南国通信 楽園からのらくがき 豪海倶楽部  

アラベスク

「アラベスク」と聞いて皆さんは何を思い浮かべるだろうか?

ABBA・ノーランズと並ぶ女性ポップグループ?
偉大なる近代作曲家ドビュッシー?

人それぞれ、千差万別、様々な印象があるだろうが、オレの場合「アラベスク」と聞いてまず頭に浮かぶのは「ラインスポット・フラッシャーラス」である。

長いフィラメントと背鰭・シリ鰭をおもいっきり開き滑らか且つ軽やかに舞いながら雌へ求愛する姿、雄同士によるテリトリー争い時などに見せる攻撃的で激しいその動き、はたまた一瞬にして体色を変化させる艶やかで深い美しさのある婚姻色などなど・・・オレにとってはその動き、その姿の一つ一つが「アラベスク」の旋律と重なり頭の中でメロディーとなって鳴り響く。

先に書いた質問からすると後者に近い、がしかし「あの静かでゆったりとしたピアノ曲が?フラッシングするベラの姿?」と思われる方もいるはず。そこで大切なのがオレの頭の中に流れる「アラベスク」は何を隠そうピアノによる演奏ではなく、日本が誇るシンセサイザー音楽(死語か?)の第一人者「冨田 勲」大先生の編曲によるバージョンであると言うこと。

1974年に発表された冨田氏のアルバム「月の光」に収録されている曲で、オーケストラ・バージョンとして編曲したうえシンセサイザーをアナログ・シーケンサー(完全死語!)によって自動演奏させ録音したものである。つまり原曲の雰囲気を残しつつも、より壮大に!より華やかに!そして冨田氏本人も言うように“アニメ的”でより現代的なサウンドへと生まれ変わった「アラベスク」なのである。

イントロやメインパートなど随所でメロディーを奏でる金属的で子気味良いリングモジュレーターによるサウンドは、ラインスポット・フラッシャーラスが自分のテリトリー内を、時には他のテリトリー内をお目当ての雌を探して軽やかに泳ぎ巡る姿を・・・

冨田氏オリジナル・サウンドの“口笛吹き”は雄雌混在で数百匹にもなる大きな群を形成し、水中に降り注ぐやさしい太陽の光を全身に受けて中層に浮かび上がっている彼らの姿を、同じくオリジナル・サウンドでコミカルな雰囲気の“パプペポ親父”は彼らが早朝や夕方見せる巣に入ろうかどうしようか?としながら小刻みに上下している姿だったり、なかなか自分のことを気に入ってくれない雌の回りを執拗に追い掛け回す雄と逃げ回る雌の姿などを・・・

はたまた壮大でのびやかなモーグIIIシンセサイザーの真骨頂とも言うべきストリングス・パートは互いの美しさを競うかのように交錯する雄同士の姿であり、カップリングに成功したペアが放卵・放精のために急上昇して行く姿などをイメージさせる。

すなわち一言で言うならばエレクトロニクスによるスタイリッシュ且つ斬新なサウンドをバックに繰り広げられるクラッシック・バレー、はたまたオペラのような印象とでも言うべきか・・・!?と言うことは、そのステージを常に最前列のかぶりつきで見ているオレは最高の幸せ者ってこと・・・!?

いずれは指示棒をコンダクトに持ち替えて、オーケストラを率いる指揮者のように彼らの動きを思うがままに操ってみたいものだが・・・。

ちなみに冨田氏のこのアルバムは全世界で空前の大ヒットとなり、翌年、日本人として初めてアルバム・オブ・ジ・イヤー他、グラミー賞の4部門にノミネートされた他、全米レコード販売者協会の74年度最優秀クラシカル・レコードに選ばれるという栄誉に輝いている。

ところで、こんなこと考えながら魚と付き合ってるのってオレだけ・・・?ということでまた来月。


五十嵐
五十嵐“Garuda”一規

1968年11月29日生まれ
横浜市出身
射手座 申年 RH+O型

バンドマン、大道具、そしてダイバーへと転身した変わり種。昆虫・プロレス・甘い物が大好きな現役ハードコア・パンクスだが、バーボン片手にロックを聞きながら毎夜繰り広げられる魚談義はいたってマジメとの噂・・・。秘密結社「赤い魚団」代表。

フィリピン・セブ島 リロアン

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