南国通信 楽園からのらくがき 豪海倶楽部  

タイの海からこんにちは!

今月より豪海倶楽部の仲間入りをさせていただくことになりました。タイのビッグブルーダイビングの大村です。よろしくお願いいたします。 まずは、自己紹介がてら、自分の海の紹介をしたいと思います。

タイはマレー半島を挟んで東西に二つの海を持っています。太平洋の西の端っこシャム湾と、インド洋の東の突き当たりアンダマン海で、それぞれは半島に完全に遮断されているのでぜんぜん違う特徴を持ちます。シーズンが真逆なので、ハイシーズンを追いかけて半年ずつ活動の場を移しています。今現在はタオ島のシーズンなので、まずはこちらの海から紹介したいと思います。

マレー半島とインドシナ半島に挟まれた巨大なシャム湾の奥深くにタオ島は浮かんでいます。この広大な内湾エリアは水深がMAX85m、平均50mくらいと非常に浅いです。照りつける南国の日差しが表層から水分を蒸発させるも、大きな河川が大陸からの栄養豊富な水を流し込み、降り注ぐ雨水は浅い海に流れ込み底に溜まり、塩分濃度の濃い海らしい暖かい水の層と冷たい濁った水の層とが上下にきっぱりと別れて極端なサーモクラインを作ります。で、同じポイントに海水域と汽水域の魚種が混在していて、例えば、ジンベエザメとサツキハゼの仲間が同じポイントにいたりします。また、『日周潮汐』といって1日に1サイクルしか潮の満ち引きがない不思議な特徴もあります。大きな海流も流れ込んでこない閉鎖海域なので、他の海では普通種とされるものが一匹もいないかと思えば、異常なほど大繁殖する魚種がいたり、珍魚とされる種が普通に見られたり、とても偏った生態系が育まれています。透明度はそこそこですが、魚影はめっちゃくちゃ濃いです。

タオ島と言えばハゼ。ジンベエじゃなくて今回はこっちでいきます(笑)。
とにかくまぁ写真を見てやって下さい。

写真1はメタリックシュリンプゴビー。今さら特筆する必要もない人気のハゼなのですが、ここで語りたいのは、タオ島の海のハゼはとんでもなく寄れるということ。何センチまで寄って撮れるかということなら、記録はズバリ0cm!ゲストダイバーのカメラのポートがハゼの顔に当たってもなお引っ込まなかった事も一度や二度ではないのです。実際、カメラを構えると逃げるどころか威嚇行動を取りながら向かってきますので、ピントを合わすために後ずさり・・・。う〜ん恐るべし、タオ島のハゼ。

で、なんでこんなに寄れるのか?僕なりに考えてみました。八木さんも以前の記事で川奈のハナハゼに関して書いておられますが、タオ島の海はハゼの天敵となる種が極端に少ないのが関係しているのではないか? これは、さらに、生息する砂地はいくらでもあり、餌も豊富だし、仲間もいっぱいいて繁殖し放題。ビビる理由がない状態で人生を謳歌しながら何世代にも渡りDNAを引き継いでいけば・・・。まあ、これは僕の仮説で、実際のところはハゼに聞いてみないとなんとも言えません。ちなみに、他のハゼもめちゃくちゃ近づけます。タオ島にお越しの際にはマクロレンズもお忘れなく。

写真2はハゴロモハゼ属の1種、Myersina crocata (Wongratana, 1975)。知る人ぞ知るこんなレアものもいます。最初見つけたときには、調べても図鑑にも出てこず、これはもしや新種なのでは!?と浅儚な夢をふくらませつつも、ガイド会仲間に尋ねたりしつつも、よくよく調べるとI.O.P. DIVING NEWSのバックナンバー(Vol.14, No6 / June, 2003)で『今月の魚』としてマブールで撮影された写真が紹介されていたのが発覚(要さんありがとう)。その後、瀬能先生とコンタクトをとりつつ、雌雄の違いや、さまざまな成長過程の個体を撮り比べてみました。雄の体色(特に鰭の模様)が美しいです。黄化個体も見たことあります。最近、生息数が特に多い場所も突き止めましたが、普通にファンダイブで潜るポイントで泳ぐコースを少しずらすだけで見に行けるので、タオ島に来るハゼ好きさんはお気軽にリクエストしてくださいね!

と、言うわけで、今月より初参戦したタイの大村でした。これからもよろしくお願いします。


大村
大村 健
(おおむら・たけし)

1973年、京都生まれ

18歳で大学のクラブでダイビングを始め、その後、バックパックを背負って海を潜り歩く旅を経て、20歳の頃に秘境・タオ島に出会う。以後、徐々に発展してきた島とともにダイビングにのめり込んで今に至る。現在、タイの2つの海を舞台に、海のポテンシャルをフルに引き出すべく精力的に潜り倒す日々を送っている。

タイ・タオ島 カオラック

Big Blue Diving

タオ島店
17/18 Moo 1, Koh Tao,
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