南国通信 楽園からのらくがき 豪海倶楽部  

お蔵入り写真

誰でもお気に入りの写真というのがあると思います。その写真が素晴らしい写真ではなくても、人を感動させられるものではなくても、それでも自分にとっては大切な写真。僕は撮るときに苦労をした写真や、インパクトのある出来事のあった時の写真にはどうしても思い入れが強くなってしまいます。

そういう思い入れの強い写真というのは、やはりどこかに出してやりたいと思うのですが、それが出来なかったというのが結構あります。そんな中でも比較的最近の、訳あり“お蔵入り”写真をその理由と一緒にここにアップしてしまおうと思います。理由をつけられる(言い訳を添えられるなら)なら載せてもいいでしょう。(笑)

お蔵入り1枚目はニュードロップオフで撮影したマダラトビエイのペア。この場所でこのシーンはなかなか無くて、僕は当時7年パラオに居て初めて撮れたシーンだったと覚えています。単体のマダラトビエイなら沢山あるし、“ふかん”で撮ったり、真横でのカットなら持っていたのですが、沖を向いて青抜きで、それもペアでという条件は無かった。嬉しくて何枚もシャッターを切りました。しかし、マダラトビエイを“あおって”撮るだけなら他の国でも沢山ある。とりわけサイパンには沢山いるからという理由でボツ。この写真が日の目を見ることはありませんでした。

お蔵入り2枚目はSt.カーディナルで撮影したダスキーアネモネフィッシュ。実はこの写真は今年のガイド写真展に出展しようと思っていた写真でした。が、この写真展の数ヶ月前にあるダイビング雑誌にこの場所のこのクマノミを、全く同じような構図で撮った写真が掲載されちゃいました。もちろん、その写真家の先生も僕がここで撮っていることは知らないだろうからパクリとかではないです。ただ、同じ位置から、同じように太陽を入れている同じ構図にちょっと、いやかなり驚いた。写真は発表した人の勝ちみたいなところがあるので、これはこの写真家の人の作品になってしまったけど、僕のほうが絶対に撮影しているのは先なのだ。だってこのポイントは僕らが見つけた場所なのだから。まあ有名な写真家の先生と同じ構図を考えていたのだから、それはそれでOKなのかもしれないが、しかしそれにしてもこの写真は悔しかった。で、発表するとマネ者のレッテルを貼られるのでボツ。この写真も日の目を見ることはありませんでした。

そして、お蔵入り3枚目はブルーコーナーでの写真。明るい部屋では見難いかもしれません。夜、こっそりと電気を消して見てみて下さい。ドロップオフの下(確か-40mくらいだったと思う)から上に居るギンガメアジを撮った写真です。群れが“渦”になっていくシーンを自然光と弱いストロボで撮った、自称“力作”。深い海の感じと、明るい水面の青という個人的にはとても好きなトーンで、ポジやディスプレイだと見ることが出来るんですが、全体的にスーパーアンダー(露出が暗い)なので、紙にプリントするとギンガメアジがみーんな背景の黒に溶けて、群れがつぶれて見えなくなるので泣く泣くボツ。この写真も日の目を見ることはありませんでした。

とまあこんな感じに日々ボツ作品を大量生産しているわけですが、そんな中での試行錯誤がまた楽しいと思うのです。ボツでもいいのです。自分が気に入る写真を撮りたいと思うのだー。


秋野
秋野 大

1970年10月22日生まれ
伊豆大島出身

カメラ好きで写真を撮るのはもっと好き。でもその写真を整理するのは大キライ。「データ」が大好物でいろんなコトをすぐに分析したがる「分析フェチ」。ブダイ以外の魚はだいたいイケルが、とりわけ3cm以下の魚には激しい興奮を示し、外洋性一発系の魚に果てしないロマンを感じるらしい。日本酒より焼酎。肉より魚。果物は嫌い。苦手なのは甘い物。

ミクロネシア・パラオ

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