南国通信 楽園からのらくがき 豪海倶楽部  

感動を超えて


例年この時期の新月前はイレズミフエダイの大群が現れます。去年は2月の新月が月の前半だったため見れなかったんですけど今年は25日が新月。と、言うことで2月17日現在すでに1000匹ほどが群れています。すご〜い!1000匹も? とおっしゃるなかれ。

こっちでペリリューのイレズミフエダイを研究している人の話だと3,4月のピークでは最大で14万匹以上というもの凄い数になるんですわ、これが。それから考えると今回のイレズミはもうお話しにならないくらい少ないもの。ま、見るには十分ですけどね。

ただし、一つ厄介なのが彼らはかなり臆病だということ。同じフエダイの仲間のバラフエダイもいかつい顔の割には相当臆病ですがイレズミフエダイはそれに輪をかけたもの。そして彼らはその性格通りに今にも泣き出しそうな情けない顔つきをしています(かわいいんですけどね)。

そんな彼らを追い詰めていく時にはなんだか罪悪感すら感じてしまうのは僕だけ??

逃げ方もあっちへ逃げてはこっちへ逃げて・・・ オロオロしている様子がいかにも彼ららしいんですよ。普段はこんな大きな群れを作らずラグーン内の深場でひっそりと暮らしている彼らがいきなり外洋のドロップオフ沿いにこんなに大集結しちゃってるんだからそりゃオロオロするのも無理はないですけどね。

そんな彼らですからアプローチはかなり大変。これだけの数がいるんだから普通に潜ってもそりゃまあ感激するほどの数は見れるんですが、至近距離まで寄るには深場からアプローチしたり浅場からアプローチしたりとあの手この手を彼らの顔色を伺いつつ慎重に行うまさにガイドの腕の見せ所なわけですよ。

苦労してうまく寄ることができれば巨大な建造物のようなイレズミ玉を見上げて大感動すること間違いなし!!そんな瞬間をうまく提供できると僕らもそれはそれは嬉しいわけです。

そんな彼らですが産卵の時は臆病な性格が一変してアグレッシブそのもの。メスが産気づいて急上昇を始めると数匹のオスがその後を絡みつくように追いながら産卵、放精が行われます。ドロップオフのエッジ沿いに産卵が行われる時は目の前にいる我々の存在も無視してあっちこっちで産卵が行われます。

いや〜 この時ばかりは地球を感じますよ。今までに味わったどんなシーンよりも感動的な瞬間を体験することができます。もうこのままガイドすることも写真撮ることもすべて忘れて目を閉じてしまってもかまわないような、そんな感じです。

そんな感動に耽っているダイバーをよそにあくまでも冷静に隙を伺っているのがカマストガリザメやウシザメなど大型のサメ類です。彼らに会うことができるのも産卵狙いのダイビングでの大きな魅力の一つですが、一人で沖に出ると付きまとってくるので壁沿いに回ってくる個体をイレズミフエダイの塊に隠れて狙うのが一番ですね。

そんなダイビングですから上がってくると皆さんキャーキャーおっしゃるわけですが中には放心状態の方も多数。うんうん、分かる、その気持ち。どう?潜りたくなってきたでしょ??


遠藤
遠藤 学

1973年生まれの東京人

学生時代に所属していたダイビング部のOBである現オーナーにサラリーマン時代の1/8の年俸でヘッドハンティングされ、パラオに移り住んで早9年目。

七色の技を繰り出す怪しいガイドで独自の地位を築くも、年々ハードルが高くなるお客様のリクエストに応えるため日々技の開発にいそしんでいる。

次の目標はバショウカジキ。うまく魚が技に反応すると「来た〜」と、言うより「食ったぁ〜」と叫んでしまう釣りバカでもある。

ミクロネシア・パラオ

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