南国通信 楽園からのらくがき 豪海倶楽部  

水中に見られる“スリーピース考”について

地球上に生息する動植物たちすべての世界で「共生」という生活形態が見られる。オレたち人間もそう、お腹の中に沢山のビフィズス菌が住んでるよね?しかしながら、我々ダイバーが簡単かつよく目にする事が出来るのが水中世界での共生関係である。水中生物の共生関係はダイバー以外の方にもかなり浸透しているようである。そこで、今回は水中生物の共生関係を陸上の○○○に当てはめ、そこに隠れた意外な“力(ちから)関係”を考えてみたい。ちなみに“○○○”とは、いわずと知れた“ROCK BAND”である・・・。

まずは「クマノミ」。ダイバーの間では今や常識となっている事だが、それ以外の方々の間では意外と知られていないのが「クマノミの共生関係は“偏利共生”ではないか」と言われている事。つまり、クマノミにとっては住み心地GOO!だがイソギンチャクにとっちゃ迷惑千番!?という関係であるらしい。まあ、クマノミの喰い残しや糞などすら餌としてしまうイソギンチャクにとっては多少のメリットはあるのかもしれないが・・・。バランス的に見てもクマノミ側が圧倒的に有利な関係である。この手の関係はボーカル・デュオなどに良く見られ、「作詞作曲はオレなのに、歌っている相方ばかりが人気が出る」というタイプである。その結果、人気を履き違え“ピン”になったとたん悲惨な状態に陥る例がよくある。事実、生存競争に敗れイソギンチャクを追われフラフラと1匹で泳いでいるクマノミほど悲惨なスズメダイはいない・・・。

次に有名なのが“ハゼとテッポウエビ”の共生関係で、コチラはクマノミと違って完全に近い「相利共生(?)」と言ってもよい関係である。テッポウエビは自分で巣穴を掘り、そこに住み着いたハゼに見張り番をしてもらう代わりにハゼ用の巣穴を提供するというのが彼らの関係である。さらにはもう一歩進んで、遊泳性の強い“ハナハゼの仲間”に巣穴上方からより広い範囲で見張りをしてもらう「三者共生」というシステムまで完成させている。ちなみに彼らの“力関係”で、最も権力があるのがテッポウエビ、次に着底型のハゼ、そして遊泳型のハゼとなっている。意外と思われるかもしれないが、ちゃんと仕事をしないハゼはテッポウエビに追い出されてしまうのだ。恐るべし恐怖の大家さん!?それがテッポウエビである。

さて、この手の関係をバンドの世界では“スリーピース・バンド”と言う。スリーピースには強固な結びつきを誇る個性的なバンドが多く見られる。古いところで言えば「ジミーヘンドリックス・エクスペリエンス」「エマーソン・レイク&パーマー」「クリーム」などなど・・・。しかし、このガッチリ三つ巴的バンドも深く観察してみると“エビ・ハゼ・ハゼ”ほど完全なモノではないのだ!?

まず「ジミーヘンドリックス・エクスペリエンス」。言わずと知れたジミー・ヘンドリックス(G・Vo)&ノエル・レディング(B)&ミッチ・ミッチェル(Dr)の3人によるバンドだが、このバンドの場合ギター&ボーカルのジミヘンが“エビ・ハゼ・ハゼ”のすべてを一手に引き受けている感が強い。すると残りの2人は“巣穴役”となる!?実際、ジミヘンは途中で巣穴を残し去ってしまうのだが・・・。残った“巣穴”は悲惨である。

やや同じような感のあるバンドが次の「エマーソン・レイク&パーマー」だ。キース・エマーソン(Key)&グレッグ・レイク(B・Vo)&カール・パーマー(Dr)というメンバーでキーボードを主体としたプログレッシブ・ロックの雄である。やはりこのバンドも前出のジミヘン程ではないにせよ、キース・エマーソンが“エビ・ハゼ・ハゼ”を一人で担っているような雰囲気がある。しかしグレッグ・レイクの甘い声も捨てがたく事実ファンも多かったため、出たがりのハゼ2匹が役割そっちのけでぶつかる!?という状態に・・・。エビおよび巣穴役(?)のカール・パーマーはどっかりと腰を下ろしてはいるものの“リズムが悪いうえに手数が多い”という「誰が褒めたか知らんが的独自のプレイ」なるものを開発し、ほかの2人はおろか、ファンまで“置いてけぼり”にする超ゲキ長ドラムソロに没頭していた。まあ、言うところのハゼの動きや必要性に関係なく巣穴を掘りまくる、謎のエビと化していた・・・。

