南国通信 楽園からのらくがき 豪海倶楽部  

パラオの海から

この原稿を書いている今は台風2号の影響をばっちり受けている海況荒れあれの状態です。いっつも思うのですが、台風や低気圧は僕らはもどうしようもありません。他のことなら努力でどうにかできることもあるかもしれないけど、天気や海況は回復を待つしかできない、こんな時はひたすら「我慢の子」と化すしかありません。

ここ2日間ほど外海に出るのを控えていたら今日、お客さんから「この海どうにかならないんですかァ?」って言われてしまった。お客さんにしてみたら本当に心から出てきてしまった本音なのだと思うが、「そんなこと言われても〜(汗)」と言うのも僕らの本音である。パラオという場所柄か、ここには物凄く期待をして来られるお客さんが多い気がする。もちろん、それはそれで素晴らしいと思うし、うれしく感じます。でもその分、天候や海況が思わしくなくて、思うようなポイント選択ができなかった時の反応はとても寂しいものがある。もちろん、お客さんもそんなことスタッフに言ったからってどうにもなるもんでもないこと分かっているハズなのに、自分の気持ちのやり場が何処にもないから仕方ないです。だから、「すいません、こればっかりは海況なので・・・」とひたすら謝ります。これまた、「我慢の子」となるわけです。

でもね、お客さんの気持ちもスゴーク分かります。だって、長い間待ちに待って、お金も貯めて、一生懸命休みをやりくりして、それでせっかく来たパラオなのに低気圧や台風で思っていたようなポイントに潜ることができない。ブルーコーナーでバラクーダに囲まれて・・・とか、ジャーマンチャネルでマンタの乱舞を見たり・・・とか、頭の中にイメージをいっぱいに膨らませて来るお客さんもまた「我慢の子」なワケです。みんなごめんね、でも、僕のせいじゃないんです。(泣)

我慢の子になった後には何かいいもの見に行きましょう。
そう、とびっきりのディープな場所に、とびっきりの美しい魚を見に行くってのは、どう?

ストンッ、と落ちたドロップオフをサラサラと流れる水の音を耳元に感じながら落ちていく時、これからの期待と窒素でアドレナリンが噴出しまくりです。うーん、気持ちいい。この気持ちよさはこれから会える反則的な美しさのハナダイへの期待なのか、それとも窒素によるものなのかは定かではありませんがとにかく、自分の中での期待度のボルテージは水深が1m落ちていくごとに上がっていく。水深が50mを超えてくると彼らの生息水深。今日も皆元気に中層を泳ぎまわっている。通称カマジハナダイと呼ばれるHarlequin anthias(Pseudanthias.sp.)は1996年に元パラオのガイドである鎌倉 進氏によってその姿が発見されて以来、8年経つ今でもパラオ以外での報告例は聞いていない。


♂ ディスプレイ
NikonF4 105mm NexusF4 YS-50×2フル発光 f16半 1/250 RVP(以下データ同じ)

見てのとおりオスはとても美しい体色をしています。いつもメスを何匹も抱えたハレムの周りをビキビキビキッと泳いでいる姿から、きっとディスプレイ色なのでしょう。見に行くとほとんどいつもこの体色で泳ぎ回っています。疲れないのかな?でも、たまにこの場所の近くを捕食者となるギンガメアジや、カポッレの群れなどが通ると、そのあとはしばらくこのディスプレイをしなくなります。と、フッツーのハナダイになってしまいます(笑)。


この水深まで行ってディスプレイのないカマジハナダイを見るのは、アンコの入っていない「あんまん」食べるみたいなものです。

この魚はシアストンネルをはじめとする幾つかのポイントで見ることができることが最近分かってきました。一番浅いのはシアストンネルの57mで普通は65m以深のようです。他のポイントで見られないことから考えると実際はもっと深い水深が彼らの通常生息水深なのでしょう。比較的急なスロープで、その下はさらに深いところまで落ちている、というのが現在見つけている生息環境の共通の条件です。この水深の水温は19〜24度ととても低く、これもまたカマジハナダイにとっては好条件なのだと思います。冷水が上がってきやすく、またいつも水温がこのくらいに保たれている場所、というのが上記の地理的条件が満たしているのでしょう。

性格はさほど臆病ではなく、結構簡単に撮らせてくれます。オスも寄ってもディスプレイを消してしまうことはそんなに無いと思いますし、水深と窒素という負の条件をクリアできれば撮影はそんなに難しい魚ではないと思います。

どうです?行ってみたいでしょう?見てみたいでしょう?撮りたいでしょう?

経験本数1,000本以上で深海潜水(50m以深)の経験が少なくても100本以上で自己管理と自己責任の取れる人で、過去に僕と深海潜水をしたことのあるディープなエキスパートのみお連れしますよ。ただ、急に言われても心の準備が必要ですからだめです。事前にきちんと打ち合わせしてからですよ。それから、最終的にお連れするかどうかは僕の判断で決めさせてもらっています。上記の条件はあくまでも目安です。

我こそはと思う方の挑戦を待っています。
では、ハッピーなディープダイブをしましょう(笑)。


♂ ディスプレイ

秋野
秋野 大

1970年10月22日生まれ
伊豆大島出身

カメラ好きで写真を撮るのはもっと好き。でもその写真を整理するのは大キライ。「データ」が大好物でいろんなコトをすぐに分析したがる「分析フェチ」。ブダイ以外の魚はだいたいイケルが、とりわけ3cm以下の魚には激しい興奮を示し、外洋性一発系の魚に果てしないロマンを感じるらしい。日本酒より焼酎。肉より魚。果物は嫌い。苦手なのは甘い物。

ミクロネシア・パラオ

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