マッドな情熱 豪海倶楽部  

第三章 ダイビングの楽しみって?

格差としてのしかかる「認識」とは、一体何なんだろう?

これはダイビングがある程度綺麗な海で行うもの...と言うイメージに他ならない。僕の場合、この海(三保)が基準になっているので、国内外のダイブサイトに出掛けて、透視度で困ったことは殆ど皆無である(笑)。しかし、純粋培養のダイバーにとって、透視度の悪い海=評価に値しない海、と言う関係は強ち否定できない。

ホームグランドを持っているダイバー以外は、次の休日を何処のダイブサイトで過ごそうか?は大きな課題である。折角の休日とお金を使う以上、対価を求めるのは当然のことである。しかし、自分で選択のできるダイバーは全体の何%いるのだろうか?自分で選択した場所ならば、良くても悪くても最終的には自分の責任なのだが、自分で選べないダイバーにとって、吉ならともかく凶を引いてしまった時の遣る瀬なさは甚大なものとなる。

そうなると必然的に冒険はしなくなり、ある程度のボーダーを求めるようになる。雑誌の情報、インターネット、ショップ、口コミなどなど、駆込み寺は星の数ほど存在する。しかし、広い層に情報を伝えなければいけない情報源ほどボーダーラインは低く、徐々に利用価値がなくなってくるか、依存度に変化がうまれる。

アクセス、相対的な金額、見れる生物、海の難易度などの相関関係によって選択肢が絞られるのであるが、ここには「指向性」と「経験則」が大きく関わってくる。日本は、35,000kmを超える海岸線を有し、港湾や入海制限のある場所以外は、基本的に海に立ち入ることが許されている。

しかし、ダイバーに解放されている場所は意外に少ない。船によって海域が確保されているが、日本の領海の観点に立脚すれば微々たる範囲である。また、選択だけでなく、当日は大きな問題が立ちはだかる。天気や海況である。古い資料でしかも出典も対象も曖昧なので、にわかに信じ難いのだが、年間ダイバーが満足できる海の平均的日数は、たったの17日だと言う。

誰を対象に、何処に、何日潜っているダイバーなのか?きっとランダムな中での統計学的数値なのだろうが、非常に興味深い数字である。多分、この数字は17/365と言う単純な分子の数ではなく、さまざまなダイバーが「ある1年間」を対象に各日にちに当てはめて、総合的にその年に「良い」感じた日数を積算したものに違いない。そう考えると年に17日くらいは、良い日があるのかな?と思い当たる。

果たして、何人のダイバーが年間この数字をボーダーライントする「良い日」の恩恵に与っているのだろうか?「相手は海です」、「自然ですから」と言い訳をしたところで「楽しかった」と感じられなければ、リピート率は減ってしまうに違いない。ガイドの仕事とは?単に良い時の海を楽しいと感じさせるだけの業ではない。ガイドしている自分すら悪いと感じていても、ゲストを満足させられるのがプロなのだと思う。

格差を埋め、認識のボーダーラインの変革することが、ダイビングや海に出掛けて満足できる日数と場を提供できる鍵だと考えている。


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鉄
鉄 多加志

1965年生まれ
清水出身

生まれ育った環境が、都市部?の港湾地域に近く、マッドな環境には滅法強く、泥地に生息する生物を中心に指標軸が組み立てられている(笑)この業界では、数少ない芸術系の大学出身で写真やビデオによって、生物の同定や生態観察を行う。

通称「視界不良の魔術師」
静岡・三保

ダイバーズ・プロ
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