントへ。西側を潜って行きながら川平手前まで行った。「秋野さん、マンタスクランブル行きましょう!面白いですよ」って、僕はパラオから来ているんですけど・・・。こっちの気持ちがバレタのか間髪いれずに江口が一言「秋野さん石垣のマンタはパラオより大きいし凄いですよ」と。ふーん、挑戦かいな。石垣VSパラオ。石垣島マンタ対決か。ならばこの目で確かめるべし。気持ちよく疾走するボートの上は湿気を含んだ風が抜けていく。うん、清く正しい沖縄の夏。気持ちいいと思っていたら到着までの40分間ばっちりぐっすり寝てしまった。

ポイントに着いてまず驚いたのは船の数。12隻来ていた。はぁー、たまげたな。まぁ、トップシーズンのブルーコーナーは20隻越えるときもあるけど。それにしても凄い人気ポイントだ。エントリーしてさらに驚く。それでもマンタが出てくるではないか。1枚、2枚、3枚・・・4枚・・・。水中はいくつかステーションがあるのか、マンタの泳ぎに規則性がないように感じた。さらにマンタがダイバーを怖がらないときたもんだ。きっと皆のマナーが良いからだろう。パラオじゃガイジンがガンガンに追いかけているもんな。あれじゃパラオのマンタはダイバー見たら逃げるようになっちゃうよな、と改めて強く思う。浮上後、江口に「なぜここだけにこんなに集まってくるのか」聞いてみたところ、「ここ以外にここ以上のステーションポイントが無いからだろう」とのことだった。それにしてもこれだけのダイバーが入っているのにマンタの出現率は下がらないと言うのは驚きだ。 これだけのダイバーが居ても優雅に泳いでいくマンタ。そのマンタからストレスは感じられない。うーん、やっぱりマンタは何度見てもいいものだ。マンタ対決の勝敗はどっちでもいいや。

マンタが有名な石垣だが、マンタだけに頼らないスタイルに好感持てる。さらに石垣島のみにこだわらず西表島や小浜島もポイントとして使ってしまう。石垣ステイをしながらちょっと得した気分にさせてくれる。こういう自由度って大切。システムでガチガチに固めてしまうのも一つの方法だが、それだけだと飽きがくる。一生懸命考えてるんだなと思った。立ち上げてまだ4年。日々精進していいサービスにしてもらいたいぞ。

出発前日の夜。「いままでの石垣に無いものをやりたいんです。でも、それが何なのか手探り状態なんですけど・・・。でも、いつも何か新しいことを探していたいですし、それを実現していきたいんです。」ロレツが回らないながらも熱く語る江口の前には八重泉の空きビンが転がっていた。


秋野
秋野 大

1970年10月22日生まれ
伊豆大島出身

地元の海でガイドデビュー、その後もっと熱くガイドができる海で仕事がしたい、とパラオへ。移住後、まずは魚を知るべし、と一年以上図鑑を枕にしながら毎晩眠る。自称カメラマニアで写真は好きらしいが、デジタルには全く歯が立たない。

ミクロネシア・パラオ

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