ガイド・ダイバーの独り言

ガイド・ダイビングとは何時から、昨今のような認識になったのだろう？

もともとガイド・ダイビングとは、沖縄で言うと、ボート代4000円（2ダイブ）・タンク代3000円（二本）・ウエイト代500円（2ダイブ）のレンタル代金だけのセルフコースのボートダイビングにガイド代4500円（2ダイブ）をつけたものでした。もちろん、ガイドがただの水先案内人であった頃より、現行の一般ダイバーには見つけづらい生物を見せたり・生物の生態行動を紹介したり・潮をあて大物を狙ったりの諸々のファンダイビングは、ゲストにさらなる興味を抱かせ、ただ水中を潜って気持ちよかった頃よりも、遊びの引き出しが格段に増えたと思います。

僕のいう昨今の認識とは、ガイド・ダイビングを行う際のガイドやゲストの安全に対する認識の事です。ガイド・ダイビングとは諸々の条件や決まりの中で、成り立っているレジャーです。それは、天候の急な変化や潮流の変化などの自然現象は勿論の事ですが、ガイドする側は事故を起きないように配慮し日々努力を重ね、ガイドされる側は体調を管理し、事故に繋がる様な行為をせず、バディー潜水を心がけ、緊急時の対処を確認しておく。これらの当たり前の諸条件で成り立っているガイド・ダイビングとは、実はそのうちどれか一つが欠けても危険な状態を作りえる可能性がある、ともすれば危ういレジャーなのです。

「ガイドが何でもやってくれる」この認識は明らかに間違っており、自分ではどうしようもない状況、例えば飛行機に乗っているような状態ではないのですから、簡単に自分の大切な命を他人に委ねるものではないと思うのです。僕等を含めてショップ側の啓蒙の仕方も悪いと思います。雑誌媒体の大切なものを置き去りにし、ただただ流行のものを追いかける風潮も良くないと思います。指導団体の本来の存在理由も忘れ、営利経営のみに突き進んでいく現状も問題だと思います。ダンピング合戦の薄利多売にかまける業界の風潮も、ただただクオリティーを落としかねないものです。日本人ダイバーが全体の割合として、他国のダイバーよりもスキル的に劣っていないにも関わらず、自立できずにいるダイバーが多いのは、ひとえに各々のダイバー個人が考える「安全確保」や「自己責任」の認識の違いなのかもしれません。

僕は「ガイドに頼るな」といっている訳ではありません。お互いの認識を考え改めねばと思っているだけです。緊急時は勿論のこと、不安がある方はガイドに大いに頼るべきだし、ガイドも大いに気を使いケアするべきです。しかし、ただの道案内ならともかく、ガイド中のガイディングの中身の濃さを問うなら、「ガイドが全てやってくれる」的な状況下では自ずと限界が生じ、その中でのガイドは「安全」を最前提にして、諸々の条件を突き詰め行動せざるをえません。もちろん、ガイド側もガイディングというものを再度熟考しなければならないところにきていると思います。でも、もし、ベテラン・ビギナーを問わず、緊急時の対処の全てをガイドに委ねる方がいるなら、ガイドはそのガイドダイビング中に安全確保とナビゲーション以外の事は出来ないかもしれません。

今回のお話は、日本のダイビングシーンが、そういうところまで来てしまっているのではという危機感を認識し、インストラクターやガイドも含めた各々のダイバー本人達が熟考しなければならない問題であるような気がします。ダイビングという行為が好きで、そこに目的があり、これから先も自分自身のスタンスで立場は違えど、ダイビングというレジャーに付き合っていこうと思う方なら本気で考え直すべき問題点だと思います。

写真は、運良く出逢ったゆったりしたザトウクジラとスキンダイビングをしながら撮影した写真です。

自己管理や自己責任を持ち合わせたダイバーになら安心してこういう場面も堪能してもらえるのに？！