ガイドのつぶやき - 伊豆諸島・八丈島からThe Diving Junky Magazine

サバイバル

台風が接近するとなると、朝から晩まで、暇さえあれば天気図や天気予報とにらめっこをする日が続きます。

東海汽船はいつから欠航するのか、飛行機はどうか? 牛乳やパンを買いだめしておいた方が良いのか。充電は、どのタイミングでしておいたら良いか? 台風が近づいてくればくるほど、他に考えることもなくなってくるせいか、そんなことで頭がいっぱいになります。

陸上では、情報が逐次入るので、準備も復旧も作業が計画的に行えます。しかし、海の中は、そういうわけにはいきません。サカナたちは、どうやって台風に備え、生き残るための準備をしているのでしょうか。

台風26号が通過した直後の週末、急に海況が回復し、ゲストの皆さんと全く問題なく、ナズマドや八重根でダイビングすることができました。

海の中は、予想通り様子が一変していて、ゴロタだったところは砂地になり、砂地だったところは下の岩盤が剥き出しになり、ありとあらゆる岩が転がって移動し、岩の表面に付いていた海藻やウニ、カイメンなどの付着物は全てはぎ取られてツルツル・ピカピカ。まるで流れの速い川底のようになっていました。サカナなどの、目に付きやすい生き物の数や種類も減りも減りました。

しかし、よく見るとソラスズメダイは何事もなかったかのように群れているし、カミナリベラは以前よりも増えたようにさえ感じます。彼らは、シケの間、根の亀裂などに入り込み、じっと息をひそめて台風をやり過ごし、海況が落ち着いたところで一斉にエサを食べるために出てきたのでしょう。台風直後のサカナたちは盛んに捕食と繁殖活動に励んでいます。

数は減りますが、ミギマキなど、あまり泳ぐのは得意ではないし、根の隙間に入るには少々サイズが大きすぎるサカナたちも、よく残っています。残ってはいますが、岩の付着物をついばんで食事する彼らは、生き残ったあとのエサ探しが大変そう。

岩の付着物をエサにしているサカナは、他にもたくさんいます。岩に張り付いて生活するヘビギンポの仲間たちは生き残ることさえできずに激減しましたが、多少泳ぎの得意なウバウオの仲間が目に付きました。

ウバウオの仲間

撮影している時にはわからなかったのですが、写真を見て驚きました。私には何も付着していない岩にしか見えなかったのに、ウバウオは卵を食べていたのです。

卵を食べていたウバウオ

必死の思いで生き残ったサカナたちが、海況が回復して一番に残した自分たちの子孫を、ぱくぱく食べる小さなウバウオ。岩から岩へと渡り歩いて、僅かな食料を求めて泳ぎ回る彼らも、必死で生きていることには変わりありません。

元々岩の下で暮らしていた甲殻類は、全て死滅してしまったのではないかと思えるような状態になりました。岩をどかすと見つかるキンチャクガニ、クモヒトデ、小さなヤドカリたちは姿を消しました。しかし、どんなに時化ても動くことのない大きな岩と岩の間で暮らしている彼らは健在。私の肉眼では見ることができないほど小さくて僅かな付着物を、集団でせっせと食べているのでした。

トゲアシガニ

技術の進歩で、今まで見ることのできなかった深海の様子を知ることができるようになりました。

できることなら、台風通過中の大しけの海の中で、一体どんなことが起こっているのか見ることができるようにならないものでしょうか。

明日以降、海が落ち着いて、生き残った魚たちに会うのが楽しみです。

水谷
水谷 知世

昭和40年代生まれ
兵庫県出身

一見、負けず嫌いで男勝りというイメージだが、実は繊細な女性らしい一面を持つ、頭の回転はレグルス一番!!の頼もしい存在である。(レグルス親方・談)

伊豆諸島・八丈島
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