南国通信 楽園からのらくがき 豪海倶楽部  

進化のスピード

パラオと言えば魚のイメージが強すぎるせいかサンゴがきれいな光景を求めてくるダイバーさんは少ないように思います。

実際僕がパラオで働き始めた10年前は、98年の大規模なエルニーニョによる高水温で外洋に面したポイントのサンゴはほとんど壊滅状態にあったのですが、この10年の回復スピードの速さには眼を見張るものがあります。一旦サンゴが死滅してしまうと同じレベルに回復するには30年かかると昔聞いたことがありますが、現在のパラオの状況は多くの場所で昔に近いレベルに回復しています。

これはサンゴの成長スピードがパラオのものは速いからだそうで、同種のサンゴで比較してパラオのサンゴは沖縄のサンゴの3倍の成長スピードなんだそうです。すごいなぁ〜

パラオのサンゴを沖縄に持って行って移植したらどうなるんですかね? 冬の寒さを乗り切れない可能性がありますかね? どなたか研究している方がいらしたら教えて頂きたいものですね。

ちなみにパラオのサンゴですが、さらにもっとすごいことが起こっています。近年夏場でも荒れることが昔に比べて少なくなったせいか、30度前後の高水温が続いているのですが、それでもサンゴは順調に回復し続けているんです。これは推測ですが、98年のエルニーニョ以降に回復したサンゴたちは以前のものに比べて高水温に対する耐性が強いのではないかと・・・

昨今の地球温暖化による海水温の上昇であと数十年後には、熱帯地域のサンゴ礁が全滅するという研究報告が一部で出ていますが、なんのなんの、彼らは脆弱そうに見えて生き残るためのバージョンアップを着々と進めているんです。とは言え、彼らの進化のスピードを上回るスピードで水温が上昇してしまってはさすがに生き残れないわけでして、毎年夏になると白化現象が起こらないかとハラハラしています。

この夏も一部でサンゴやイソバナの白化が認められているのですが、ここ2週間ほど海が荒れ気味なので、どうにか水温が下がってサンゴたちが元気を取り戻してくれることを祈るばかりです。

写真は東側にあるゲロンインサイドと言うポイントの浅場の様子です。

僕が来た当初、ここは一面ガレ場が続いていて見るも無残な状態だったのですがここまで現在は回復しています。真ん中部分に残るスギノキミドリイシの死サンゴもこのまま順調に行けば数年後には新たに育ったサンゴに覆い隠されていることでしょう。

同じゲロンインサイドのほかの場所の様子がこちら。

ここは98年の高水温を生き残ったサンゴ群で現在も見事な光景が広がっています。

昔はどこを潜ってもこんな光景が広がっていたそうです。そんな日がいつ訪れるのか? それとも永久に訪れることが無いのかはこの先の我々ひとりひとりの行いにかかっているんでしょうね。

とは言え、最近の温暖化対策での発展途上国と先進国のすったもんだや経済的ダメージを心配する産業界からの反発などを見ていると、環境の変化に対応する人間のバージョンアップのスピードなんてパラオのサンゴから見たらあきれるほど遅いものなんでしょうね あ〜あ・・・


遠藤
遠藤 学

1973年生まれの東京人

学生時代に所属していたダイビング部のOBである現オーナーにサラリーマン時代の1/8の年俸でヘッドハンティングされ、パラオに移り住んで早9年目。

七色の技を繰り出す怪しいガイドで独自の地位を築くも、年々ハードルが高くなるお客様のリクエストに応えるため日々技の開発にいそしんでいる。

次の目標はバショウカジキ。うまく魚が技に反応すると「来た〜」と、言うより「食ったぁ〜」と叫んでしまう釣りバカでもある。

ミクロネシア・パラオ

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