期間限定 スペシャルトーク 豪海倶楽部  

エビ・カニインサイドストーリーから続く海の事色々! 第44回

11月9日から11月20日までの期間、久米島海洋採取調査が行われました。

シンガポールや台湾の大学や研究機関が費用を出して、琉球大学関係者が取りまとめて行われ、シンガポール・台湾・オーストラリア・フランス・スイスなどなど世界各国の研究者が総勢60名近く参加し、干潟チーム・ドレッジ&トロールチーム(底引き網船)・ダイビングチームの3チームの他に美ら海水族館からビデオカメラを搭載し、石や礫なども採取出来る無人潜水探査機『LEO』(水深210mぐらいまで行けるらしい)やはえ縄を使っての採取や水深500m〜800mの水深に仕掛けたトラップを回収する3班構成の美ら海特別チームの参加もあり、浅いエリアから深いエリアまでの大掛かりな海洋調査となりました。

期間中、あまり天候に恵まれずにどうなる事やらと懸念してましたが、心配も杞憂に終わり、素晴らしい成果が得られたようです。

ダイビングチームには、エビ・カニガイドブックの時にもお世話になった海の博物館の奥野淳兒氏・琉球大学の藤田喜久氏、陸上に上がった種を分類し標本を作っていくチームに大澤正幸氏(凄腕ヤドカリ研究家)なども参加され、上がった生物を観察しながら、大変有意義なお話が聞けました。

これはオキナワホンヤドカリに似ていますが、恐らく未記載種と思われるヤドカリです。かなり深い所にいたのですが、藤田氏の話によると、過去に水深20mぐらいで確認した覚えがあるそうです。

多分、シュードパグリステス(パグリクサスかも?)という属の未記載種だと思われますが、すぐにでも論文が書けると太鼓判を押して頂いた種です。

「あと、もう2個体ぐらいあると助かりますけど!!」と言う言葉に、「・・・・・・無茶言いますね〜?!」っと、しばし絶句の僕でしたが・・・(泣)。

海底鍾乳洞のポイント「ヒデンチガマ」で採取されたモエビの仲間の未記載種と思われる種。

以前から確認されていましたが、今回で採取された物がDNA判定などを経て記載される(新種として発表)かもしれません。

この種とクメジマドウクツガザミとクラヤミヒラオウギガニで「ヒデンチガマ」の3種の神器などと言って盛り上がったものでした。


この噛み合わせの悪いハサミ脚で、どんな生物を採取しているのだろう?
おそらくギボシムシなどの動かない軟体生物を捕まえていると思われるけど?!

クメジマドウクツガザミです。

悪天候の為に思うような結果がなかなか得られなかった為に、少しカリカリしてたシンガポールの研究チームのリーダーが急に機嫌が良くなった代物です。

それもそのはず、新属新種として記載された時のホロタイプの2個体と海の博物館にある1個体と今回で採取された1個体の計4個体しか標本が採られてない代物なのですから、彼の頬が自然と緩むのも致し方ない事でしょう!!

水槽に入った彼に「ドウクツガザミ君、君のお陰で助かったよ!」なんてジョークを飛ばしている研究者もいました(笑)!!

調査期間中、色んな研究者の方からお話を聞けましたが、中でも興味深かったのは、卵を抱卵したオウギガニの仲間を見つけた時に、どうも卵が奇妙なので、コペポーダなどの寄生虫、所謂カイアシ類の研究者に聞いてみると、「これは、卵じゃないですよ。寄生虫の仲間で、カニのお腹に寄生し栄養分を吸収し、なおかつ自分の卵を産みつけ、寄生したカニの脚にまで寄生を広げ、カニに産み付けた卵を乗っ取ったカニの体を使って、カニの雌が卵をハッチアウトさせる為に、ハサミ脚や歩脚や体を広げてブルブルとやる行動をカニにやらせ、自らの卵を孵化させるような恐ろしいやつです。こうなると、雌のカニは一生、抱卵出来ませんし、雄さえも雌のような行動をするんですよ」という衝撃的なお話だった。

その他、生物を分類する時に、例えばカニの成体だと、どちらの属に分類したらいいのかあやふや部分もあるけど、幼生から確認するとタイプが見分けやすいので卵からの研究をしている世界的な権威の研究者のお話など興味深い話が沢山聞けました。(ひたすら抱卵しているカニを探しまくるはめになったけど(泣)?!)

抱卵したカニを探したり、ヤビーポンプを使ってザルで濾して生物を探したり、水深60mからサンゴ礫を拾ってきたり(礫内に入っている生物を調べる為)、トラップを仕掛けて回収したりと、地味な作業も多かったのですが、数々の未記載種候補や新属新種らしき種、また国内では生息が確認されていなかった種など多くの成果があげられ、ダイビングチームの纏め役として参加出来て大変有意義な経験の数々でした。


川本
川本 剛志

1965年4月3日生まれ
福岡県出身

ガイド会所属

久米島でダイビングサービスを営むかたわら、ライフワークである、冬に訪れるザトウクジラや各種の魚類、サンゴ、ウミウシ、甲殻類の生態を写真に収め続けている。多数の図鑑雑誌に写真を提供し、エビ・カニガイドブック2-沖縄・久米島の海から-等の著作を持つ。

沖縄・久米島

DIVE ESTIVANT

〒901-3108
沖縄県島尻郡久米島町
比嘉160-69
Tel:098-985-7150
Fax:098-985-7151

www7b.biglobe.ne.jp/˜dive-estivant
estivant@mrh.biglobe.ne.jp

エビ・カニガイドブック(2)
沖縄 久米島の海から
エビ・カニガイドブック
Amazon.comから購入!


川本剛志写真集 球美の海
─ベジタブルフィールドの住人たち─

Amazon.comから購入!


川本氏へメールで申し込めば、代金先払い&送料着払いで送ってもらえるそうです。サインが欲しければこっちだね!(笑)
BY 編集部