次はジミヘンとほぼ同時代の「クリーム」。エリック・クラプトン(Gr・Vo)&ジャック・ブルース(B・Vo)&ジンジャー・ベイカー(Dr)の3人組だが、コチラはまだバランスが取れているように思われる。三人がそれぞれ曲を書き、ライブでもそれぞれの演奏で個性をぶつけ合う。しかしながら、今度は“エビ・ハゼ・ハゼ”の三者があまりにも個性的すぎるのだ。全員がエビで全員がハゼでさらに目立ちたがり屋でさらにブチ切れ&ブッ飛び!?なので、言うなれば“巣穴いらず”である。そんな彼らにはプロデューサーというもう一人重要な“大人”な人物がいて、実は“4者共生”だったのであるが・・・。

と、ここまで書いてきて「では、ロック界には完璧なスリーピースは存在しないのか?」という雰囲気がしてきたが、いやいや、そんなことはないのだっ!!

前出の連中の影響を濃く受けた次世代的バンド、カナダ出身の「ラッシュ」という完璧なまでのスリーピースバンド・三者共生系バンドを語らずにはいられない。ゲディー・リー(B・Vo・Key)&アレックス・ライフソン(Gr)&ニール・パート(Dr)と書くと「やっぱ一緒じゃん!?」と思われるかもしれない。演奏面においてはゲディー・リーという超職人気質的ミュージシャンが事実ほとんどのパートを受け持っている事は確かなのだが・・・(余談だがこのゲディー・リーという人、ベースを弾きながら、足で弾くキーボード「タウラス」でバッキング、さらにマイクに向かって歌まで歌うという、まるで大道芸人風驚異のミュージシャンなのである。一言で言えば“変態”である)。

さて、この「ラッシュ」が何故他のバンドと違って完璧な三者共生なのかと言うと、まず第1に仲が良い。現在でも活躍している彼らはすでにこの3人で20年以上も一緒に活動しているのである。おそらく「ラッシュ」と書かれた墓を持っていて「3人で入ろうねっ!」なんてな事を話してんじゃねーの?という雰囲気すら容易に想像できる。そして、もっとも特筆すべき点は、彼らの中での役割分担が完璧に決まっていることである。ゲディーが楽曲を作り、ニールが非常に哲学的で意味深い歌詞を書く事によって、ラッシュの作品はどれをとっても独自の宇宙観・世界観のあるイマジネーションの世界を創造しているのだ。おやっ?ではアレックスは?大丈夫、心配する事無かれ、彼の存在はライブ・コンサートにおいて発揮されるのだ。ドラムが動けないのは当然だが(動けないとは言えども、ドラムセットを2つ使用し、曲にあわせて回転させ使い分けている)、本来動けるはずのベースまで山のような楽器群に囲まれているため動けない、そこで登場するのがギターのアレックスだ。彼はステージ中を所狭しと動き回り、ギターを弾きまくるのだっ!!その動きたるや、ひと時の休みもないほどである。に、しては太っているのだが・・・。

つまり、中心的リーダーのゲディーが楽曲を作り屋台骨を作る“テッポウエビ”、ニールが歌詞によってラッシュの世界観に命を吹き込む“着底型ハゼ”、そしてその世界観を自由奔放な演奏によって具現化し、パフォーマンスを一手に引き受けながらも第三者的立場でステージを見つめるアレックスのギターが“遊泳型ハゼ”ということになり、ここにおいて遂に完璧な三者共生バンドが完成したのである。めでたしめでたし・・・。

最後に、実はこの三者共生には裏ポイントがあり、「ゲディー=エビ」という部分で思わず笑ってしまう人もいるだろう。なぜならゲディーは非常に痩せていて頬骨が張っているため、ビジュアル的にもテッポウエビ似であるという事を付け加えておこう・・・。

ところで、こんなこと考えながら魚と付き合ってるのってオレだけ・・・?ということでまた来月。


五十嵐
五十嵐“Garuda”一規

1968年11月29日生まれ
横浜市出身
射手座 申年 RH+O型

バンドマン、大道具、そしてダイバーへと転身した変わり種。昆虫・プロレス・甘い物が大好きな現役ハードコア・パンクスだが、バーボン片手にロックを聞きながら毎夜繰り広げられる魚談義はいたってマジメとの噂・・・。秘密結社「赤い魚団」代表。

フィリピン・セブ島 リロアン

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